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千葉台風被害でライフラインが止まるという体験から。

私が住むのは千葉外房。

海辺の町ではあるが海から7km、震災の時も色々あったが復旧も早く、無事と言えば無事だった場所だ。

台風だってこの時期はよく来る。
その度に庭の鉢植えを玄関に入れる程度の対策で済んでいた。

ただ今回は、台風の被害とはこういうことかと色々身をもって知り、考えることになる。


台風情報と当日

一応ネットニュースで台風が来るという情報は見たという程度。
いつものように小さな鉢植えだけ玄関に避難させ、雨戸すら閉めない無防備振りで眠った。

元々北海道出身の私と長野県出身の夫は、冬対策は得意なのに台風対策はどうもいつもどこかピンときていなというか、抜けているのだ。
これは本当に反省しなくてはいけない。

夜中に恐怖を感じるほどの暴風雨に目を覚ました私と猫。何かいつもと違う胸騒ぎに、猫が必死に夫と犬を起こすも、本能の弱いチームはぐっすり。

そして翌日大事な仕事があるという夫は、明け方いつも通り車で都内に向かおうと家を出る。
玄関から車までの数歩で全身ずぶ濡れ息も出来ないほどの暴風雨、なぜそれでも行ったのか。。


案の定、少し先の道は川になって車が沈んでいる‥

溺れるベンツ‥

別の道を探すも倒木。


当たり前に高速は通行止め、下道は水没か倒木、この頃はすでに停電。
情報もあまり得られず帰宅、とりあえず雨風が止んだので荒れた庭やガレージを片付けることに。
うちは近所の屋根が飛んできて車に傷が入ったが、これは周りの被害に比べるとほんのかすり傷だったということに後から気づくことになる。


情報がない

停電ではあったけど、この辺はよく停電になっては数時間で復旧するのでいつものことだと思っていた。

さすがに長いな、しかも台風一過の35度近い猛暑‥ちょいちょい車で涼みテレビを確認するも特に情報はない。
たまに台風被害情報やれば市原のゴルフ練習場のポール倒れた場面ばかり。
まあでもそのうち、、と思って片付けを進めていると、夕方に今から断水という防災無線が入る。


断水

さすがに被害が大きいのでは?と思い始めた頃にはもう電波もないことに気づく。
基地局が停電か。
外に出ていた近所の人たちと情報交換し、高圧線の鉄塔が倒れたと聞く。
それじゃあ簡単には復旧しない。
最悪1週間だねと長期戦の予想を立て、最悪犬猫連れて車で脱出すればいいから、今回はこのまま大きな被災の練習と思って過ごそうということになった。
水などの備蓄は十分あったけれど念のため井戸水などの生活用水だけでもと給水車へ並ぶ。

給水車の列では色んな会話が聞こえてきた。
家に水が何もない、食べ物も何もない、店が開いてない、開いてるコンビニはもう争奪戦で何もない、水を入れる容器すらない、そうこう言ってる間に飲料用の給水車は品切れ。

イライラしている人も多く、洗濯ができないどうしてくれるんだと職員を問い詰める人もいた。
20世紀少年のように、最後のワクチン1本を取り合えば殺し合いも起きるのかもしれないが、まだ今は十分助け合いが出来る段階だ。
でも、いろんな人がいる。

台風の認識の甘い北国育ちの私たちであったが、こういう時は北国育ち故に備蓄という習性があったのが幸いしたと思う。
それに、2011年の震災の経験から割と備えていた方だった。

ただ、10年前に外房に引っ越してきた時に地元の神主さんが、ここは昔から温暖で食べ物も豊富で災害もない地域。だからお店の営業時間も短いし、人ものんびりしてあまりせかせか働かないんですよと言っていたのを思い出した。
もしかしたら備蓄の文化はあまりなかったのかもしれない。


予想外の被害

何がどう狂ったのか、台風直後から和室の押入れにアリが大量発生した。
客間として使っていて、押入れの中も着物類だから甘いものもないのに。
猛暑の室内で押入れの中身を全部出し、奥の小さな隙間に発生源を特定してコーキング。
アリの駆除‥
これが地味に堪えた。

と思っていたらキッチンにもアリが‥
冷蔵庫に入って行っている‥
そうか、この暑さで一気に中の温度が上がってしまったか。それにしてもアリが冷蔵庫に入れるとは‥
開くと大量のアリがメープルシロップに。そしてさらなる獲物を開拓しようとしている。

