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2020-21エヴァートン 選手名鑑 シーズンレビュー 【FW編】

お待たせしました!!
待ってくれた方、別に待ってない方、エヴァートンが気になってる方!第3弾、FW編をお送りします!アップ・ザ・トフィーズ!!


7. Richarlison

鳩・ピジョンがトレードマークのリッチーこと、リシャーリソン。今季の彼は議論の的となっている(そして、第3弾を迎えた選手名鑑の中で、リシャーリソン・パートはちょっと長くなります、予めお詫びを)。

あらゆる期待を浴びながら、結局10位に沈んだチームを象徴するエースの姿だった。
先日、W杯南米予選を戦うブラジル代表メンバーが発表された。その1週間後にはコパ・アメリカが控えており、今回のメンバーがベースになると予想される。エヴァートン所属のリシャーリソンも名を連ね、早速代表合宿に合流。コパ・アメリカにおける前回大会同様、引き続きチッチ監督からは信頼の厚さが窺える。
今季プレミアリーグでは7得点に留まり、2シーズン連続で13得点を叩き出したMVP級の働きは影を潜めた。
チームはマルコ・シウヴァ時代に比べ、全体的に後ろへ重心を置くスタイルに。ポジションは主にDCLとの2トップ、DCL離脱の際は1トップを務めた。
これまで主戦場とした左のWGとしては序盤の4-3-3でこそ見られたが、エヴァートンでは不評な右サイドを任されたりと、前半戦の失点の多さや、クリーンシートの少なさ、そして度重なる負傷者の連続で、チームはどんどん堅守優先のスタイルへシフトチェンジしていく。
こうした今季の推移を念頭に置くと、リシャーリソンもアンチェロッティの施した戦術の影響を大きく受けた1人と感じている。
リシャーリソンが項垂れる姿は、得点後のセレブレーションの回数よりも遥かに多かった。それは、守備に傾倒する戦い方に加え、攻撃へのアプローチパターンに乏しいチームの姿も同時に映し出された。
私の個人的見解として、リシャーリソン対する呼称、れっきとしたプレイスタイル、というものが定まっていない。正真正銘のドリブラー、というと違う気がするし、パサーでもない、クロッサーでもない。ストライカーといえば大枠で収まるかもしれないが、その呼び方だとDCLの方がしっくりくる。
要は何が言いたいかというと、リシャーリソンはまだ、''完成された''フットボーラーとは言えない、ということ。
アンチェロッティにおける通説において、個のクオリティを軸に、システムを組みチームを最適解に導く、という理念が中心にあると思っている。来季からバイエルン・ミュンヘンの指揮を採ることになったラングニック派のユリアン・ナーゲルスマン、今季プレミアを制したペップ・グアルディオラのように、戦術が前提にあり、そこに最適な選手を配置する。もしくは、戦術を執行するための役割を与える。プレミアリーグでいうと、ブライトンのポッター、リーズのビエルサもこれに当たる。
アンチェロッティの場合、完成された選手、チームの核といえる選手の能力を引き出すためのシステムが構築される。エヴァートンに置いてベースとなるのは、ハメスがその筆頭だ。
マルコ・シウヴァが一定の成績を収めたのは、ストーミングの概念がチーム全体に浸透しており、相手が変わっても、選手が入れ替わっても、実践すべき戦術がベースにあった。ボールを持たされてしまうと最終的な精度に苦しまされたが、根底に常に意識することが徹底されていた。
が、アンチェロッティの場合、選手が入れ替わると別の戦い方を余儀なくされる。例えば、ハメスの変わりは誰にもできない。ビッグクラブにおける選手層やタレント力とは話が違うのが中堅クラブの定めである。
長くなってしまったが、リシャーリソンはそんなアンチェロッティとスタイルと、チーム状況、個人の選手レベルとの歯車が上手く噛み合わなかった印象なのだ。特に、今季はDCLが覚醒したことでボールの運び方や目的地も、DCL目掛けて進むケースが目立ち、苦しい時にはオーソドックスなクロス一辺倒、前線の攻撃パターンは再現性に乏しく、個の判断に任せられたような振る舞いの中、リシャーリソンが苦しんでしまった、という判断である。リシャーリソンには戦術的な助け、導きが必要だと私は考えている。今季のエヴァートンがアタッキングサードの崩しに苦慮し、沈黙したのは偶然ではない。
もちろん、リシャーリソン自身の決定力がまだまだ改善すべきものであることは間違いないし、レベルアップは必須である。
しかしながら、調子が悪かった、だけで片付けられなかった思いを吐き出してみた。2年連続でリーグ13得点を叩き出した選手である。彼の良さを最大限に発揮できなかったのは監督の責任も大きい、ということを述べておきたい。

