毎日3つだけ感謝や感動を探そう!【脱サラ船酔い漁師 “お化け屋敷に”悪戦苦闘
今回も、前回からの続きをお届けします。
賀露での本格的な暮らしが始まって最初に用意して頂いた家は、まるで「お化け屋敷」。この家で暮らすしか道がなかった私たち夫婦の奮闘記をお届けします。
お化け屋敷みたいな新居
この田舎暮らし、最初の困りごとは住宅問題でした。県の水産課が用意してくれたのは、住むのにかなり勇気が必要な古民家。新婚生活のスタートには少々夢のないスイートホーム。
一生懸命に探していただいて本当に感謝しているのですが、築年数が古い上に長いこと空き家だったんです。ですから、傷みが激しく、住宅営業マンであった私が見ても「住めるようになるかな?」というのが第一印象でした。
そんな古民家を見た妻が、ポツリとこぼした一言が、今でも頭に残っています。
「この家、お化け屋敷みたいだね」
「今流行りの古民家住宅みたいじゃん」とすかさずフォローしたものの、妻からは刺さるほどの痛い視線。「引っ越しまでには、モダンな古民家住宅に生まれ変わらせるから!」と勢いで言ったものの、夢の新婚生活スタートには、かなり厳しい現実でした。
引っ越し前に鳥取に通い詰めて、家の大掃除を始めました。が、初日から床が抜け落ちる、あまりの埃とゴミのせいで掃除機が壊れる始末。これは手がかかると思い、大阪から僕の母親を急きょ呼んで手伝ってもらうことにしました。
最初の難題は、大家さんの残している荷物たち。田舎の空き家物件は、たいてい大家さんの荷物が残った「納戸」代わりになっています。この置き去りの荷物たちを、2階の一部屋を丸々潰して大家さんの荷物専用部屋として、封じ込める作戦を決行することに。
しかし、各部屋に散らばっている荷物を動かすと、「ギャ~!」と大きな悲鳴があちらこちらから聞こえてきます。空き家に住みついていたムカデや見たこともない虫たちが現れるたびに、女性陣はパニック状態に。
結局、虫を煙で退散させる燻煙剤を合計5回まくなど、快適に住めるようにと修繕と大掃除を週末ごとに鳥取に通い詰めての日々が約1ヶ月も続きました。
引っ越しは費用を浮かせるため、友達から車を借りて自分たちの手で行う段取りで予定をしていましたが、荷物を入れる予定も延期に。引っ越し前日深夜まで大掃除と修繕を頑張りましたが、快適に住める状態にまでは出来ませんでした。
結局、住めるようになった部屋から少しずつ荷物を入れていく段階的な引っ越し作業に切り替え、すべての引っ越しが終わったのは半年後。田舎暮らしに憧れた都会人の浅はかさを思い知らされました。
お風呂に入れない…いや入りたくない!
必要最低限なモノだけで何とか田舎暮らしをスタートさせるわけですが、困った問題がまだひとつ残っていました。それは「お風呂に入れない」、さらに正確に言うと、「お風呂に入りたくない」ということ。
機能的な問題ではなく衛生的な問題で、お風呂の壁・床のタイルの目地にこびり付いたカビが、どんな薬剤を使っても落ちないんです。
僕の有り余る力でこすっても、こすっても落ちないので「カビではなく、模様なのでは?」と思えるほど。ガサツな神経の持ち主である僕でさえも、この空間で裸になるには、勇気が必要でした。
試しに入浴してみるのですが、「体が綺麗になった気がまったくしない」自分の体の一部が、この空間のわずかな一部分にでも触れる事を避けたい状態。疲れが取れずに、むしろ溜まっていくという入浴タイムです。
最終的には、友達に借りた通販の高価な掃除機材でカビを落とせましたが、その間、妻はお風呂に入る勇気が出ず、ずっと銭湯通いでした。
隙間だらけの家に悪戦苦闘
また、隙間風の問題もありました。家の中が隙間だらけなので、いくら部屋の中を冷暖房器具で冷やしても、暖めても全く意味がありません。夏はものすごく暑く、冬はものすごく寒い家でした。
「高気密住宅」「高断熱住宅」を武器として営業してきた自分が、建て替えするお客様の気持ちを自ら体験することになるとは・・・なんとも皮肉な話です。
特に冬場の寒さは強烈で、廊下が氷点下0度の家って想像できるでしょうか?グラスに入れた氷が朝まで残っているなんて信じられますか?家の中に居るのに、いつでも外出出来るぐらいの着込みよう。氷点下0度の廊下を通ってトイレに行くのにも、すごく勇気が必要だったんです。
「早く建て替えをして、家の中の寒暖差で生じるヒートショック対策しないと大変なことになりますよ」
どこかで聞いたようなかつてのセールストークが、頭の中でグルグル鳴り響いていました。
都会人からすれば、下水道完備の水洗トイレやウオシュレットが当たり前の事でしょうが、田舎暮らしでは、感動もの!!そんな些細な事にでも感動できる事が、田舎暮らしの醍醐味かもしれません。この「普通」に暮らせる有難味が都会に住んでいるとわからないものだと思います。
元住宅営業マンでありながら、田舎暮らしを通して、「家」という有難い存在価値を改めて再認識しました。当たり前って、実に恐ろしい事です。
あなたが普段何気なく生活している「家」に感謝した事がありますか?今でも時々、この通称「お化け屋敷」の前を軽トラで通り過ぎるたびに、
「僕たち家族を厳しい自然条件から守ってくれて、本当にありがとう!!
あの時は本当にお世話になりました!!」と、心の中で声掛けをしています。
脱サラ船酔い漁師の学び(教訓)
11月6日は松葉ガニ漁の解禁日
いよいよ11月6日に松葉ガニが解禁となります。
2021年度は、松葉ガニの水揚げ量が41%減と過去10年間で最も少なくなり、セリ市場の平均価格は過去10年の平均価格の約2.8倍にまで高騰しました。今後、ますますの入手困難が予想されていますので、注文はお早めにどうぞ。