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生涯収支マイナス1億円?〜「大川慶次郎 回想録」を読んだ。

こちらの本、読了。

「大川慶次郎 回想録 ー杉綾の人生ー」

2000年刊行

本の帯に、

一億儲けた。

  二億使って…。

とあります。

・・ということは、生涯収支マイナス1億円?


しかしこれは、大川慶次郎氏というより、帯にコメントを寄せた井崎脩五郎さんの戦績なのかもしれません(笑)。


本の内容はというと、馬券どうこうの話ももちろんありますが、日本の競馬評論の草分け的存在である大川さんが、自身の競馬人生を振り返ったものです。

大川さんは、昭和34年(1959年)に1日の全レースの予想を的中させる、パーフェクト予想を達成した競馬予想の達人。

個人的には、昔よく見ていたフジテレビの「スーパー競馬」での温厚ながらシビアな解説が印象に強く残っています。

あのオグリキャップの引退レースだった1990年の有馬記念で、2着に入ったメジロライアンの名前を連呼・・「ライアン!・・ライアン!!」と叫んだことでも有名ですね。


・・本では、大川さんの経歴が詳しく書かれており、Wikipediaに反映されていないエピソードも結構あるようです。

例えば、大川さんは、父の牧場事業を継ぐべく幼少時から競馬場や牧場に足繁く通っていたそうで、子供の時にすでに大人顔負けの「相馬眼(馬の良し悪しを見分ける眼力)」を身につけていたそう。この辺りは本を読んで初めて知りました。

そんなに小さい頃から競馬に親しんだ大川さんでしたが、戦後の農地改革で父が経営していた牧場を失い、オーナーブリーダー(競走馬を生産・所有し、競馬場で走らせる事業家)としての道は断たれてしまい、大学卒業後は一旦は製紙会社に就職したそうです。

その後、1956年の年度代表馬であるメイヂヒカリなどを所有する新田新作オーナー(明治座社長)の競馬秘書になったり、ラジオの競馬解説者を経験するなどし、競馬新聞と予想家契約を結び、徐々に競馬評論家・予想家としての実績を積み上げていったようです。


「競馬愛」、馬への愛情を感じるエピソードとしては、マツノオーという馬がゲートで硬直してしまい、まともにレースができず大敗してしまったことがあったそうなのですが、当時のファンが騎手と馬に罵声を浴びせたそうです。

そこで大川さん、「馬には罪はないんだ、こんなことで騒ぐぐらいならそんなファンは競馬場に来るな!」と一喝したそう。

他にも、ナリタブライアンの晩年のレース選びに関する調教師への辛口コメントや、競馬評論についての意見など、第一人者としての自負や誇りを感じました。

特に感銘した部分を少し引用します。

 馬の見方について鍛錬し、サラブレッドの生産の現場の土の匂い、朝早い調教の時の馬の息づかい、厩務員さんたちの日々の苦労、調教師や騎手の物の考え方や感性、それらをぜんぶ体感している者が、やはり「予想の現場」で頑張るべきだ、ということです。
 机上の空論という言葉があります。たしかに机の上だけでも予想はできますが、それはどこまでいってもアマチュアのそれでしょう。

236pより引用。


今はYouTubeなどで誰でも予想を公開できますが、もし大川さんがご存命だったら、どんなご意見をお持ちになるか・・。時代は変わったものです。。


ともかく、こちらの本、競馬ファンにおすすめできます。(例によって古い本ですが・・。)


最後に、以前大川慶次郎さんと井崎脩五郎さんの「最強馬議論」対談がすごく良かったので書いた記事を貼っておきます。よろしかったらこちらもどうぞ・・。


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