短歌研究新人賞に送ったやつ(30首)

数年前に短歌研究新人賞に送ったやつを供養したいと思ってたので、ここでやります。『第三花粉』というタイトルで30首です。堅くて青臭い作風でちょっと恥ずかしい(文語に関しては使い方合ってるかも怪しい)のですが、短歌作り始めたころの一つの成果として、生暖かい目で読んでもらえると嬉しいです。また、短歌作れるようになるために。


花粉いまひたに走りて春いろの意思表示せよ 黄とはそのいろ

平均気温十二度を越す地点よりわれの動悸は意思に反する

杉華粉まとひてきみは「吾(あ)のアウラ」とふ科白吐き小(ち)さきくしゃみす

花摘みたし汝(な)におくるため けれどまた摘むとふ謂いの不安きたるか

春うらら あたたかさとはいつよりか無言の圧となりて漂ふ

芽吹くとふ現象 仮定として頭頂部より芽吹きしときの痛みは

枕木のあいだに赤色および肉など探しつつ 遅延は五分

粉ガラス入りのタバコを吸ふときにiceとふ語の浮かびけりとぞ

汝(な)の繊(ほそ)き右手の骨の延長として白化する吊革の黄

多機能のトイレ、タイルの溝をいま苺ミルクが伝わっていく

帰り路(じ)に憂鬱のごとき塊のはりつくが見ゆ 鼻糞といふ

吾(あ)がうちに鼓動の規則秘めしこと誰も知らないゆゑにやあらん

血のながれ記憶させたる鼓膜もて待ちつづけろよ 夕食完成

摩擦音はもっともおおきな音になる わたし夜中の歯ブラシが好き

昨夜みた一種異常な点滅は街灯による 今日はまだ見ず

あす朝も早めに起きるために夜、わずかに悩みをかかえて眠る

みないつもポッケの奥を目視することなく手を入れてるというのに

肌色のレジ袋をふと裏返すときにあらわる鮮烈な赤

頭のなかは触っちゃダメよバイ菌がついたらゴメンじゃ済まないでしょう

「飛ばされてない?」
「大丈夫」
「ありがとう、わたし自分じゃ分からないから」
 
この世から全部の家のきえた日に全人類を見わたせるでしょ

ことさらに指紋の目立つページには第三花粉のいろはピンク、と

ふたりしておなじ弁当さげて行かう 複製不可の孤独もち寄り

さくらほら
ついてるよほら
ちんちんに 
私といっしょに入ったからだ

花びらを綺麗と思ったことはない そう言い終わる頃の不安は

赤外線 汝(な)を貫くと知りてのち吾(われ)の両手を棚にしまへり

目薬は吾(あ)の黒白を疾(と)く見分けただ黒にのみ垂直下せよ

宿命はシミ抜き不可で鬼はいま髪にサクラを紛れ込ませる

春といふ連続殺人犯ありき 頬に朱色を湛へてゐたり

きっとそのまま立っててももう何も起こらないから 桜一枚


以上です。また別の日に角川短歌賞の最終候補まで残れた連作も供養したいです。


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