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アヴィニヨン演劇祭、旅のススメ-前半-

毎月10日担当のながいさやこです。4回目の投稿です。雨の日と暑い日が交互に来て、日焼け止めやら折り畳み傘やら合羽やら、やたら荷物が多くなる最近です。皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は2018年に訪れたアヴィニヨン演劇祭での体験を書きました。海外に行きにくくなって久しいですが、南フランスに思いを馳せ、日本の梅雨を一瞬でも忘れていただけたらと思います。
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七月。つい先日、昨年は中止されたフランスのアヴィニョン演劇祭が、今年は開催されることを知った。
4年前の今頃、私は南フランスにいた。死ぬまでに一度は行ってみたかったアヴィニョン演劇祭を観に行くために、単身で海を渡ったのだ。私は半年ほどかけてためたお金で格安航空券を握りしめ、フランスに渡った。

パリからアヴィニョンまでのルートは主に二通りある。飛行機でマルセイユまで出て、そこから電車でアヴィニヨンに行く方法と、TGVというフランスの高速鉄道で行く方法だ。私は、行きは航空券の関係で飛行機を、帰りはTGVを利用した。両方のルートを使ってみて思うのは、断然TGVのルートの方がよかったということ。値段については時期によって変動するし、パックや途中の宿泊費などかかることもあるから比較できないけれど、TGVの方が断然らくちんだった。

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(フランスの高速鉄道TGV。パリ⇄アヴィニヨン間は3時間弱。)

海外旅行上級者や、マルセイユで南フランスの港町や海を楽しみたい人や、旅にはスパイスが必要と考えている人にはこの行き方も良いかもしれない。けれど、海外旅行初級者の私は、パリのシャルルドゴール空港に着き、トランジットをしようとしたら乗り継ぎ便が中々見つからず、結局空港からバスで1時間ほどかけて別の空港に一旦移動しなければならなかったり、バスが遅延したり、マルセイユのホテルがあった地域がエントランスに柵がつけられているほど治安が悪かったりと、ちょっとした冒険があったからだ。

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(マルセイユの港)
マルセイユを経て、なんとかアヴィニョンにたどり着いた。アヴィニョンは1377年まで教皇庁がおかれていた街で、歴史的建物が多く残る場所である。市街の大きさも、首都であるパリとの距離感も、日本でいうところの京都みたいな場所だと思った。日本の古都が木造建築中心だとしたら、フランスの古都は石でできている。小さな街は城壁で囲まれ、ヨーロッパ的な建物の白い壁に、チラシが無数に貼ってあった。フェスティバルのこの期間、ダンス、サーカス、大道芸…1000以上の団体が、作品を上演している。今、この街に、演劇が好きな人が集まっていると思うとなんだか胸が熱くなった。

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フェスティバルのこの期間、アヴィニョンで上演されている作品は、演劇祭側から招待された公式のインの作品と、自主公演のオフの作品から成る。インのパンフレットと、オフの電話帳みたいなプログラムを手にして、いよいよ私のアヴィニョン演劇祭は始まった。

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(インのWEBチケット。開演時刻までに指定の場所に行かなければならない。開演前からゲームの様で楽しい。)

インについては事前にインターネットでいくつか予約していたが、オフは現地でチケットを購入した。現地に行って、最大の誤算だったのが、英語字幕がついていなかったことだ。フランス語がわからないわたしは、何を観るかは内容をよく知る古典やシェイクスピアの公演を選び、インターネットで原作をしっかり調べて、観劇に臨んだ。

この作戦は失敗だった。むしろ古典や有名作品ほど、再解釈している作品が多い。例えばロミオとジュリエットのはずなのに、モップと俳優の一人芝居だったりするのだ。

しかし、ずっとフランス語のシャワーを浴びて芝居を観ていると、だんだんあることに気がついた。言語がわからなくても、うまい俳優はわかるのだ。リズムが心地よく、体の変化に魅了され、言葉がわからなくても、ずっと観ていられる。日本でも、稽古で台詞を語るとき、「外国語で話しても面白いように語る」ということを指摘されたことが何度かあった。それを観客として身をもって知ることができたのは旅の収穫だった。その後、午前中は子供も楽しめるパントマイムやフィジカル系の作品が多いということがわかり、フランス語がわからなくても、オフの観劇体験は充実したものだった。

しかし、次回行くことがあったら、フランス語を学習してから行こうと心に決めた。
こうして昼間、オフをひとしきり回ったあと、夕方からはいよいよ公式プログラムのインに向かった。(続く)



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