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初めての韓国映画『パラサイト 半地下の家族』


カンヌ国際映画祭のパルム・ドールやアカデミー賞を受賞したことでも話題の『パラサイト 半地下の家族』

絶対観に行かなくちゃ、と思って今週観てきた。以下、ネタバレを含むので、これから観る予定でネタバレを防ぎたい人は読まないほうが良いかもしれない。


▼あらすじ
家族全員が失業中のキム一家。事業に失敗した父ギテク、母チュンスク、そして大学受験に失敗して4浪中の兄ギウと美大を目指す妹ギジョンの4人は、「半地下」と呼ばれるアパートでその日暮らしの日々を送る。

ギウは、ひょんなことからIT企業のCEOであるパク社長の家へ家庭教師の面接を受けに行くことに。知恵をめぐらせ、兄に続き妹ギジョン、そして父母もパク社長の豪邸に入り込むことに成功し、社長の家を「就職先」として生活するようになる。この相反する2つの家族の出会いが、物語を思いもよらぬ方向へと導いていく…


騙されやすい富裕家庭と頭のキレる貧困家庭

わたしが一番疑問に思ったことは、「騙されやすい富裕家庭」と「頭のキレる貧困家庭」という構図になっていたということ。パク社長の奥さんは、いわゆる「トロフィーワイフ」で身の回りのことは全部家政婦や家庭教師にやらせているし、とても人が良くてすぐに言われたことを信じてしまう。裕福な環境で育ったからこその純粋さなのかもしれない。

対して、失業中のキム一家は、それぞれの個人スキルが高いばかりか家族としてのチームワークにも優れている。大学受験に4回も失敗している兄も、家庭教師として信頼されるほどの学力を持っているし、妹に至っては画像処理ソフトを使いこなし文書偽造ができるほどのスキルの持ち主だ。

こんなにもハイスキルで機転の効く家族が、どうしてこんな半地下で他人の家のwi-fiを盗んだり、ピザの箱をひたすら折るような内職をしなければ生活できないのだろう?と不思議に思った。

韓国の社会情勢について全くの無知識だったのでいくつか記事を読んでみたところ、ざっくり知っていた状況を遥かに上回る「超学歴社会」であることが分かってきた。育った環境による格差が凄まじく、一度その階層にとどまってしまったらそこから抜け出すことは容易ではないのだなと思わされた。


この記事によると、日本のセンター試験に当たる「修能試験」で入学するのは全体の30パーセント程度でしかないそうだ。それ以外の70パーセントは、資格や内申点などの包括的な評価によって入学する仕組みらしい。だからギウは4度も大学受験に失敗しているのだな…

研究やボランティア体験などの経験を加味した入学試験が行われていると聞いて、即座に「JAPAN e-Portfolio」が頭をよぎった。上の記事でもあるように、この評価されるための様々な「体験」をお金で買うために、さらなる機会格差が生まれそう。

2020年度入試から活用されるらしいJAPAN e-Portfolioは「高校生活の活動をポートフォリオにする」仕組みで、大学入試では「主体性」を評価するために使われる。一概には言えないが、このJAPAN e-Portfolioの導入によって、貧困層と富裕層のさらなる分断が進んでしまうのではないかと危惧している。



「半地下」独特の"臭い"

日本ではほとんど耳にすることのない「半地下」という文化。韓国では「どのような家に住んでいるか」が「その人がどんな人か」のイメージを決めてしまう文化が根強いそうだ。

この作品では「臭い」について時々言及される。金持ちパク家の息子が、パラサイトしているキム家4人が同じ匂いをしていると気づく場面もある。
どうやっても誤魔化しきれない"臭い"があるのだと思った。地下特有の、生活に染みついて離れない独特の臭いが。

ラストシーンに、父ギテクが刺してしまう場面がある。最後席を立った時、隣の女の子が「臭いって言われたから刺したんだよ」って言っていたけれど、それは違うと思う。どうしようもない分断が雇用主と被雇用者の間にはあって、その環境から抜け出せない悲しみとか怒りとかそういうものが一気に溢れたんじゃないかな。



勤務校で「パラサイト観て!!」って生徒たちに言っていたら、アフリカ系とのダブル(ミックス?ハーフ?適切な呼び方がわからないのだけど)の生徒に「アジア(韓国)の映画なのにアカデミー賞なんてすごいね」と言われてしまい、齢16でこんな風に言ってしまう彼の生育環境はどのようなものなのだろうと気になったりした。


他にも色々言及して書きたいことはあるのだけれど、今日はこのへんで。これだけ韓国文化が入ってきているというのに、K-POPも韓国ドラマもスルーしてきたわたしにとって、初めての韓国映画はとても刺激が強かった。もっと色々観てみたいな。『お嬢さん』とか。

観たひとは感想聞かせてください♩

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