来季、ヨーロッパ・コンペティションへの切符を獲得できなかったエヴァートン、当然ながらこのブラジル代表に興味を持つクラブは多いだろう。リシャーリソンがコパ・アメリカでどのような活躍を収めるか、様子を見てみよう。オール・オア・ナッシングを見る限り、サッカー大国を背負うブラジル代表というのは特別で、大会の重さや激しさも並大抵のものではない。彼がまた、来季も残ってくれることを願い、応援したいと思う。

9. Dominic Calvert-Lewin

蝶・バタフライがトレードマークの、ドム、DCL、キャルちゃん(流行らなかった)こと、ドミニク・カルヴァート・ルウィン。チーム内ではデイビスと同じ路線を行くお洒落担当である。髪型もどんどんデイビスっぽくなっているではないか。

今季ロケットスタートを切ったチームの中心はこの男だった。昨季アンチェロッティが就任して以来(厳密にいうと、その前に当たるダンカン・ファーガソンが暫定就任した頃から)、飛躍の可能性を見せたワンタッチ・フィニッシャーはとうとう殻を破って覚醒した。FWの得点力に嘆いたマルコ・シウヴァにとってはなんとも歯痒い進歩…。
GK&DF編でご紹介した、エバートンジャパンさんの19-20通信簿では、この予感を見事に的中させるようなレビューが残されている…素晴らしい(拍手!)。
その可能性を認められ、昨年ホルゲイトと同じ時期に契約を延長し、見事5年契約を勝ち取っている。

対空時間の長い跳躍力、ピックフォードの鬼フィードを胸で落とすポストプレー、強烈なヘディングは、フェライニやルカクに勝るとも劣らないフィジカルを発揮し、その姿は数年前までの線が細い若手プレーヤーだった頃を忘れさせる逞しさだった。

とにかくボックス内での存在感が突き抜けており、挙げたゴールのほとんどがゴール前6ヤード内におけるワンタッチ・フィニッシュが特徴。
一方、利き足が頭だと揶揄されるのも仕方がないほどで、流れの中からは両足でゴールを決められずに苦戦した。ただ終盤のハマーズ戦ではゴドフリーの完璧なパスから裏に抜け出し、右足でシュートを流し込んだ。最近のトレーニング動画では熱心にシュート練習を繰り返すシーンも見られたので喜びは一入だった。4CB採用時には、サイドからの高精度クロスの供給が減ったことで得点が減少するなど、リシャーリソン同様、攻撃パターンの増加は必須だ。そして彼自身のプレーの幅、鳩と蝶のコンビネーションも。

イングランド代表にも名を連ね、ユーロ2020でも活躍が期待される。行き先不明の先輩、ハリー・ケインの隣でたくさん技を盗んできて欲しい。新たな分岐点になるかもしれない。収穫して、来季はリーグ20点オーバーでお願いします!!

11. Joshua King

結果からいうと、冬のマーケットの上積みは無かったに等しい、という切なさが残ってしまった。
ボーンマスでキャリアを発展させたキングは、マンチェスター・ユナイテッドアカデミーの出身。17歳でトップデビュー、将来を期待された元エリートの1人。その後、トップチームには定着できず多くのローンを経験。ボーンマスに行き着くと、エヴァートンも幾度となく苦しめられたように、プレミアリーグでは161試合、48ゴールという記録を残している。
ユーロ本戦出場こそ、セルビアとのプレーオフの末、敗退により逃してしまったが、今注目のノルウェー代表。ハーランド(ドルトムント)とセルロート(ライプツィヒ)の控えではあるものの、スーパーサブとしてネーションズ・リーグ、W杯欧州予選、ユーロ予選にも出場している。
エヴァートンでのチャレンジは結果的に失敗ではあるが、あくまでも緊急事態時の控えとして獲得した印象に留まり、リシャーリソンとDCLを重用するアンチェロッティ政権において、出番はほとんど無かったために評価も難しい。先発出場もなく、カップ戦には出場資格が無いため、残念な補強に終わってしまった。
1ゴールくらい見たかったな、という思いと、過去のエヴァートンを振り返ると、冬のマーケットで少ない資金でレンタルなどを駆使して後半戦のギアを入れ替える、そんな長所が見られなかったな…という印象。ハマーズがリンガードを獲得して上昇気流にのった姿を見ると、捕まえた選手をしっかり戦力化したモイーズの手腕は、過去のエヴァートンを思い出すセンチメンタルな光景に映った。隣の芝生が''青く見える''、とはこういうことなのね。

