ドラゴン桜2021の桜木建二の教えの問題点と解決方法

ドラゴン桜の第3話で、バカは頭のいい人達から搾取される、馬車馬から人間になりたかったら勉強しろ、というような桜木建二の演説があります。

これは一見正しいように見えます。官僚や政治家、企業のトップなどの支配層が悪者で、バカな一般人を騙して、一般人が苦労して稼いだお金を吸い上げて、自分たちだけがおいしい思いをしている、という考え方です。

この考え方はある意味正しいです。官僚は自分たちが天下るために、不要な特殊法人を自分で作っています。というのも、法律を作るのは官僚ですから。国会が立法機関ですが、現実は90%以上の法律は官僚が作っています。

ですから、特殊法人を設置する法律も自分たちで作って、自分で税金から給料をもらって天下ったり、渡り(特殊法人や企業を数年ごとに渡り歩いて、その都度高額の退職金をもらうこと)をすることができます。

さらに、たちの悪いことに、そうした特殊法人の理事長は、大企業の元役員などが務めます。すると、トップが民間ですから、一見官僚の天下り先、とは見えません。しかし、実質は、官僚が天下るために、民間から理事長についてもらっているだけです。

さらに、財務省は、税金を上げると出世できる仕組みです。日本は、国債は日本国民が持っていますから、いくら国債という借金が増えても、日本が破綻することはありません。

それなのに、日本が破綻する、と嘘を言って、税金を上げた官僚が出世するのです。それは、財務官僚が自分たちの権限を強めるためです。省あって国無し、つまり、省益が全てに優先し、国民の利益などずっと下の方にあるのです。

こうした頭のいい人達に騙されて、一生懸命働いても給料もあまり増えず、40年間公務員や企業で働いても、一般社員は報われません。その原因は、日本のトップの政治家や官僚が一般国民から搾取している面があることは否めません。

そういう社会の構図を知ることは大切です。しかし、桜木建二の上の演説は、その支配者層が悪、という印象を持たせます。官僚は悪、政治家は悪、国民から搾取するヤツらは悪、という価値観になってしまいます。

そういう価値観を持つ生徒が東大に入ったらどうなるでしょう?

官僚になったら?政治家になったら?彼らは何をしようとするでしょう?

官僚機構を、国民のために変えよう、とするでしょう。しかし、その努力もむなしく、左遷されたり、退職に追い込まれると思います。なんてったって、天才、秀才揃いの官僚が、自分たちの利権を崩そうとする新人の意見を聞くわけがありませんから。あらゆる知恵を使って、正しいことをしようとする人達を潰しにかかるでしょう。自殺に追い込まれるかも知れません。

学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さん=当時(54)=が決裁文書改ざんを強制され自殺した事件がありました。あのようなことは官僚や政治の世界では事件にならなくても起こっていると考えるのが自然です。官僚や政治家の不審死事件も調べれば多数あります。

そういう意味で、桜木建二が言ったような青臭い正義感だけで搾取する巨大な組織と戦うのは無謀でしょう。

やるとすれば、入省直後から上司の言うことを素直に聞き、上司に利益誘導して、昇進して、局長や事務次官になってから、省庁の改革をするか、または、政治家になって、公務員の人事を改革派が主流になるようにするか、だと思います。

裁判官でも、いくら正しい判断でも、最高裁判例に反する判決を書くと左遷されてしまい、一生昇進できなくなるそうです。ですから、裁判官として正しいことをしようとすると、若い頃から最高裁判所の判例どおりの判決を書き、徐々に出世していって、最高裁判所の裁判官になってから始めて画期的な判決を出す、というのいいそうです。

そのあたりまでドラマの中では言っていませんが、東京大学に入って底辺の人達を救いたい、バカ達を救いたい、と思うのであれば、そうした長期的で周到な戦略が必要な気がします。組織の力は巨大ですから。



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