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なぜ今、ANRIが、ポジティブ・アクションを行うのか

ANRIの江原ニーナです。

Twitter等で既にご覧になった方も多いかと思いますが、日経「有力スタートアップ、女性役員6% 上場企業と同程度」および、今朝公開のプレスリリースにもあるように、新たな投資方針として、現在運用中の4号ファンドでは、全投資先のうち女性が代表を務める企業の比率を最低でも20%に引き上げる投資方針を発表しました。

ANRIでは、多様なバックグラウンドを持つ人々が関わり合う環境や、異質な他者の存在に想像を働かせ、そして受け入れる姿勢が、従前には不可能であったさまざまな課題を解決する糸口の一つであると信じています。まずはスタートラインとして20%を目指しますが、今回のポジティブ・アクションを皮切りに、インクルージョンへのさらなる取組みを進めてまいります。

ANRIとダイバーシティ

ANRIでは今年、投資や寄付、自社の採用についてダイバーシティ観点で活動方針を作ることを発表しました。

ANRIの採用については、今年の1月には正社員が女性は私だけ(1名)のところから、正社員3名+インターン1名の計4名と、ANRIメンバー全体の3分の1まで拡大しています。また、毎年実施している「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」では、今回の奨学金受給者のうち女性比率を半数近くにまで引き上げることができました。(こちらについては後日また別のリリースが出ます。お楽しみに!)

さらにこの動きを、ファンドを超えて業界全体に広げていくことを目標として、D&Iオフィスアワーを定期的に開催するなど、ダイバーシティとインクルージョンへの取り組みを重ねてきました。

なぜやるのか

今回のポジティブ・アクションをはじめ、さまざまな取り組みを推進する背景には、スタートアップ業界におけるジェンダーギャップに強い危機感があります。冒頭の日経新聞の記事にもあるように、スタートアップ企業における女性の経営参画は著しく遅れています。今回の調査では対象外であったスタートアップ(企業価値が100億円を超えていない企業)については、現状まとまった信頼できるデータは(残念ながら)ありませんが、女性やマイノリティの少なさには大差ないことには合意できるでしょう。

このようなジェンダーギャップが生じる原因は決して一様ではありません。現状の絶対数のアンバランスや、ゆえに生じる(あらゆるマイノリティ属性の)ロールモデルの不在、ライフイベントやその際のサポートおよび周囲の理解の問題、投資家サイドのジェンダーの偏り、アンコンシャス・バイアスに関する課題など、社会的・構造的な要因が絡み合っています。

そこでANRIでは現状打破のアプローチの一つとして、スタートアップエコシステム内における絶対数のアンバランス解消、投資家サイドからの意識の変革を目標として、今回のポジティブ・アクションの実施に至りました。この背景には、次の当たり前を作ろうとする「すべての」起業家が、性別という属性にとらわれず挑戦できる世界を作りたい、「すべての」起業家の背中を押したいという思いがあります。まずは現状の機会の不平等を認識し(この点は、過去のANRI D&Iの取り組みを重ねる中で見えてきたことでもあります)、それを是正する策を講じる(例. ポジティブ・アクション)ことで、不平等を解消していくことが狙いです。

なぜ今なのか、なぜ我々がやるのか

ANRIは現在、昨年10月にファーストクローズをアナウンスした約200億円規模の4号ファンドを運用しています。

2012年のANRI設立以来、各方面からたくさんの支えをいただいたおかげで、ファンド規模は拡大し続けており、ともなって(良くも悪くも)スタートアップエコシステムへの影響力や果たすべき責任も増しているといえます。

起業家が、スタートアップという手法を通じてさまざまな社会の負の解決に取り組むように、ANRIもベンチャーキャピタルとして率先して社会の負の解消に常にチャレンジする姿勢を貫きたい。そういった強い思いから従前にも、ANRI基礎科学スカラーシップ(実用化には時間がかかり得る基礎研究として重要な分野に取り組む学生を対象とした給付型奨学金プログラム)の実施等に取り組んできたわれわれが、次に挑戦したいのがジェンダーギャップの是正なのです。

ファンドサイズが大きくなったぶん、「20%」は正直チャレンジングな数字です。でも、ジェンダーの議論にありがちな「難しい問題だよね」という着地では終わらせられないという強い信念があります。2割以上に向かって進みながら、機関投資家とのパフォーマンスの約束も守ることを目指します。挑戦は難しいほうが楽しい!🔥

ANRI代表の佐俣アンリは先のnoteで、次のように綴っています。

そして、僕たち自身も起業家でありたいです。一緒に戦わせてもらっている起業家の皆さんから見ても、ちょっとびっくりするくらいの挑戦をしていたい。出資者の方々から「それはちょっと無理かもよ?落ち着いて?足元もしっかり見てね?」と心配されながらも、必死に背伸びして自分たちの事業をチームをあるべき姿に近づけていく起業家でありたいです。

おわりに

性別やその他の属性を問わず、ジェンダーギャップや性差別を「感じたことがない」という方もいるでしょう。多くの人は差別を「しない」だろうし、「されたこともない」という方もいると思います。(あるいは、実力主義の側面が強いスタートアップ業界では、社会的・構造的なディスアドバンテージを含む実力以外の要素が捨象され、それを認めることが"実力不足"と結びついてきたかもしれません。)自分は差別を「しない」し、「されたこともない」となると、"そんな問題と自分とは無関係"、または"大ごとにしすぎ"と考える人もいるかもしれません。

しかし、これまでのD&Iの取り組みの中で、スタートアップ業界におけるジェンダーギャップと、そこに盲目であることが、(必ずしも表面化せずとも)不平等につながっている現状を目の当たりにしました。(詳しくは「なぜダイバーシティのオフィスアワーをやるのか」をご覧ください。)

「あなたが解決の一翼を担っていない時、あなたは問題の一部である。(If you are not part of the solution, you are part of the problem.)」という表現があります。現状の課題に盲目であること、また気づいても傍観者であることは、無害ではないことを自覚し、「あるべき姿」に向かってアクションを続けていく所存です。

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