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これぞ師弟関係。〜松井 浩「豪打 伝道の達人」を読んだ。

今年は、ほとんどプロ野球を見てません。

どうも、野球への関心が薄い一年です。

野球本もあまり読んでいなかったのですが、積読本からチョイスしたこちらを読み終えました。

「豪打 伝道の達人」

2012年発行


副題が「荒川 博 ・ 一本足打法を完成に導いた名伯楽」となっており、内容は王貞治と二人三脚で一本足打法を完成させていく過程を、荒川さんへのインタビューを元に綴ったもの。

以前、同じ著者のこちらの本を読み感想記事を書きました。

正直、この「打撃の神髄 榎本喜八伝」の方が面白かったかな。

というのも、榎本喜八という存在が謎めいており、榎本喜八の人物を追いつつ、その打撃の真髄・臍下丹田せいかたんでんについて理解していく読書体験が新鮮でした。

読む順番が逆の方がよかった気もします。

王貞治については、結構いろんな本や映像作品で、知っていることが多かったので。(実家が中華料理店で、幼少時、戦後にも関わらず食べることには困らず、頑強な体の基本が作られた、とか、プロ野球に入ったあと、伸び悩んだ時期に銀座を飲み歩いていた、など。)


とはいえ、興味深い部分もありました。

王貞治の打撃の流れのポイントが39箇所あり、いずれも荒川さんが論理的になぜ必要なのかを考え抜き、王貞治はそれを理解した上で、あとはひたすら実践することに集中した、というところ。

(野球をやっている人は、一つ一つの動作を自分でやってみても良いかも。バットの握り方、構え、ミート、スイング、フォロースルーまで、細かく解説されています。)

王貞治が昭和52年に不調に陥ったとき、荒川さんが解説者としてラジオの中継で「作った人間が直せば、すぐ直りますよ。」と発言したところ、ラジオ局にファンから「すぐ直してあげてほしい。」という電話が殺到し、それから連日、つきっきりで姿勢を直した結果、不調を脱することができた、というエピソードも良かったです。

当時、王貞治はハンク・アーロンが持つ755本のホームラン世界記録に迫ったところで、選手としては晩年の域。一本足打法も熟成の域だったと思いますが、それでも、最初に指導した荒川さんが見れば、一目でどこか悪いか見抜けてしまう、というのは凄い。

本当の師弟関係ですね。


あとは、巻末の「荒川博/王貞治年表」が、細かい情報満載で良かった。


中でも、王貞治がホームランの世界記録を塗り替えたとき、荒川さんの指導法を認めていなかった川上哲治が、「荒川、世界一おめでとう。いちばん喜んでいるのは君だと思う」と電報したという挿話が良かった。


王さんの芸術的なフォームの写真も満載です。


<野球本【INDEX】>も更新しました。


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