虫が本当に苦手な私には、今回これが一番堪えた。
まだほんのり涼しい庫内から全部出して駆除、掃除。
長期戦の前に大事な冷蔵庫がダメになった。


お風呂とトイレ問題

幸い毎年買い足しては期限の切れた水を保管してあったので、古いペットボトルの水をお風呂用にした。
ひとり1回2リットル。
ドライヤーが使えないので、私は夜は1リットルで身体を洗い、朝1リットルで頭を洗った。
片手鍋で300mlくらいの熱湯を沸かし、洗面器で水で薄めて少しずつ使えばわりと十分に洗えた。
シャワーほどの快適さはないが、この時はこれで十分。
体を清潔に保てるということが、精神的にも大きかったと思う。

トイレは井戸水を利用した。
衛生面ではかなり問題ある水だというがトイレを流す分には十分。
この井戸水は役場で無制限にもらえるらしい。
役場に取りに行ける健康で車のある人であれば。


暑さ問題

これは深刻な問題。
私たちにはまだ車という逃げ場があった。
暑さに弱い犬はなるべく車に逃がし、猫は屋内とデッキで風通しの良い環境を作り、ストレスにならないよう数時間ごとに遊びに行く。

それでも暑い。
特に最初の二日間は暑過ぎた。

体調の悪い人や身寄りのないお年寄りなんてどうしているのだろう。
十分対策していた私も、頭がガンガンして吐き気がしていた。


食事

これは家の備蓄状況によって随分違ったと思う。
うちは冷蔵庫はダメになったが、その冷凍庫はまだ冷蔵庫くらいには冷えていたし、普段から料理や冷凍保存が好きな私は専用フリーザーを持っていて、その霜取りをサボっていたのが幸いし、霜の保冷効果によって猛暑の3日目でもチルド室程度の冷たさを保っていた。
あとは常温野菜なども十分あったので、備蓄の缶詰に手を出さなくても普通に料理ができた。
米は研がなくてもオリーブオイルで炒めて、溶けてしまったシーフードミックスを使ってパエリアにしたり。

そしてどこも、冷凍庫の中が豊富だった家庭は腐る前に急いで食べなきゃいけないということになり、逆にいつもより食事が豪華になる現象も。
もうこうなったらおうちキャンプだよ、いやもっと豪華なグランピングだよと極力楽しく過ごした。

一方、買い置きのなかった家はどこの店にも品がないと困っていたらしい。
後にツイッター等でそういう情報を知るが、この手のことは知人じゃないと助け合いしづらい問題だなと思った。
実際近所の子供が小さい家にはマドレーヌ等を配ったけれど、さほど仲良いわけでもないのに残りものみたいな料理をもらっても嫌だろうしなぁ、、という。
食事に関してはどこもまだ2、3日は自助努力でなんとかなっていたと思いたい。
ただ、病気の人とかお年寄りとかほんとどうなってたんだろうとは思う。


あれ?高速が空いている。

翌日長期戦に備えて、夫の友人に発電機を借りに行くことに。
たまたま前日にガソリンを満タンにしてあったので、すぐに出発することができた。

どこも高速は通行止めか大渋滞かと思って通ったアクアライン、かなり空いていてスイスイと横浜に来てしまった。
アクアラインのこっち側は街も生活も拍子抜けするほどいつも通り。
さっきまで倒れた木や倒壊した家、崩れた屋根を見ながら走ってきたのに。
ここでやっとネットチェックすると、どこも物流がストップして物資がないという。
ちなみに帰り道も空いていてスイスイだったし、翌日は東関道も東金道路もいつも通りだったという。


街は電気で出来ている

長引く停電でわかったのは、何もかもが電気で動いていたということ。
もちろん信号も止まり、上下水道共に止まり、ゴミ処理場も止まり、電話やネットも止まった。
ほとんどの店や施設は機能しない。
外房線も止まったどころか駅の屋根も崩れていた。

ゴミ問題も深刻。
ゴミ処理場は山にあるので倒木の影響なのか、なかなか復旧しない。うちは幸い停電断水共に3日間で復旧したので、その後は生ゴミは袋に入れて冷凍しているが、まだ停電の地域は本当に大変だと思う。
停電後数時間で冷蔵庫にアリが湧いたくらいだから‥


