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破壊の先に


 病院に入院してからというもの、僕の心の内にはある文字たちが付き纏っていた。それらは僕の心を変えてしまった。「壊、亡、虚、滅、消」の五文字。

 その他にも「破壊」「崩壊」「滅亡」が僕へのキーワードとして取り巻いている。何かを壊したいという気持ち、何かしらの固定概念を壊したいという気持ちが大きくなっている。

 たぶん入院前に読んだ漫画からの影響がある。その漫画は、伊藤計劃のハーモニーをコミカライズしたものである。それに登場する御冷ミァハが僕を狂わせたと言っても過言ではない。

 僕は僕自身を破壊した。今まで指針となっていた考えを捨ててしまった。そうしたらどうか、空虚な自分が内側から出てきたのだ。

 僕は身一つなんだと思い知らされ、自分の持ち物の多さに心を痛めた。僕はこんなものだったんだ。それに善し悪しをつけないようにとカウンセラーさんに言われたが、ニュートラル(無)の状態になるのも難しく感じた。
 僕は虚無だ。虚ろな存在だ。そして滅ぶべき存在なんだ。

 そんなふうに考えて数日過ごしていたのだが、今日は家から持ってきていた山頭火の随筆集を読み始めた。

 するとどうか、山頭火は寂しさを生きる糧として生きていた。寂しさを友としていた。それを知った僕は、心の内に虚しさがあっても良かったんだと自分を肯定することが出来た。僕は心のワビサビというものに惹かれた。嗚呼、寂しい気持ちは持っていてもいいんだ。

僕は山頭火や良寛などの本が欲しくなったが、なにぶん入院費も払えるのかどうかの貧乏の瀬戸際にいるから、今は本を買えないでいる(もしかしたら吹っ切れて買うかもしれない)。今は虚しさや寂しさを友として入院生活を謳歌しようと思う。

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