「脱サラ船酔い漁師」です【自己紹介 note始めました】
「脱サラ船酔い漁師」の河西信明(かわにし・のぶあき)です。鳥取県鳥取市賀露町という漁師町で漁船「弁慶丸」の船長をしていて、底曳きなどの沿岸漁師をしながらECサイトを通じて日本全国にお客さまに旬の魚を直送する仕事をしています。
この度、みなさんが普段、知る事のない漁師の世界や日常を、身近に感じて頂きたいという思いから、弁慶丸や漁師・漁業のことを知ってもらおうと、noteを始めました。今回は自己紹介と共に、弁慶丸が掲げているミッションやビジョンをお話します。
営業マンから縁もゆかりもない鳥取の漁師町へIターン
私は大阪府東大阪市で生まれ育ちました。関西大学を卒業後、住宅メーカーで8年間、営業職で働いていましたが、2001年に鳥取県が主催した「漁師の担い手募集」の漁業体験がキッカケで、2002に大阪府から鳥取県へ家族と共に移住しました。漁師というと、親から子へ、子から孫へ受け継がれていくイメージがありますが、私は32歳で脱サラをして漁師になりました。
親方の下で2年半にわたる研修を経て、2004年に「弁慶丸」という自分の新船を建造し、独立しました。漁師の研修時代から船酔いには苦しめられていて、20年近く漁師をしていますが、いまだに船酔いに勝てません。船酔いを治す方法があれば教えて欲しいです(笑)
弁慶丸ミッション「日本の魚食文化の再生を通して、 家族の絆をつなぎ直す」
弁慶丸は「漁師が儲かれば後継者問題は解決する」を旗印に掲げ、2007年からECサイトを運営しています。漁師直送の鮮魚通販の形として、1次産業が販売 ・加工にも展開する6次産業化に着手しました。水産業界での6次化産業化の成功事例がほぼなかったので、当時としてはかなり珍しい取り組みでした。
おかげさまで全国の皆様に支えていただき、漁師直送のパイオニアとして走り続けることができています。漁業と販売の二足の草鞋をはきこなし、モール出店を一切しない形でサイト運営は15年目を迎えました。
弁慶丸のサービスには特徴があります。魚を捌かない「丸のまま」でお届けし、お客さまそれぞれにお魚を捌いていただいております。一般的には、仲買人さんや魚屋さんが魚を下処理(頭、内臓出し、ウロコ落とし、柵切りなど)するように、お客さまが魚を食べやすい状態にしてお届けすることが、一般の消費者さんが喜ぶサービスかもしれません。
しかし、私たちは敢えて丸のままの魚をお届けして、お客さまに捌いてもらう形を取っています。これには弁慶丸がミッションに掲げた「日本の魚食文化の再生を通して、 家族の絆をつなぎ直す」という思いが込められています。
私たちは「魚を捌く」という行為を、親から子、子から孫へ代々受け継がれる家庭教育のひとつと考えています。しかし、現代は核家族化や少子化の影響で家族のつながりが希薄になり、「魚を捌く」という行為が受け継がれにくくなっています。
私たちは「魚」というツールを通し、家族の絆をもう一度つなぎ直していただきたいという思いを持っています。この思いを弁慶丸のミッションに込めています。
弁慶丸ビジョン「漁師直送文化の創造」
港に水揚げされた魚は、一般の流通経路だとスーパーなどで販売されるまで、どんなに早くても3~4日程度かかります。水揚げされた魚はいったん産地の卸売市場でセリにかけられた後、消費地の卸売市場でセリが行われます。
つまり、セリが2回発生することで消費者の元に魚が届くまでにタイムロスが発生しています。なぜこのような仕組みになっているかというと、昭和初期までの慣習があります。現代のように物流が発達する前は、セリを2回行う流通の仕組みは大量に魚たちを取り扱うには有効な手段だったのです。
しかし、当然ながら水揚げからの日数がたつほど魚の新鮮さ・美味しさは損なわれていくので、消費者が食べる魚は私たちが届けたいものではなくなってしまいます。さらに、セリを2回する流通の仕組みだと、市場の手数料や魚の運搬費などが余計に発生するので、消費者の元に届く魚は割高になります。
私たち漁師は、新鮮で美味しい魚を消費者に食べていただきたいという思いを持っています。鮮度が落ちているのに割高な魚を消費者が買って食べるのは、私たちにとって本意ではありません。こうした思いから、私たちは「漁師からの直送便」という形で、全国のお客さまに魚を届けています。
近年は「農家直送」「生産者直送」を掲げるECサイトも増えてきました。農協を通さずに自分たちの野菜や果物に価値をつけて売る人も増えています。1次産業の発展にとっては、良いことだと思っています。
漁獲物は本来、どの港のセリに出してもOKなんです。しかし、昔からの商慣習で地元のセリ市場に魚を出し、漁業組合に手数料を払って魚を代理販売してもらうのが当たり前でした。私は自分で見つけた販路で魚を売っているため、本来なら魚をセリにかけて手数料を支払う必要はありません。
行政側にも相談しました。行政側は「漁師が獲った漁獲物は、地元の市場でセリにかけるもよし、境港や都市部の築地や大阪中央市場に送るもよし、自分で消費者に直接、送るもよし」と回答してくれました。
しかし、組合側は販売手数料が欲しいし、地元の仲買人さんとのもめ事も避けたいと考えていました。私と組合の話し合いは平行線のまま。いくら話し合っても、なかなか妥協点は見つかりませんでした。
漁師は自ら販路開拓して適正価格で売る仕組みを
結局、私は水揚げした魚をいったんセリに出して組合に手数料を払った上で、発送に必要な魚をセリで買い戻す手段を選び、組合側にも納得してもらいました。私は魚を売るお客さんを自分で見つけて売っているので、正直納得のいかない部分もありますが、農家さんのように「自ら販路開拓をして適正な価格で販売する仕組み」が漁師の間にも浸透するのが理想的だと思っています。
近年は廃業する漁師も増えています。私の地元である賀露の漁港も、この20年ほどで漁船の数が半分以下になっています。漁師の高齢化や後継者不足もありますが、このままでは日本の漁業は衰退どころか完全に消えてなくなってしまいます。私は、日本の漁業が継続できるような仕組みを作らないといけないと思っています。
私たちの最終目標は、漁業の流通改革を成し遂げることです。 漁師の収入が少しでも増える流通の仕組みを作り上げ、斜陽産業からの脱却をはかり、漁師の担い手が少しでも増える世の中に変えていきたいです。
このニュースが気になりました
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。下記に私たち弁慶丸のサイトを掲載させていただきますので、もしよろしければご覧になってみてください。
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