コールセンターの処理効率について②

前回「コールセンターの処理効率について①」で、CPHについて説明をして、AHTの4つの構成要素のうち、「通話時間」と「呼び出し時間」について書きました。

今回は、残り2つの構成要素である「後処理時間(ACW)」と「保留時間」について書きます。

通話時間と呼び出し時間は、異常値でなければそれほど気にしなくてもいい項目だと思っています。対して、後処理時間と保留時間は、内的要因で改善する幅が大きい項目であるため、優先的に改善に着手しましょう。

後処理時間(ACW)の改善

後処理時間は、お客様との通話が終わってから、事務作業を行ったり、対応履歴を入力したり、必要な帳票を起票したりする時間です。短縮できればできるほど、生産性が高まります。

後処理時間の改善方法は、オペレーターによる改善とセンターとしての改善があります。

オペレーターによる改善

オペレーターが処理をする際に、①情報(マニュアルやFAQ)にアクセスする、②情報の内容を理解する、③情報を参照する、④処理をする、という4ステップがあると思います。

この4ステップのうち、どのオペレーターは、どのステップに課題があるのかを見極めます。

≪後処理の4ステップ≫
①情報(マニュアルやFAQ)にアクセスする
②情報の内容を理解する
③情報を参照する
④処理をする

ベテランになるほど、①~③は不要になっていきます。

「①情報にアクセスする」は、マニュアルを探すことに慣れていないため、発生する時間です。マニュアルのどこに記載されているのか、経験に比例して自然と短縮されていくものですが、インデックスを活用したり、ベテランがどのようにまとめているのか見本をみせてあげると短縮スピードがより速まるかと思います。

「②情報の内容を理解する」も新人特有かもしれません。情報にすぐアクセスできても、内容を理解することに時間がかかってしまっては、時間短縮はできません。新人オペレーターで、このステップに時間がかかっているようであれば、業務知識が不安定なので、お客様へのご案内にも不安があります。実践で覚えてもらうのか、研修トレーニングを個別にでも行うのか判断しましょう。

「③情報を参照する」は、すべてを丸暗記できることはないので、ベテランであっても一覧表などを参照しながら、処理をすることがあります。思い込みによるミスを無くすために、ベテランでも必ず資料を見ながら処理することをルールとしている場合もあるかもしれません。これも基本的には経験とともに短縮していくはずです。

「④処理をする」ですが、これはタイピングや画面遷移のスピードが影響します。よくある工夫としては、用語を辞書登録しておくことです。コピペや辞書登録による変換によって、時間短縮することができます。その他にも処理内容によって、工夫はいくらでもできると思います。

センターとしての改善

オペレーター個々で改善できるのは、既存運用の範囲でしかありません。そこには限界があります。

センターとしては、定期的に運用の見直しを行って、そもそも必要ではない処理がないか確認をする必要があります。その際には「ECRSの原則」というフレームワークにそって考えます。

※これは有名なので、ググると出てきます。

≪ECRSの原則≫
・Eliminate(排除)
・Combine(結合)
・Rearrange(入替)
・Simplify(簡素化)

これは改善フレームワークで、この順番で改善すると、より効果が高い順番であると言われています。

例えば、応対履歴に入力していた項目を「Eliminate(排除)」する、つまり「入力しなくてもよくする」と、もっとも改善効果(時間短縮の効果)が高いということです。

私はいろいろなコールセンターで運用の見直しをしてきましたが、すごい時間をかけて入力している項目が、後工程の部門の運用が変わって、すでにいらない内容になっていたというケースをみたことがあります。これは極端な例ですが、本当にコレいるの?という目線でみると意外と削れることがあることに気がつくと思います。

保留時間の改善

保留時間は、お客様と電話がつながっている時にお待たせする時間です。これは生産性の観点だけでなく、お客様満足のためにも改善が必要です。

保留時間は、なぜ保留しているのか理由によって、改善アプローチは異なります。

≪主な保留理由≫
①知識不足
②運用や回答が定まっていない
③権限不足
④運用によるもの

「①知識不足」はオペレータースキルに起因します。ベテランであれば保留せずに回答できることが、新人であれば保留をする、ということは日常風景です。研修や資料準備など、知識拡充のためのアプローチを取ります。

それ以外(②~④)は、基本的にセンターとしての運用の問題です。

想定していない問い合わせがあった場合など、運用や回答が決まっていければ当然にオペレーターは保留をして質問に来てくれます。オペレーターの自助努力で改善することはないので、センターとして運用を想定して決めるアプローチをします。

また、ありがちなのが「③権限不足」による保留です。オペレーターとしては、どう答えるのか知っていても権限がなく、その都度、保留してSVに確認する運用になっている場合があります。これは、センターとしての努力不足だと思います。どうすれば権限移譲できるのか、「できない」という固定観念を取っ払って検討してみましょう。

「④運用によるもの」、これは対応中にシステム入力することがルールになっている場合で、かつ、時間を要する場合に発生します。例えば「住所変更」をするために、保留をしてシステムに住所登録する場合などです。住所変更くらいであれば、お客様と話しながら入力できるケースが多いですが、金融業界では、金額計算を別人とダブルチェックで行うために保留にする、ということもあります。

保留で待ってもらうのか、折り返し対応とさせてもらうのか、これは内容によって、お客様にとってどちらが良いのかを検証してください。選んでもらって、「保留で待ちます」と言ってもらっても、結局は想定以上に待たせすぎてしまってお叱りを受けるという事もあります。模索しましょう。

以上が、後処理時間と保留時間の改善アプローチです。

処理効率の改善は、無理のない範囲でやりましょう

生産性を追求するあまり、オペレーターに過度なプレッシャーがかからないようにマネジメントしてください。これは、正確性やモチベーションに影響します。

処理効率の改善は、新人さんほど対策がしやすく、効果も得られやすいので、つい求めてしまうものです。ですが、新人さんが最初に身に着けるべきは、処理効率ではなく正確性です。急いで処理した結果、雑になったり、案内不足があっては本末転倒です。

処理効率と正確性は、必ずしも反比例するものではないですが、実際に焦ったことが原因でミスをしてしまうというのは、よく起きていることです。正確性が担保されるうえでの、処理効率の改善であるべきと思います。

そして、くれぐれもプレッシャーをかけすぎて、ネガティブな影響がないようにしてください。

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