コールセンターは今後どうなるか

私はコールセンター歴20年という経歴があります。実は、事業会社でサービス企画部に3年ほどいた経験もありますが、やはり私のキャリアは”コールセンターの人”と転職市場で見ていただくことが多いです。

私は、現代の会社制度を前提にすると、定年まであと20~30年あります。はたして20~30年のあいだ、コールセンターというキャリアを軸にしていて、仕事を続けることができるのだろうかとたまに不安になるものです。

私の今後のキャリアプランをたてるためにも、コールセンターがこれからどうなっていくのかを推測しなければなりません。私なりにちょっと考えてみました。

ちなみに、ここ数年の環境変化のスピードはすさまじく、30年後はさすがに想像がつかないので、20年後までを考える事とします。※20年後も十分にあやしいですが。

【まずは20年前を振り返り】

20年後を考えるために、まずは20年前から今年まで、どのように変化してきたかを振り返ってみようと思います。

まず20年前ですが、西暦2000年です。この頃は、どういう時代だったかというと、連絡手段はようやく携帯電話が普及しはじめたころで、まだスマホなんてありませんでした。携帯電話の番号も、いまと違って10桁の番号だった頃です。Eメールを携帯電話で使うようになったのも、ちょうどその頃で、それまでは同一の通信キャリアの間でしかテキスト情報(SMS)の送受信はできませんでした。なお、テキストは半角カタカナのみでした。

各世帯に固定電話があることが当たり前でした。当時、私の親の世代(現在60~80代)は、まだ携帯電話は持っていなかったと思います。テレマ業界では、”マイライン特需”と呼ばれる、マイライン加入促進のアウトバウンドが大流行したころです。

おそらく30代前半くらいの人は、マイラインを知らないと思います。マイラインとは固定電話のサービスで、事前に電話会社を登録しておくことで、その電話会社経由で電話をかけられるというものです。ちなみに登録はハガキだったような記憶があります。

そしてこの頃、個人情報保護法が施行されて”個人情報”という概念が一般化してきました。

インターネットも、その5年前である1995年にWindows95が発売されて、普及しはじめた頃です。ネット回線はダイヤルアップ接続で、従量課金制でしたし、なによりスピードも桁違いに遅かったです。

このような環境だったころが、およそ20年前です。ドッグイヤーと呼ばれITの成長速度が加速的に早くなっているのに、今から20年後、同じ時間が経過するとどうなっているのか。

当時、誰が20年後の今を予想できたかというと、そんな人いるのでしょうか。いるのかもしれないですが、おそらく99%以上の人が予想していなかった未来を生きていると思います。

【10年前を振り返り】

約12年前ですが、ソフトバンクがiPhoneの取り扱いを開始したころで、ようやくスマホが普及しはじめた頃です。

その3年ほど後にLINEが普及して、メールではないコミュニケーションの便利さに気づきます。当時、チャットはPCでやるものというイメージはあったので、LINEは画期的だった記憶があります。

企業ホームページで、チャットボットが出始めたのは、本当に早くから取り組んでいた企業で10年くらい前かもしれません。頻繁に見るようになったのは5年くらい前だと認識しています。

RPAの導入例をみても、事例として紹介されている企業でだいたい5年前くらいからではないでしょうか。

【今後、電話はなくなるのか】

まず20年後ですが、スマホネイティブで電話をする習慣がない20歳の人は40歳になっています。10歳の子供は30歳です。電話を使うことがそれほど珍しくない世代である30歳は50歳に、40歳は60歳になっています。

単純に考えて、電話を使わない世代が30~40歳になるのですから、コールセンターの電話という機能は縮小します。主流なコミュニケーションであるテキスト、チャットにシェアを明け渡すことになります。

私は40代ですが、プライベートで直近1カ月の電話履歴を見ると、発信履歴は実家の母親に電話をした1件だけでした。妻や子供、友人との連絡はLINEでしています。本当に電話しなくなりました。

では、電話がなくなるのかというと、大幅に縮小はするものの、無くなることはないと思います。いまだにFAXやハガキが残っているんだから、変化できない組織では残存するよ、という意味ではありません。電話は有効性があるので残ると考えます。

それは「緊急性」「複雑性」のある問い合わせに強みがあるチャネルだからです。急いでいてテキスト入力している時間がない場合、例えば、救急車の呼出しや、サービスで障害が発生している場合などは、テキストよりも電話による音声コミュニケーションが優位です。また、状況が複雑でテキストで伝えることが難しい場合にも、電話によるコミュニケーションが優位です。

このように、利用シーンに応じたチャネルの使い分けは進んでいき、電話よりもチャットボットやFAQシステムでの解決が主流になることは疑うことはありませんが、電話がFAXやハガキのように隅に追いやられるチャネルになるかというと、そうはならないと考えます。

また、電話がなくならないもう一つの理由が、高齢による老化です。スマホ慣れしているとはいえ、年を重ねれば文字を読むことが少しづつ難しくなりますし、テキスト入力することも面倒くさくなります。そうなると、電話の方がいいという行動にもつながるので、高齢者にとっては電話が便利なチャネルということになるでしょう。

【人はAIやロボットに仕事を奪われるのか】

これもよく言われますが、単純なご案内や受付は人からロボットに置き換わるでしょう。いまでも人が入力していた作業の自動化や、チャットボットの普及で自動応答してくれるサービスが珍しくなくなってきました。

では、人はいらなくなるのか、これも答えは否です。私はこの分野の専門家ではありませんし、興味がある程度の知識しかないので、あたりまえのことしか書けません。人は、チャットボットやRPAのマネジメントやオペレーションをデザインする企画職やマネジメント職に仕事がスライドします。全員があてはまるわけではないですが、単純なオペレーターの価値は相当限られてしまいます。

これは従来のコールセンターで求められてきたスキルセットとは異なります。「長年コールセンターで電話対応していたベテランです」という人が、今後のコールセンターでそのまま生き残れるのかというと、それは難しいでしょう。経験を資産化してきた人、スキルを積み上げてきた人にとっては、むしろチャンスかもしれませんが、ただ毎日のその日の業務をこなしてきただけの人は、かなり厳しい状況にはなると思います。イス取りゲームの座れるイスの数がかなり少ない状況、しかも座ったことがないイスです。

そういう点では、人は仕事を奪われる、という表現もあてはまってしまうかもしれません。

以上です。ここまでで書いたような電話がなくならない理由に対して、私が予想していないような技術革新やソリューションが生まれて、電話がなくなる、という可能性も十分にありますね。

もしかしたら、やっぱり人の声って温かみがあっていいよね、と電話の需要が増えるなんてもこともあるかもしれません。

なお、コールセンターのあり方も、いつか変わるだろうと考えていましたが、その時間軸が、コロナの影響で急激な変化になったと思います。絶対にこうなるという確実な未来はありませんが、どうなってもニーズがあるビジネスマンでいられるようにいたいものです。

次回以降で、このような将来を予想したうえで、コールセンター職の人がどのようなキャリアプランを描くのがいいのかも書いてみたいと思います。

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