見出し画像

「オペレーターの10分休憩」を考える

コールセンターでマネジメントをしています。今回はコールセンターのオペレーターの休憩時間について書きます。

オペレーターの休憩時間は各センターによって様々ですが、7~8時間労働の場合、よくあるパターンは「昼休み60分(無給)+10分休憩(有給)2回」だと思います。10分休憩とは、その名の通り10分間の小休憩です。これを午前と午後に1回づつ取ります。※15分の場合もあります。

勤務時間が4時間などの短時間勤務の場合は、昼休み60分休憩がなく、10~15分の休憩が1回というパターンが多いです。短時間勤務であれば、これでも問題ないと思うのですが、1日フルタイムで働く場合に、昼休みの他に10分休憩2回というのはツラくないでしょうか。

オペレーター業務の大変さ

私はコールセンター経験20年ですが、電話オペレーターだけの経験はなく、マネージャーやスーパーバイザーとして業務習得のために、一時的に電話オペレーターを行うという経験をしたことがある程度です。

1日中、電話対応をするというのは、とても疲れます。

マネージャーやスーパーバイザーが、呼量のピーク時などに、たまに電話対応をして、今の対応は丁寧で良い対応だっただろうとドヤった態度をしていることがありますが、それは一過性の対応だからできることだと思います。陸上競技で例えると短距離走なので、全力疾走できて当たり前です。

対して、オペレーターは毎日、何十件もずっと電話対応をしています。1件対応しては、すぐ次の対応が待っている、短距離走ではなくマラソンです。これは本当にすごいことだと尊敬します。オペレーター業務の大変さの神髄は「毎日続く」にあると思います。

電話を切った後に、後処理を集中して終わらせ、すぐ次の電話に出る・・・、自分のペースで仕事をすることが難しい職種です。

10分休憩はなんのためにあるのか

昼休み60分休憩は、労働基準法で定められています。

労働基準法 第34条(休憩)  
1.使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
2.前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
3.使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

対して、10分休憩は法律で定められていないので、必ずしも与えなくても構わないものです。ですが、ほとんどのコールセンターで設定されています。これは単純に集中力が続かない、御手洗いに行く時間も必要、という理由からだと思います。

1件1件の対応に集中しなければならない、ミスが許されないなかで、生産性も高めていかなければならないというプレッシャーのもと、仕事をしています。集中力は品質、生産性の観点から重要です。

なお、オペレーターは、基本的に10分休憩以外の時間は席をたってはいけないことになっています。営業部やマーケティング部、エンジニア職のように自身の裁量でコンビニに行ったり、喫煙に行ったりということが許されていません。オペレーターは電話の呼量に応じて、人員配置を計算されているので、各自が自由なタイミングで離席をしてしまうと電話が取れなくなってしまうからです。

10分休憩は3回でもいいのではないか

集中力が続く時間はどれくらい(何分)でしょうか。

小学校の授業は45分、大学の授業は90分です。私は学校の授業でも一方的に先生が話しているだけであれば、集中は45分が限界だったと思います。大学の授業のように参加型のものであれば90分でも飽きずにいられた気がします。そう考えると、だいたい90分続いたら休憩を取りたいところです。

(例)オペレーター休憩時間
 09:00 業務開始
 10:30 10分休憩①
 12:00 60分休憩
 15:00 10分休憩②
 18:00 業務終了

午後は120分~150分間が、連続して業務に就く時間になります。

このように考えると休憩時間がアンバランスですし、そもそも足りていないように思えます。午後も90分インターバルで働くためには、10分休憩をもう1回追加すると、ちょうどよくバランスが取れます。

ですが、マネジメントの立場で、コスト管理と生産性の観点から、1日に10分休憩が増えることは無条件に了承できるものではないかもしれません。

コスト計算すると、時給2,100円×10分×30人×30日=315,000円/月です。年間では378万円になります(※毎日、時給2,100円の30人が出勤している場合)。ちなみに、これは追加コストではなく埋没コストです。10分休憩は有給であることを前提とすると、10分休憩を追加で与えても、与えなくても発生するコストは変わりません。

生産性で考えると、10分×30人×30日×10件/時間=1,500件/月となります(※1時間あたり10件対応できる30人が毎日10分休憩した場合)。これは月間1,500件分の電話対応が減ることになります。この減少する対応件数を追加採用で補うとすると、そのコストは追加コストとなります。

このように計算すると、コールセンターではオペレーターのちょっとした積み重ねが、月間や年間で塵が積もって大きな数値になっているということが分かります。

話を戻して、10分休憩の回数ですが、私は3回がいいと思います。それは、オペレーターの疲労が集中に影響を与えるからというのが主な理由ですが、それとは別に、おそらく10分休憩以外に、非公式な休憩時間が発生しているであろうからです。御手洗いなどで離席するということは、実際に起きていると思います。

どっちみち10分くらいは今でも追加で離席しているのであれば、正式に時間を設定してタイミングをコントロールできたほうがいいですし、インターバルを効率の観点から90分ごとに設定するほうが、全体の品質や生産性も高まると思うからです。

以上です。オペレーターに「毎日、大変じゃないですか?」と聞くと、「慣れたので、そうでもないですよ」と言ってもらえることが多いです。コツコツと継続できる人はすごいなあと心より尊敬します。

今回は「品質や生産性が~」という理由で書きましたが、本音はオペレーターの労働環境をよくしてあげたいという思いもあります。仕事とはいえ、ずっと座りっぱなしで、休憩時間も上司(スーパーバイザー)に決められて・・、少しでも自由度が上がればと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?