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目の当たりにした身体という奇跡

意図せずにして、忙しい時に限って何かと詰め込んでしまう傾向にある私ですが、今回もまんまと詰め込みました。リオープンからありがたいことにじゃんじゃん入る以来のメール対応とテトリス状態のスケジューリング、感染に対する安全対策で増えた書類各種とめんどくさいこと極まりない事務作業に、久しぶりに施術台を抱えてロンドン市内を駆け巡ることでそもそも激減していた体力の限界への挑戦。実は一番リラックスできるのは施術中という、何がなんだか訳がわからないという最中に、2日間の筋膜解剖のコースを気づいたらねじ込んでました。

インスタグラムのタイムラインに流れてきた、アナトミートレインのトム・マイヤーズ氏と解剖学者トッド・ガルシア氏によるFascial Dissection(筋膜解剖)のライブストリーム・コース。ロックダウン中に2度ほどあったこれに似たコースをメンタルどん底で逃していたのと、いつまでもこのオンラインコースが開催され続けるとは思えなかったのと(あとここまで忙しくなるとは思ってなかったのと)で、稼ぎ期の週末に行われるコースながら思い切って申し込んでいたのでした。

今回は手足のの各関節の深層部まで掘り下げるという2日間のコース。冷凍献体の解剖のため、筋肉や結合組織の状態や関節の動きを確認することができます。セッション中にトムが何度も言っていたように、解剖学の本で見る皮膚の下と実際に見るのとでは、もう本当に別物で、今までこうだと認識していたことがいくつも覆されました。

ある筋肉が思っていたよりもずっと大きかったり、小さかったり。筋肉が治っている骨のくぼみが思っていたよりずっと深かったり、平たい骨がまさかの透けるほどの薄さだったり。解剖図ではどうしてもモヤッとしていた深層部の筋肉の位置がようやくすっきりわかったり、知識や経験としてはわかっていたものの、どうして別の部分の問題が関節に痛みとして出るのかが、組織の構造を目で見ることでふに落ちたり。どこもかしこも興味深くて、あっという間に時間が過ぎていきます。

何より、人間の身体は本当に良くできています。これを大切にせずに何を大切にする?というくらいに。これは人間だけでなくて、他の動物もそうなのでしょう。実際、筋肉のクローズアップを見ていると、人間も(食肉となっている)動物も見分けがつかないくらいです。

パンデミック以前のこのコースは、ラボで、生徒7-8人のグループごとに実際に献体を解剖するというものなのだそうですが(それはそれでいつか参加したい)、オンラインゆえにアップで解剖されていく部分を、説明を受けながら見ることができて、同時に自分の身体のその部分を触れて、見ている部分と皮膚の上から触った感覚を照らし合わせることができるというのは、とても良かったと思います。自分で解剖をしてたら、それどころではないはずなので。

期待を遥かに超えるほどに、多くを得ることができた貴重な体験でした。またひとつ、パンデミックのおかげで今まで実際に行かないと体験できなかったことが、オンラインを通して体験できました。ありがたや。

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