見出し画像

急転直下の展開【脱サラ船酔い漁師 まさかの“逆プロポーズ”をされる】

漁師になることへ迷いが完全に吹っ切れて周囲の説得に乗り出しましたが、プロポーズが「玉砕」した形の彼女と、どのような道を歩むかは決めかねていました。最終的にはついてきてくれることになったのですが、彼女には彼女なりの決断があったのだと本当に感謝しています。

原稿を見ながら当時のことを思い出すと、決断の連続だったなと感慨深い思いになります。今の弁慶丸があるのは彼女(今の妻)のおかげです。いまだに「船酔い」と「奥さん」には勝てない理由がここにある訳です。

バタバタの中で挙げた披露宴でした。

「私もついていこうかな〜」まさかまさかの…

上司であるGさんの寛容さと励ましを胸に、新会社に参加しないと決めた。4月1日から鳥取に移住し、漁師になるための最長で3年間となる研修を受けながら、今後の人生設計をゆっくりと考えてみようと思った。

新会社で心機一転、期待と不安が交差する同僚たちとその気持ちを分かち合う事が出来ないことに寂しさを抱きつつ、健闘を祈る事しか出来なかった。

本来なら漁師としての新しい人生の船出を彼女と2人で航海に出たかったが、1人で行く事を決めていた。彼女には申し訳ないが、遠距離恋愛か、それぞれ新しい道を歩むかの選択を迫ろうとタイミングを見計らっていた。

僕の全くもって身勝手な選択に、30歳を超えた彼女に、このまま付き添い頂くのは気が引けた。可愛い小鹿から猛獣に変身したプロポーズの日から、話の核心には触れず、のらりくらりと日々を過ごしていた。ところが、のらりくらりと過ごした日々は、突然の終わりを告げた。

終わりを告げたのは、彼女だった。

「私もついていこうかな~」

彼女が何を言っているのか、わからなかった。

「エッ!?どこに?」

そして、自分が何を言っているのかも、わからなかった。

「鳥取よ」

(鳥取!?鳥取は、あの鳥取だよな…彼女の口から鳥取という言葉が出ている)

「エッ!?」
(あかん、頭の中が爆発しそうや!)

しばらくの沈黙。動揺する僕と冷静な彼女との無言の会話。

「エッ!?エッ!?ついてくるという事は…そういう事?」

静かにうなずく彼女が動揺し続ける哀れな男に一言。

「そういう事!!」

まさかの逆プロポーズを受けることになるとは…。しかし、このまま僕がプロポーズをしないのもなんなので、彼女に改めてプロポーズしたのである。

ご両親への挨拶 お母さんへの感謝

年の瀬が迫った12月20日。急きょ、彼女のご両親に挨拶する事となり、その運命の日がやって来た。

彼女の住んでいるのは兵庫県宝塚市にある「雲雀ケ丘花屋敷」。実はここ、関西でも有数の高額所得者の集まる地域なのだ。普段来ることない雰囲気の街に、緊張感が高まる。

彼女のお父さんは大手商社の取引関連会社の重役で、かなり手厳しいらしい。この街で生まれ育った彼女を初めて客観的に見ると「実は、エエとこのお嬢さんやん!」という言葉が自然と口に出てしまった。「エテコと違うよ、エエとこのお嬢さんネ♪」と吉本新喜劇バリの返しに、緊張がほぐれる。

彼女なりの心配りに感謝しつつ、気取ったプライドの高いお嬢さんでなくて本当に良かったと安堵の溜め息が漏れた。

しかし、漁師の嫁になる事を前提にした突然の申し出に、果たしてご両親は結婚を許してくれるのだろうか、一抹の不安がよぎった。

高級住宅街に進む事5分で彼女の実家に到着。実家の目の前は、なんと某大手ビール会社の会長宅。立派な門と塀に囲まれ、家なんて見えやしない。おまけに彼女の実家は、某大手ハウスメーカの立派なお家。

常に競合を強いられる一流ハウスメーカーなので、坪単価から内部仕様までが嫌でもわかる。当然の事ながら建築費がかかっている高額物件である事もすぐにわかる。

玄関先には、お母さんがお出迎え、彼女の前評判通り、とても気さくな性格。僕の靴を見るなり「やつし~」が第一声だった。関西の方言で、おめかしする。化粧する。の意味で、あまりいいイメージでは使われない言葉。「身長も高いし、お金かかる旦那さんやな~」と甲高く笑い飛ばした。

