コールセンターの処理効率について①

オペレーターのKPIに関わる内容を書いてみます。

処理効率のKPIに”CPH(Call Per Hour:1時間あたりのコール対応数)”というものがあります。これは「1時間あたりに何件の対応ができるのか」をあらわすものです。

主に①対応可能数(=キャパシティ)を計算する、②オペレーターの評価制度に組み込む、という用途で使います。CPHは、予算を作成する場合や、テレマ会社では見積りを作成する場合にキーとなるKPIです。

【CPHの計算方法】

CPHの算出には”AHT(Average Handle Time:平均処理時間)”を使います。これは1件あたりの平均処理時間をあらわします。

【計算式】
CPH = 1時間 ÷ AHT
AHT = 平均通話時間(ATT) + 平均後処理時間(ACW) + 平均保留時間  + 平均呼出し時間

例えば、AHT(平均処理時間)が「6分」の場合、CPHは下記となります。

CPH = 1時間 ÷ 6分(/件) = 10件(/時間)

これは”理論値”として、1時間あたりに10件の対応ができるとみなします。実際は、電話の着信数が常に一定ではなく、電話を待っている時間(アイドルタイム、受付可能時間)や休憩時間があるため、1時間あたりの対応件数は10件よりも少ない6~8件になります。CPHに、稼働率や離席率を乗じることで、理論値をより現実に近い数値に近づけて予算を組んだりします。

【CPHの特徴】

CPHに限らずですが、コールセンターのKPIはほとんどの場合が、高ければいい(または、低ければいい)というものではありません。あくまでも、設定した目標値や標準値に近づけることが大事であるという事を覚えておいてほしいです。

では、まずCPHの特徴についてです。

CPHは、AHT(平均処理時間)と「負の相関関係」にあります。

つまり、AHTが長くなるほどCPHは小さい数値となり、AHTが短くなるほどCPHは大きい数値となります。

そのため、CPHを改善する(=大きくする)には、AHTを短くすればいいのです。もう一度、書きますが、AHTは「①AHT(平均処理時間)」、「②ACW(平均後処理時間)」、「③平均保留時間」、「④平均呼出し時間」という4項目の合計でした。

AHT = ①平均通話時間(ATT) + ②平均後処理時間(ACW) + ③平均保留時間  + ④平均呼出し時間

この4項目それぞれについて、改善の考え方は異なります。CPHを改善する(大きくする)ためには「②ACW(平均後処理時間)」「③平均保留時間」の2項目の改善が重要です。

ATT(平均通話時間)の改善は、場合によってはCPHを下げることもありえます。そのことについて書きます。

【①ATT(平均通話時間)】

私は通話時間には、あまり優先的にメスをいれません。後処理時間や保留時間の方が重要です。通話時間は長くても、異常値でなければ、それほど気にしないです。理由は、お客様とのお話する時間が長いか短いかよりも、お客様にあわせた言葉選びやスピード感で、しっかりとご理解いただけているか、満足いただく対応ができているかの方が、比重が高いためです。

生産性を高めたいという理由だけで、お客様とのお話を早めに切り上げようと考えたり、早口にすれば生産性があがる、などというのは本末転倒であり、取るべき手段ではありません。しかし、オペレーターには、そのように説明をしても、評価制度が通話時間を反映させたものであれば、短くすることの動機づけになってしまいます。

では、評価制度に通話時間は入れない方がいいかというと、それも違うと思います。通話時間も含めたAHTで測定して、評価したほうがいいです。

通話時間は、お客様要因で変動しやすいものではありますが、オペレーターは毎日、毎月、多くの電話対応を行います。1日あたり数十件、1月あたりでは千件を超える件数の対応をします。そのため、大数の法則がはたらき、何件か通話時間が長い対応があったところで、平均でみるとオペレーター個々の能力に応じた数値になります。

通話時間は、特定のオペレーターが極端に長い場合と、短い場合があります。長い場合は、モニタリングするとまわりくどい説明や、しなくてもいい説明をしていたり、うまくお客様のニーズを聞き出せずに時間を要しているという場合があります。これらのケースは、お客様の満足度も低くなる要因になるので改善が必要です。方法として、他のオペレーターの通話をモニタリングさせてあげると、気づきがあって改善につながることが多いです。

通話時間が極端に短い場合、これは危険な対応をしている可能性があるので、優先的にモニタリングしましょう。異常に早口になっているか、案内を省いている可能性があります。

【④平均呼出し時間】

平均呼出し時間は、生産性を測定する目的においては、それほど気にしなくてもいいです。AHTの測定に含めなくても構いません。理由は、呼出し時間は1~3秒程度だからです。AHTに含めても誤差の範囲です。

では、まったく無視してていいかというと、そうではなく、たまにはチェックして欲しいです。

【平均呼出し時間】
・1秒  :十分に早い
・2~3秒:標準的
・4秒  :要チェック
・5秒以上:要改善

呼出し時間は、オペレーターの電話が鳴ってから、応答するまでの時間です。標準的な数値は2~3秒です。1秒の場合もありますが、これは待ち呼がついていて、受付可能にしたらすぐに鳴るという状況が続いているときになるくらいで、それ以外では意識しないと出ない数値かと思います。

4秒だと、ちょっと遅い印象です。なぜ時間がかかっているかウォッチしてみてください。5秒以上は放棄呼につながる可能性があるくらい遅いです。お客様もコールが鳴っているのに、すぐに出ないことに違和感を覚えるかもしれません。この場合は、おそらくヘッドセットを外して待機していたり、鳴ったらすぐに出るという意識がないので、早く出る必要性を説明して理解させてあげてください。

今回はここまでにします。続きは第2回で「後処理時間」「保留時間」について書きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?