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賃貸人の共同の利益に反する行為につき賃貸人・区分所有者は責任はどこまで?【判例1】

マンション管理に係る判例を紹介するシリーズをしてみようと思います。


(神戸地方裁判所尼崎支部 平成13年6月19日判決より)

(1) 事件の概要


賃借人Yは1階店舗で居酒屋を営むに際し、 厨房換気ダクトを店舗南側に、 また、造作、看板等を設置する等し深夜1時までの営業を行ったので、 管理組 合Xは、Yと賃貸人・区分所有者Zに対し、 ダクト等の撤去と深夜営業の禁止及び損害賠償を請求した。

(2) 問題点


① ダクトの設置は区分所有者の共同の利益に反するか、 仮に共同の利益に反するとして、 Zはダクトの撤去ないし移設義務を負うか

② 深夜営業は区分所有者の共同の利益に反するか

③造作、看板の設置は区分所有者の共同の利益に反するか、仮に反するとしてZはその撤去義務を負うか

④ 被告らは損害賠償責任を負うか

(3) 裁判所の判断


Yに対しダクト等の撤去を認め、損害賠償についてはYとZの連帯費任を認め、支払いを命じた。

① について

管理規約と別表によれば店舗用ダクトの設置場所をエントランスホール・メールコーナー等上1階屋根と定めており、店舗区分所有者に1階屋根の専 用使用権が与えられていること、ダクトを立ち上げるスペースが確保されていること等からすれば、ダクトの設置場所を限定する趣旨である。
したがって、本件ダクトは管理規約に違反している。

区分所有法6条1項にいう区分所有者の共同の利益に反する行為には、他 人の財産や健康にとって有害、迷惑、不快となるような生活妨害 (ニューサ ンス、騒音、臭気、振動など) を含むと解される。 

店舗営業中は臭気を感じる住民は大多数に上り、その分布状況はマンション全域に及んでいること、南側窓を開けられない、閉めていても換気口から臭気が部屋に入ってくる、ベランダに洗濯物を干せない等の迷惑、不快感を感じている住民が多数いることからすれば、ダクトの南側設置は区分所有者の共同の利益に反する。 

ダクトはYが設置したものでありZはYの所有物をその意思に拘わらず処分することは違法であるから、その撤去ないし移設義務を負わせること は不可能を強いることになる。
Zは、Yに対しダクトを移設するよう是正を請求する義務を負うとしても、これから直ちに自らダクトを撤去ないし移設する義務までは負わない。



②について

飲食の客が店舗前で大騒ぎしたり店員が客と思われる者がバイクを空ぶかししたりする等夜間の騒音が気になる住民が多数に上りしばしば安眠を妨げられているし、使用細則で、楽器の演奏時間を午前10時から午後8時に制限していること カラオケ等の音量を制限し「特に深夜、早朝には十分気をつ ける」と規定している。 

また「音の感じ方について個人差があるため、他の区分所有者又は占有者から苦情が出ないよう十分気をつける」とも定められ、本件マンションでは、騒音について特段の配慮が明記され 「苦情が出ない程度」という特に厳しい基準をもって対処するものとされている。 

以上からすれば、Yの深夜1時までの営業は区分所有者の共同の利益に反する。

Yらは、営業時間の制限は営業上の不利益が大きいと主張するが、本件マ ンションで営業を行う以上、 本件マンションの区分所有者らの共同の利益に反してはならず、官営規約の趣旨を最大限に尊重する義務があり、本件店舗を営業場所として選択したことから当然に生じる制限である。

そうすると、住民の51名の者が午後10時までの営業を可としていること、本件マンションの立地条件、Yらの営業上の利益を総合考慮すると、午後11時以降の夜間の営業を禁止するのが相当である。 

③について

管理規約は店舗用アプローチに専用使用権を認めているが容易に移動でき るもの以外は置くことができないと明記して、固定式看板や造作の設置を禁じていること、これらの設置がシャッターラインを越え専有部分から出ており管理規約違反であるとの説明をZの関連会社から説明を受けたこと、しかしYはそのまま工事を続行させ造作、看板等を完成させたこと等によれば、 管理規約違反の造作、看板等は区分所有者の共同の利益に反する。

これらはYが設置したもので、同人の所有物であるから、Zに撤去義務を負わせることはできない。

Zは造作、看板等を管理規約に合致するよう是正をYに請求する義務を負うにしても、自ら造作、看板等を撤去する義務までは負わない。


④について

Zは、Yに対して、管理規約を遵守するように指導する義務があるにも拘わらず漫然とこれを放置し、Yに管理規約違反のダクト等を設置させた過失があるからYと連帯して損害賠償義務を負う。


簡単にまとめると

分譲マンションの一部区分を借りる以上、マンションの管理規約に従う必要がある。

住民の迷惑になる事は許容出来ないが賃借人の生活の事も考えるとある程度の営業時間は確保しよう!

指導を無視して造作、看板等をつくったので管理規約に合うように直す必要があるので区分所有者が責任をもって指導する事。

管理規約違反を無視してた事も考慮すると連帯責任ね!

という話しです。

なかなか長い話しになってしまった。
判例は面白いし勉強になるので今後シリーズ化していこうと思います。


ではまた!

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