19. James Rodríguez


Instagramフォロワー数4,650万人、 Twitterフォロワー数1,900万人、サッカーに興味のない私の妻でも、その名を知るピッチ上のマジシャン、ハメス・ロドリゲス(ちなみに、妻はちょっと知ってるフリをするためか、ハメスではなく苗字を取ってロドリゲと呼ぶ)。

彼の加入でエヴァートンは例を見ない注目を浴びた。マドリーファンの方もTwitterで声をかけてくれるようになり、日本のメディアも媒体問わずハメスとエヴァートンを取り上げた。ハメス・フィーバーの到来。バブリー!

唐突ですが、あなたにとって「ファンタジスタ」とは?
もはや死語なのか?絶滅危惧種と呼ばれて数年、多くのマジシャンが居場所を失った。
彼が今も輝けるのは、彼自身の技術もさることながら、互いに熟知するアンチェロッティとの関係が深く、有名な話だ。
「魔法の左足が、エヴァートンを次のステージへ導けるか…」
開幕後に綴った当ブログで、そのように題した意図はエヴァートンをヨーロッパに連れてってください、という願いに他ならないが、その点から鑑みると、ハメスだけの力では決してプレミアリーグを勝ち抜けない、という厳しい現実と向き合うことになったのも事実である。
当然ながら、曲者揃いのプレミアリーグで自由に振る舞えるほどの余裕は少なく、激しいボディコンタクト、タイトなマークで各チーム容赦なく対策を練ってくる。窮屈なエリアを抜け出し、低い位置に降りるなど、試合の中で居場所を探る光景が続いていた。フィットネス、コンディションの安定度が低いことも計算しづらい点だ。

それでも、レスター戦で決めたボックス外での右足、思わず声を上げたユナイテッド戦のゴラッソ、マージーサイド・ダービーでの甘美なラストパス…
記憶に残るゴールで歓喜したシーンを始め、彼から繰り出される数々のプレーに驚かされた。
観客のいないグディソンパークだったから気付くのに時間がかかったが、彼の所作に心が躍る感覚は何なのかを思い出した。歓声が聞こえなくとも、心に湧く感覚は…。
ああ、そうか。ボールを蹴り始めて間もない子どもたちは、彼のようなファンタジスタに憧れを抱く。それは、''好き''の入り口になる。
今季、ハメスが居たグディソン・パークに観客はいなかった。おそらく、退団するまでピッチに立てる機会は他の選手より限られている。
今、ハメス・ロドリゲスという希少なフットボーラーと過ごす時間に、もう少しのあいだ夢を見たいと思う。夢を見せて欲しいと願う。大人になった今も、彼がボールを持てば少年だったころの感覚が蘇るからだ。

