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べてるアーカイブ35th(11) 「当事者の力に支えられる精神医療」 (2008年 精神医学専門誌掲載)

お話し:川村敏明(精神科医・元浦河赤十字病院精神神経科部長現在浦河ひがし町診療所院長)
聞き手:向谷地生良(北海道医療大学教授
社会福祉法人浦河べてるの家理事)

向谷地 日本の精神医療の歪みの象徴として「多剤多量」 投与が問題となっていますが、薬の処方の仕方が、一つの浦河の精神医療の特徴ではないかと思われますが、川村先生が浦河で精神科医をするうえで、大切にしていることをお聞かせください。

川村 これはいつも感じることだけど、浦河では、いわゆ る「一生懸命治そうとしてない」ことだね。問題に向き合うスタンスが最初から違っている。
僕は浦河で精神科医として、周りに「助けられている感じ」が最初にあるから、力まなくていい。そこが違う。多くの場合、精神科医が患者や家族の抱えている問題を医者の力で何とかしてしてあげようとするあまり、それは間違いなく善意なんだけど、それが、薬に対する「力み」になって、僕らだったら絶対に使わないような薬の処方をして、結果的に怠いとか眠いとか、患者にとって気の毒になってしまう。
よくあるのが、私たちが聞くと「それいい苦労だね!」 とか「すごいね!」ということが、一方ではそれはあってはいけないことだとされて、薬で抑えられているようなこともあるね。

向谷地 本人や家族がかかえる問題を、どう見るかという基本的な部分で全く違った結果になると言うことですね。

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