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馬主本乱れ読み。(オンワード、ニシノ、ハナズ)

最近、馬主・関口房朗さんの著書を立て続けで読みました。

他にも、いろいろ、馬主本うまぬしぼん、持ってます。

何冊かご紹介を兼ねた、読書感想記事です。

(余談かもしれませんが、「馬主」は『うまぬし』とも『ばぬし』とも読めますが、ニシノやセイウンの冠で知られる馬主・西山茂行さんによると、中央競馬では『うまぬし』で公式に統一されているそうです。)



さてさて馬主本うまぬしぼん、古いものからになりますが、まずは、こちら。

「樫山純三 走れオンワード 事業と競馬に賭けた50年」

本自体は1998年発行ですが、著者の樫山純三さんのあとがきが昭和51年に書かれており、内容もそれ以前の内容となっています。

樫山さんはアパレル・宝飾品会社のオンワード樫山の創業者で、競走馬事業にも乗り出し、1957年の牝馬二冠馬・ミスオンワードなどを所有されていました。

さすがにこの時代の競馬はリアルタイムでは知らないので、本や残された映像で知ることしかできないのですが、現代ではちょっと考えられないような逸話が面白いです。

ミスオンワードがオークスから連闘でダービーに挑戦した話などびっくりします。結果は、やはり疲れていたため惨敗してしまったそうです。

馬主の樫山さんが「ひょっとしたら」と考えたそうですが、現代なら非難轟々になりそうですね。

あとは、1972年のフランスダービー有力馬をダービー直前に購入した際の経緯なども詳しく書かれており興味深かった。

購入したのはハードツービートというフランス馬。

上位人気に応えフランスダービーを勝ち、樫山さんは日本人馬主として欧州クラシックに勝ってしまう偉業をあっさり成し遂げています。
(と言っても、大枚3億7500万円を支払っての購入ですが・・)。

ハードツービートは1972年、1973年と有力馬として凱旋門賞に挑戦しており、73年は3着に善戦。

日本馬ではないとはいえ、どちらかの年でもしも勝っていたら、日本人の「凱旋門賞コンプレックス」は今ほど強いものではなかったかもしれません。

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つづいて紹介しますのは、

「馬主が書いた一日一言」西山茂行

現役の馬主さん・西山茂行さんの著書で、1992年初版。


内容は、1987年から1991年に渡り、サンケイスポーツに連載されたコラムをまとめたものです。

「走れオンワード」よりは現代に近くなったものの、個人的にはまだ競馬ファンにはなっていない時代。

ただ、帯にもある通り、「空前の競馬ブーム」を迎えた時代の日本競馬の雰囲気、加えてその向こうの日本の雰囲気・好景気が伝わってきて非常に面白い内容ばかりです。

例えば、1989年にあった「竹藪二億円騒動」の時期に、その裏で安田記念を制したのはなんと『バンブー・・・・メモリー』。

専門紙の印では全くの人気薄にも関わらず、単勝が1870円しかつかなかったというのは、竹藪を気にしたファンが多かったのだろうか、と書かれています。

時事ネタ馬券の最たるものですね。

あと面白かったのは、1987年のジャパンカップ週のコラム。

今や国際競争とは名ばかりで、有力な外国馬の参戦がほとんどなくなったジャパンカップですが、当時は逆に日本馬が劣勢。・・というか、日本の馬主にとって魅力に乏しいレースで、暮れの有馬記念に向かうか、賞金稼ぎにマイルチャンピオンシップやアルゼンチン共和国杯に「逃げる」日本陣営が大勢だったよう。

西山さんは、天皇賞馬ニッポーテイオーや、3歳世代ならメリーナイスやサクラスターオー、牝馬ならマックスビューティなどが日本代表として出走するべき、と主張しつつも、ご自身も、当時の所有馬のうち代表格であるニシノライデンについて、「完調ならジャパンカップに出しましたか?」と聞かれると、「うーん。そう聞かれると悩まないでもない。」と考えたそうです。

それほど、当時の日本馬、日本陣営にとって、ジャパンカップは魅力のないレースだったようですね。(西山さんは、少し外国馬に対して招待した手前があるとはいえ、サービスが過剰ではないか。日本陣営に対してサービスが足りないのでは?と書かれています。)

ちなみにこの年のジャパンカップはフランス馬・ルグロリューが勝ったのですが、西山さんはコラムで狙い馬として推薦されていてさすがです。

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もう一冊、少し新しめの、

「馬主の一分」マイケル・タバート

2014年発行。

著者のタバートさんは、オーストラリア出身ながら、京都大学出身で日本語はペラペラ。(本書の紹介には、「某騎手より上手い」と書かれていました(笑))

タバートさん所有の代表馬としては、なんと言ってもオーストラリアのG1を勝ったハナズゴールがいるのですが、本書が書かれた時点ではまだG1勝ちはありません。

しかし、「G1を勝てる馬」と信じている様子が本から伝わってきます。そして、言葉通り、本書発行のあと、2014年春にオーストラリアに遠征しオールエイジドSというG1を勝ったのですから見事です。

比較的安価の馬(数十万円〜数百万円)を購入し、どのようにレース選択し、賞金を稼いでもらうか。等身大の馬主の言葉で書かれており、また比較的新しい本ということもあり読みやすいです。


他に、「馬主の愉しみ」というランニングフリーの馬主さん・藤島泰輔さんの本も面白かったので、最後にリンクを貼らせていただきます。よろしければ!


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