ヒーロー現る

今回うちは夫の友人たちに発電機を借りた。
突然の連絡にもかかわらず、都内の会社から抜けて、発電機とガソリンの他、水や氷やキンキンに冷やしたビールまで差し入れてくれた。
猛暑の中の作業、夜に飲んだこのビールの美味しかったことと言ったら‥♪

そして極力ゴミの出ない配慮のある粋な差入れ。
彼が自身の会社を成功させて、趣味も結果を出すタイプだというが、才能の他に配慮と努力と思いやりと行動力と、、もう様々な要素が見えて納得した。

私のクリエイター仲間からも、依頼していた商材が届いたと思ったら、一緒にたくさんの水と塩分チャージが。
とても忙しい人なのに、この支援物資を早く届けられるよう、依頼品も本来の予定より少し早く手配してくれたのかな。
もし必要なくてもあって困らないもの、人にも配れるような。そして本当に必要な時は命を助けてくれるもの。そう考えてくれたのだろう。
とても優しい人だと思う。

その他も、何か届けるよとか、家においでとか、たくさんの優しい連絡をもらった。

ありがたい。
本当にありがたいことだと思う。
彼らにこの世の良いことがたくさん降り注ぐようにと願わずにはいられない。


用意しておけば良かったもの

・発電機
・性能の良いクーラーボックス
・電池式ラジオ

発電機は最初からあるに越したことはない。結果うちの冷蔵庫もフリーザーも容量の関係で借りた発電機では通電しなかったのだけど、夜にダイニングのライトと扇風機をつけられただけで随分と違った。
あれば安心感にも繋がるから、発電機とガソリンはあった方がいい。

性能の良いクーラーボックスも必要。
長期戦なら冷凍庫は開けず、クーラーボックスに必要なものを移して使うほうがいい。
うちのクーラーボックスは古くて保冷効果も全然ダメ。前日にコストコで最新のクーラーボックス見たときにあーだこーだ言わずに買っとけば良かった。
今回は2日目に東京の夫の友人が発泡スチロールいっぱいの氷を用意してくれて助かった。
これをさらにバスタオルで巻いて3日間持った。
でもここはあまり楽観視せず、停電とわかった時点でクーラーボックスと氷の準備をしておけば良かったと思う。

ラジオは情報がない中でかけっぱなしにしておけるならいいかと。
車でテレビを確認しても見た時は内閣改造しかやってなかったし、常に張り付いている訳にもいかないので。


あって良かったもの

・水
・紙皿、紙コップ
・ラップ
・ビニール袋(ジップロックやレジ袋)
・キッチンペーパー
・ウェットティッシュ
・水用タンク
・常温野菜、果物
・食品備蓄
・犬猫用フード備蓄
・車、ガソリン
・容量の大きい充電器
・カセットコンロ、ガス
・フリーザー

これらはあって本当に良かった。
全部使わないにしろ安心感が違う。


自粛しないで、心痛めないで。

SNSでは、何もできなくてごめんねというコメントもあった。

気持ちはわかる。
私だって多くの地域が被災していた時は何も出来ず、ただ心痛めたひとりだ。

どう声かけていいかわからない、何もできなくて申し訳ない、何か今楽しむのが不謹慎な気がして気が引ける。
このようなことは本当に一切考えないでほしい。

当事者は情報が欲しいのでどうしても被災状況のツイートばかりしてしまうけれど、今無事な地域の人は楽しいことは存分に楽しんで、嬉しいことは存分に喜んで、めでたいことは存分にお祝いして欲しい。

いや、被災している側だってそう。
辛い状況を楽しんで過ごしたっていいし、ふざけて笑いながら乗り切ったっていい。
危険な状況の程度の差があるから一概には言えないけれど、ある程度の状況ならそれは人それぞれ自由だと思う。
どう頑張っても状況を変えられない時は、捉え方次第で自分の物語だけ変えるという手もある。

だから、全然ごめんねと思わないで欲しいし、気にかけてくれてありがとうと思うし、楽しい発信もふざけた発信も、大事な情報を邪魔してるわけじゃないなら全く問題ないと思うし、むしろ癒し。

だけど、どんなにミニマルな暮らしが流行ったとしても、日頃の備蓄だけはお勧めする。
本当に。

そして今日で台風から6日目。

まだ復旧していない地域もたくさんある。
被害の大きい地域もある。
早く救いがありますように‥


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