20. Bernard

ASローマ解任の憂き目に遭ったパウロ・フォンセカが率いたウクライナの雄、シャフタール・ドネツクで名を上げたベルナール。チャンピオンズリーグではベスト16に進出。かつてはブラジル国内で最優秀新人賞、そして南米のチャンピオンズリーグ、コパ・リベルタドーレスのトロフィーもゲットしている。代表では2014年の自国開催W杯に出場し、あの「ミネイロンの悲劇」も経験。エヴァートンでは指折りの経験豊富な選手だ。
加入して以降、小柄な体型もなんのその、チーム屈指のテクニシャンとして観客を沸かせた…。
そんな姿が懐かしく感じてしまう20-21シーズン。
4-4-2や4-2-3-1という布陣を敷いても、アンチェロッティが左サイドに選ぶのは大方シグルズソンで、守備的強度を優先するチームにおいてベルナールの序列はみるみるうちに下がっていった。
とはいえ、今季ベルナールが挙げたゴールは貴重かつ、''らしい''ものだった。敗北した8節のユナイテッド戦では先制点をマーク。ディニュとの連携は相変わらずスムースだったし、ゴールもエレガント。FAカップの決勝点はまさに値千金、あの試合を更なる奮起のきっかけにして欲しかったが…。
来季の去就でチームを去る可能性が高い1人。ベルナールもピッチに出て、たくさんボールを触って欲しいプレイヤーなだけに、ベンチに居座り続けるのも勿体ない。年齢的にも活躍どきなはずだ。
フォンセカの解任で一時噂のあったASローマ行きは消滅しそうだが、高額な給与を払える中東のクラブは引き続き興味を示しそう。
とにかく、守備的なアンチェロッティの戦術には似合わない。そのテクニックと実力を遺憾無く発揮できる居場所を見つけて欲しい。アンチェロッティ、勿体無いとは思わないかい?

おまけ 移籍の噂(FW)

前回、MF編ではサイドアタッカーの噂に触れましたが、FW編のウインガーにおいても同じような目的と言えるでしょう。違いとしては、トップ下やゲームメイクをこなすタイプか、それともサイドからの切り崩し、より得点に近いプレーができるか、などといったところだろうか…

以前から噂のある、ベイリー(レヴァークーゼン)、同じクラブから最近になって浮上したディアビ(レヴァークーゼン)。どちらも人気銘柄な若手である。また、若手というと、リーグ1のフランス方面からも。
ビッグクラブ熱視線、セネガルの逸材、18歳ペプ・サール(メス)に興味との報道も。信憑性低し。

CFに移ると、コロ・ムアニ(ナント)は22歳、長身のFWで今季35試合9得点の実績。

あとは、以前もチラリと報道があった、ザークツィー(バイエルン)、パルマよりレンタルバック。
こうした若手への興味を聞いていると、うちにはゴードンも、ブロードヘッドも、シムズも、キャノンもいるし、必要ないですわ!で、一蹴できちゃうんですけどね。

かといって、国内では相変わらず、ザハ(クリスタルパレス)の話が出てたりして、もやは永遠に噂されるのでは、といった感想。エゼくんが怪我しちゃったし、残ってあげたら?と思ってますが。

あとは、2部のトレンドクラブからイヴァン・トニー(ブレントフォード)。チャンピオンシップで活躍した枠で年齢もそれなり、というとジャーメイン・ベックフォードを思い出しますね。可能性がなくはないのでは?ハマーズは同じクラブからベンラーマを獲得して当たってましたね。

セリエAからはレオン(ACミラン)、コレア(ラツィオ)なんかも出てます。イタリア方面は今後も注目したいところ…。

と、第1弾から噂をピックアップしてきましたが、信憑性が出てくるのはまだまだこれから。特に、10位に終わった結果を踏まえると、優位に進められる交渉枠はかなり狭まったのではないでしょうか。アーロンズがいい例ですね。

さて、20-21シーズンを終え、書いてまいりました選手名鑑的レビューもこれにて終了となります。本来ならば、前半戦で出場したケニーを始め、ローンで出されたゴードンや、後半戦でデビューしたブロードヘッドなどなど…も取り上げたかったところですが、割愛させて戴きました。また、どこかの機会で書くことがあると思います。その時まで…。

おわりに

とにかく、今シーズンもお疲れ様でした、そして、来季もよろしくお願いします、とご挨拶に加え、読んでくださった沢山の方々、また、記事を拡散してくださったTwitterフォロワーの皆様にも感謝を。
ブログの感想もぜひぜひお待ちしております。

この度、1年間で計10本の記事を投稿することが出来ました。毎度、試行錯誤しながら結局読みづらい内容や量になりがちで…でも書きたいことは沢山あって。来季も色んなテーマを模索し、挑戦しながら継続できたらと思っています。
ベテランエヴァトニアンから、ルーキーエヴァトニアンの方まで、また一緒に来季の応援を楽しめますよう!
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

COYB!!

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