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素敵な父親。佐川光晴「初めてのライバル」を読んだ。〜摘読日記_33

短編集「駒音高く」。


こちらを読んでいるところです。

初版2019年

「大阪のわたし」
「初めてのライバル」
「それでも、将棋が好きだ」
「娘のしあわせ」
「光速の寄せ」
「敗着さん」
「最後の一手」

の七篇が収録されており、いずれも将棋指しをめぐる物語。

まだ全部読めていないものの、心にじんわりと優しさが染み込んでくるような話が多そうで、いいですね。

一方で、将棋のシーンは、たとえば「大阪のわたし」ではおばあさんの清掃員vs子供、「初めてのライバル」では子供vs子供、だったりでプロの対局ではないのですが、張り詰めた空気感が伝わってきて、これも読んでいて心地よい。

「初めてのライバル」、という話は、少年野球をやめ、引っ越した先の町で新たに将棋を始めたばかりの小学五年生が主人公なのですが、ひとつ、印象的なシーンがありました。

少年は、父親の仕事の都合で引っ越しすることになってしまいます。
その、引っ越しを告げるシーンで、少年の父親は手をついて謝るのです。

なかなかできないことだな、と思いました。
なぜ謝ったかというと、子供が今の学校や、少年野球チームで築いた友達や先生、コーチとの関係性や、今の生活の習慣を「子供の財産」と父親が認めていた、ということだと思います。

子供には子供の世界がある、ということを、親としては忘れてはいけないな、尊重してあげないといけないな、と思わされました。

また、子供がどんなふうに世界を築いていっているのか、毎日の会話が大事だな、と再認識しました。

将棋の話なのに、将棋と関係のないところを紹介してしまいましたが、主人公の人となりだけではなく、家族の人となりも自然なエピソードの中でわかるように描かれていて、物語にすっと入っていけます。


見つからない、「虹を追いかける男」。


ところで、著者の佐川光晴さんの「虹を追いかける男(双葉文庫)」という作品について、少し前に日経新聞で磯崎憲一郎さんという作家さんが紹介されていたのです。

その紹介文を読み、読みたくなっていろんな書店を探したのですが、まったく見つかりません。。

新聞の影響力・・なのでしょうか・・??

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