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夜のフライトで罰を…

往復便ともに1時間遅れだった。終電ギリギリという緊張感を浴びて、やっと鎌倉に戻った。これは、きっと何かの罰なんだろうなと思うことにした。頭の中が疲れすぎて寝付けなかった。

夜のフライトでは、機内で読書をするのがとてもすき。再読50回目くらいの今宵は、むせかえほどの陰鬱と、滴るほどの淫靡に浸ろうと、脳内伝達物質をセットして搭乗したのに、

隣の席の中年女が
うるさい… というよりも 
やかましい。

まさに陰鬱や官能、淫靡の対極のようなこのシチュエーション。これまでどんな喧騒の中でも、読書に集中できるようにあみだした全ての技法を使ったのに、見事に破られてしまうくらいに、とにかくやかましい。多分40代半ばだと思われる中年女は、こちらが息を吐くことを忘れてしまうくらい、せっかちとも違う独特の話し方で、これまで一度も沈黙という時を、味わったことなどないのだろうなという勢いで、次から次へと言葉を発していた。前世は回遊魚だったに違いない。もう枕詞など付けずに言ってしまえば、色気とか妖艶など無縁なタイプで、隣に座っている彼女のパートナーは、よくこの中年女を抱けるなと…

いつもはごった返す鎌倉の駅や、若宮大路、鶴ヶ丘八幡宮界隈は誰も歩いておらず、武士カルチャーを独り占めだった。独占欲・執着・嫉妬そういうのはダメだって言うヒトよりも、私の前だけでは、剥き出してくれる男がいい。私はそんなことばかり思っているから、そのうち、また罰を受けるのだろうけど。疑心暗鬼が引き金となり滅亡した鎌倉幕府みたいなのは、望まないのよ。

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