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歐巴桑(おばさん)讃歌。

こちらの本を読み終わりました。

「台湾はおばちゃんで回ってる?!」
2022年出版

著者の近藤弥生子氏は、台湾在住歴10年以上で、台湾人男性と結婚され、現在進行形で台湾で子育てもされている。

タイトルが「台湾はおばちゃんで回ってる?!」なので、台湾のおばちゃんのエピソードばかりなのかなと思いつつ読み始めた。

ただ、もちろん台湾のおばちゃん(台湾の華語で「歐巴桑」というらしい。)の話は多いのだが、それらエピソードの単なる羅列ではなく、著者の近藤さんが台湾で出会った人々、その中で多くの台湾おばちゃんのサポートを得ながら、良い面を吸収し、自分自身が台湾で成長し、おばちゃんになっていく過程を綴った本であった。

章構成としては、

一、たくましく人間味あふれる台湾人
二、とにかく「食」を大切にする
三、台湾での妊娠・出産
四、シングルマザーとして暮らし、台湾人と子連れ再婚
五、台湾で子育て、そしておばちゃんになった私


となっており、章タイトルの通り、三章以降は妊娠から子育てまで、たとえば産後のケアサービスの話など、かなり具体的。(台湾では産後の母親がたっぷり休むことが大いに推奨されており、そのためのケアサービスが充実しているらしい。)

私はおっさんなので、女性にとって実用的な話・情報が多い本書はどちらかと言うと女性向けなのかもしれないが、台湾で多くの台湾人と仕事をした経験がある身として、なるほど、と腑に落ちる部分が多かった。

たとえば、台湾では日本の社会にありがちな「同調圧力」がうすい点・多くの人が「自分軸」で生きている点、世話好きな人が多い点、会社内で女性の存在感が大きい(またそこに不自然さを感じない点)、など。

自分の経験と照らし合わせて、同感・再確認した。
特に、社内で女性が元気で、男性はとにかく優しいな、と思うことが多く、時には、変な表現だが、尻に敷かれている?ぐらいの印象が残っている。

本の中でもっとも印象に残ったのは、マーケットでの買い物が上手で料理をなんでも作れるベテランシッターに著者が感心の言葉をかけたところ、「人それぞれ得意なことは違う。あなたは仕事が得意なだけ。」と言われるところだろうか。

シッターさんに言われ、近藤さんはこんな気づきを得る。

 さまざまな「母性」があっていい。
 私が自分で子どもに与えられなくてもいい。
 足りないものは、社会のそこかしこにいる方々の手を借りて子育てすればいいんだ。
 その代わり、私も自分が上手にできることを、社会に返していけばいい。
 そんな私の姿を子どもたちに見せることも一つの教育かもしれないと、思い始めたのだった。

192-193pより引用。

個人と社会の距離が近いのかな、と思う。
自分に足りないものを誰かが補ってくれる仕組みがある、反対に、自分の力が誰かにとって助けとなる社会。そんな関係であろうか。


台湾理解の一助としてオススメできる本です。


<おまけ・台湾スナップ>

おどる人たち。


屋台のおばちゃん。


チャーハン。


台北101と原チャリ退勤。


檳榔ビンロウ

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