「私たちの家系には、おらへんタイプやわ。ずんぐりむっくり家系から卒業できるかもな」お母さんは気さくな性格をはるかに通り越し、言いたいことは誰にでも言う歯に衣着せぬ性格だったのだ。

お母さんとの会話で緊張をほぐしながら、奥の座敷に案内された。挨拶もそこそこに済ませ、本題に入ろうと思うや否や、お父さんから開口一番、厳しい一言が。

「娘から聞いていた条件と違う」と一刀両断。アットホームな雰囲気が一気に凍りついた。

「漁師になるためにふたり一緒に鳥取に移住しようと思うんです」と、恐る恐る口に出すと、彼女のお母さんが「漁師?おもしろそうやないの?」と言ってくれた。「こんな経験、めったに出来へんよ。若いうちにドンドンしておいで」とお母さんの助け舟のおかげで、凍りついた雰囲気が消し飛んだ。ただお父さんだけは渋そうな表情のままだ。

「漁師になるために研修に参加しますが、そんなに甘い世界ではないと思っています」
「2年の研修になるか、3年になるかがわかりませんが、精一杯、努力いたします」
「ただ、その結果として、漁師になれない、もしくはならないという最終の選択をいたします」
「仮に大阪に帰ってくる事があっても、同じ建築業界で、今と同じぐらいの年収を稼ぐだけの自信はありますので、お嬢さんと鳥取に行かせて下さい」と頭を下げた。

お父さんもあぐら座りから正座に座り直し、「幸せにしてやってくれ」と頭を下げた。

お父さんより先に頭を上げる訳には行かず、しばらく妙な時間が流れ続けていた。

それを察したお母さんが「大の男二人が向き合って、変なポーズをしていたらなんか気持ち悪いな」「とりあえず乾杯しましょう」と妙な雰囲気をまたまた吹き飛ばしてくれた。

実はと言うより、当然の事ながらお父さんは、僕が漁師になることに難色を示していたらしく…。ところが、お母さんが数日かけて僕の代わりに口説いてくれていたらしい。僕はホッと胸をなで下ろした。お母さんがいなかったらどうなっていただろうか。

これで全ての課題はクリアした。僕たちはすぐにやってくる新生活に備え、足早に結婚式を挙げた。互いの両親や友人、知人たちに祝福を受け、盛大に祝ってもらった。

さぁ、新たなる旅立ちの船出へ。

脱サラ船酔い漁師の学び(夢に対する覚悟)
自分の語る夢に反対されるという事は、あなた自身がその夢に対する覚悟が足りない証拠だ。何が何でもやり遂げたいという夢に対する圧倒的な熱量が足りていない。あなたがまだ本気でないから、周りが心配して反対してくれているのだ。

反対意見に対して少しでも納得するのなら、その反対意見に従って夢をあきらめたほうがいい。むしろ反対意見に必死で反論するぐらいの情熱や想いがなければ、夢に向かって進む事は出来ない。

夢を実現させる過程で立ちふさがる壁や障害を乗り越えるためには、圧倒的な熱量が必要不可欠だ。この夢のために、自らの命を投げ出せる程の「覚悟」があるのか?改めて自問自答してみてほしい。

親愛なる奥様へ。これからもよろしくお願いします

この記事が気になりました

なぜ豊漁?カツオ水揚げ量“25倍”「大きくてうまい二刀流」今年ならではの理由
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000257862.html

日本全国不漁、不漁のオンパレードで飽き飽きしていた中、実に嬉しいニュース。たまには水産業界もこういう明るいニュースがないとやってられないよね。出来れば日本海側にも何かお金になる魚たちの群れが湧いてくれないかな?

例えばノドグロとか、キジハタとか、松葉ガニとか…いやいや、魚に貴賎なし!尊い魚もないし、卑しい魚も存在しない!尊敬する西潟正人大兄貴に叱られるところだった。

西潟正人の魚道場 | 弁慶丸 | 鮮魚、通販 (benkeimaru.com)

最後までご覧いただき、ありがとうござました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?