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終末じゃなくて週末日記XIV

ある朝、鏡をみたらひどいブスみで驚いた。思わずこれはダメだ、よいブスみとそうじゃないブスみってあるんだよと呟いた気がする。"そりゃ私は綺麗とか美人なタイプではないけれど" は椎名林檎のLyric。その朝はそうじゃないブスみだった。

連休ではじまった週明け。連休って自営業にはあまり関係がないけど、それにしても、連休は引きこもりが1番という場所で、立て続けに暮らしている気がする。観光地でもある、横浜の中区と鎌倉では一切の罪悪感はなく人が多いからね。というエクスキューズのもと、部屋から一歩も出ない日を過ごせる。とにかく今の部屋、名付けて文豪部屋がすきなんだよ私は。

連休明け、庭に出ると梅の木の蕾が膨らんでいた。もうすぐ咲くんだなと感じたときと、あの人も私のことが好きなんだわと確信した瞬間は似ているような気がする。何事も、はじまる前のある瞬間の高揚感は儚い。桜よりも梅の花のほうが好き。丸いフォルムが可愛いから。目がぼあぼあした、最近ぼあぼあがひどいんだと知人と話したら、いよいよあなたも、眼鏡デビューする時期なんじゃない?と返された。週末、意を決して、たぶんこのお店の眼鏡を使っている人は多いと思う眼鏡屋さんに行った。店内は混み合っていて、King Gnuみたいな店員さんの、どんな雰囲気の眼鏡をお探しですか?に対して、画像を見せたら、あんぐりとした表情をされてしまい、もうそれだけで意気消沈してしまった。いくつか、フレームを持ってきてくれたのを試してみると、似合わなくはなかったけれどパンチがあり過ぎた。そうじゃないの眼鏡も含めての、この雰囲気を醸し出したいんだと説明したら、ため息をつかれてしまった。

次のお店では、のっけから画像を見せた。店員さんは顔色ひとつ変えず、はいお掛けください、只今お持ちいたします。と幾つかのフレームとレンズを見せてくれた。最初のゴールドのフレームで、これだ、これよこれしかないと思った。ほんの少しだけ、ずっとずっと裸眼で、この素晴らしき世界を見てきたのに、年齢を重ねるとは、こういうことなのだなと切なくなった。

眼鏡デビューという高揚感に加えて、そうじゃないブスみの原因は、きっと目のぽあぽあ感により脳も疲れていたのだろうという原因がわかって安堵感があった。儚い感情は湧き上がることなく、淡谷紀子先生・野村サッチー・塩沢ときセンセの画像をそっと閉じた。

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