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社会人学生がCSを学ぶ

社会人として働きながら、2022年の4月からイギリスのUniversity of LondonにてComputer Science をオンラインで学び始めました。
本記事では、出願までの経緯と準備内容について綴りたいと思います。誰かの参考になったり、学ぶことを志すきっかけになれれば幸いです。

University of Londonとは

University of London (以下ロンドン大学) とは、1836年に設立されたイギリス・ロンドンに位置する連邦制大学であり、複数のカレッジや研究機関の総称となります。そのため、ロンドン大学は特定の大学ではなく組織名であり、現在17以上の加盟大学がロンドン大学に属しています。
私はその中でもGoldsmithsというカレッジに所属しており、フルタイムの勤務を続けながらComputer scienceをオンラインで学んでいます。
授業内容については、また次の記事でまとめようと思います。
www.london.ac.uk

何故CS

今回入学を決めた動機は主に、以下の3つになります。

①CSの学位

CSという学位の必要性についてたびたび議論されますが、個人的には必要だと感じていて、その価値は若ければ若い方が大きくなると考えています。
その理由としては、経験が浅いエンジニアにとってCSの学位は知識の証明となり、アサインされるプロジェクトや、入社する企業などキャリアのスタートを決める上で、重要な要素になりうると考えているからです。
また、CSに関連する大学レベルの数学や低レイヤーの理解は、技術変化の激しい業界で新しい技術を理解・身につけていく上で、大いに役に立つと考えています。つまり、授業そのものの内容に加え、将来学びうる新しい概念の習得手段としての価値もあると考えています。例えば、機械学習の論文など、そもそも大学レベルの数学力がなければ理解できないように、新しい概念を理解するためには、前提となる知識が求められるケースが多く、このギャップを埋めるためにもCSは良いのではないかと考えています。
また、将来海外での就職(特にアメリカ)を考えた際、CSの学位はビザの観点からも有利に働くと考えています。

②知識の土台作り

エンジニアとしてキャリアを進めていく中で、あらゆる機能が扱いやすくなっている一方で、ある種ブラックボックス化が進んでいるとも考えられます。
このままだと、便利な機能をパズルのように組み合わせるだけのエンジニアとなってしまい、この状態はエンジニアとしての成長とは言えないように感じていました。
上記のように抽象化の恩恵を受けながらサービスを組み立てる側から、ブラックボックス内の仕組みを作る側に移行する必要があると考えています。
技術の使い手から作り手になった時、目先の技術だけでは解決できないケースに遭遇すると考えており、幅広い分野を体系的に学ぶことはこれらの対策にもなると考えています。
一見関係のない学問でも、新しいアイデアをもたらしてくれたり、他の学問を学ぶ上で利用したり、ふとした時に役に立つと思います。

③学問としての興味

色々理由を述べましたが、決め手は単純な学問の興味です。エンジニアとして働いていく中で、なぜこのように動くのか、なぜこの設定をする必要があるのか、どのようにパフォーマンスを上げることができるのか、疑問は常に浮かんできます。
これは、コンピュータの仕組みや技術の背景を理解することによって解消、もしくは理解しやすくなるのではないかと考えています。
動いたから良いのではなく、バックグラウンドで何が動いているのかを詳細に理解したいという欲求が決め手だと考えています。

準備事項

本コースに応募する際の準備書類は以下の5つになります。

  1. IELTS

  2. Statement of purpose

  3. RESUME

  4. 成績証明書

  5. 卒業証明書

非英語圏に住んでいる応募者は、英語能力を証明する書類が必要になります。
自分は、IELTSを選択しました。スコアはOverall 6.0以上、各セクション5.5以上を取得する必要があります。詳細は以下になります。
www.london.ac.uk
IELTSの準備期間としては2ヶ月半ほどしかなかったため、以下の教材を毎晩ひたすら解いたり、留学中の友達とライブコーディングをしながらスピーキング能力を高めました。
また今度、じっくりライティングの勉強をしたいと思います。
ieltstrainingonline.com

Statement of purpose は、日本で言う志望理由書にあたり、何故UoLで学びたいのか、またその学びがどのように将来役に立つのかを書きました。
UoLにはPerformance bace とStandard の2種類の応募方法が存在し、Performance baceが過去の成績・社会人の経歴を提示し入学する形式で、Standardが数学の試験(GCSE Mathematics (Grade A*-B / 9-5) or AS Level Mathematics (A-E), or equivalent.)を受験し入学する形式になります。
自身は前者のPerformance baceで入学しましたが、このタイプの入学には以下の条件があります。

If registering through the performance based route you must satisfy the following before progressing onto the direct entry:

Pass both Introduction to Programming I and either Computational or Discrete Mathematics with a weighted average of 40% or above.

→最初のクラスをパスしないと、次のクラス登録できないので注意してください。(意訳)

比較大学

今回大学を選択する上で、以下の大学との比較を行いました。
各大学の特徴は先人の方がまとめてくださっているためご参照ください。
zenn.dev

  • University of People

  • GT (Georgia Institute of Technology)

  • JAIST

  • NAIST

  • OIST

  • 放送大学

  • 電気通信大学

  • 産業大学

最後に

入学から1年が経ち、仕事と学業のバランスをうまく取れるなったように感じます。
ただ、緊急依頼など仕事が忙しくなったりすると、どれだけ計画的に学習していてもリズムが崩れてしまうなど、山場が多々あった気がします。ただ、本当にやりたいことがあるのであれば、是非挑戦してほしいと思います。きっと良い経験になるはずです。
もし、大学に関する質問や相談があればtwitterのDMからでも相談してください。
共に頑張りましょう!


おまけ

最後に太宰治の小話で締めくくりたいと思います。

勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。
学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ! これだけだ、俺の言いたいのは。

太宰治著「正義と微笑」より

太宰治『正義と微笑』

GIthubで授業の内容をまとめています。
興味のある人は覗いてみてください。
github.com

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