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【極私的音楽雑記】#10 デビュー当時のサザンオールスター ズの記憶(1978年①)

1978年にザ・ベストテンが始まった。
この番組を欠かさず見ていた当時の青少年達は、今週のスポットライトでサザンが初登場した時のことを覚えている人も多いに違いない。
リアルタイムに経験した人は、デビュー当時、学生バンド風情だったサザンと同時代を共に生きながら、その後に多くの人に愛される国民的なバンドになっていく過程を知っているだけに、その事を語りたくなるのは致し方ないと思う。そして自分もその一人だ。

自分もサザンは好きだが、知らない曲もたくさんあるし、ライブにも行ったことがない。その程度の自分がサザン初期の頃、中3から高1だった当時の自分から見えていた景色を思い出してみた。(以下、個人の感想です)

サザンの初登場。「勝手にシンドバッド」

サザンのデビュー当時の「夜のヒットスタジオ」や「ザ・ベストテン」でのジョグパン姿の初登場はしっかり記憶にある。
衝撃的だったという記憶はないが、元気のいい、お調子者なお兄さんたちが出てきたなという感じだった。はちゃめちゃに頑張ってる感じに悪い印象はなかったし、番組は盛り上がっていた。このとき知名度は抜群に上がったと思う。

この頃、既にツイストがポプコンで優勝して「あんたのバラード」や「宿なし」などで大人気だったが、その王道感に比べて、下世話なキワモノが出てきた感だった。当時の大人からすれば、悪ノリ学生の宴会芸にも見えたのではないかと思う。

ちなみに「勝手にシンドバッド」という曲名を聞いた多くの小中学生は、それってドリフの志村のやつじゃんと思った筈だ。そこパクっていいの?、、少なくとも自分はそう思った。

違和感だらけの歌詞と歌い方

曲については当初、かなり違和感を感じていたと思う。よく言えば新鮮。
まず歌詞がよくわからない。今何時ぃー、そうねだいたいねー。ちょっと待っててー。で、結論はどこにあるんだ。「胸さわぎの腰つき」って何? 何のことを歌っているのかよく分からないし文章や言葉が変だ。

それに歌い方もへん。巻き舌で歌うってどういうこと? 外国人が使う日本語の真似をしてふざけてるのか。あとダミ声だし早口だし何言ってんだかよく分からない。聞き取れないような日本語を歌うパターンってあるのか。

当時、言語化されていた訳ではなかったと思うが、こんな印象だった。
サザンの前にサザン的な歌詞や歌い方は存在しなかった。
それまでロックといえど日本語は日本語らしく歌っていた。少なくともツイストだって日本語として意味が分かる歌詞を日本語の発音で歌っていた。

しかし中学生は馬鹿なので部活の練習でグランドを皆んなぐるぐる走りながら、今何時ぃーそーねーだいたいねー、と巻き舌で口づさんでいたし、自転車に乗りながら早口部分を練習するようになった。

当初、メディアの中の反応は、

最初の頃は、テレビ番組でサザンの曲が話題になると、いわゆるコメンテーターや評論家みたいな人、歌謡界の重鎮的な人の多くが否定的なコメントをしていた印象だ。早口だしダミ声だし何言ってるのかわからない。私は嫌いです、、という感じ。所詮、学生バンドとして演奏力を小馬鹿にするコメントもあったと思う。

自分は、そんなに悪く言わなくていいのにな、と思っていた。
ある日、ラジオでハスキーボイスの歌手ランキングみたいな特集をやっていた。その番組で桑田さんを1位にしていた専門家のような人が、「実は彼の声は高音部から低音部まで強弱問わずハスキーボイスなんですよ、こういう人は中々いない、すごいですよ」、、という感じで褒めていた。桑田さんのことをここまで高く評価する人もいるんだと思った。

「いとしのエリー」以降の手のひら返し感。

それが「いとしのエリー」が出た頃から皆んな一斉に手のひらを返し始めた。個々の人はそんなことはないと言うかもしれないが、全体の印象はそうだった。名曲だ、桑田は天才だ、、。

そしてアルバムが発売され、シングル「思い過ごしも恋のうち」「C調言葉に御用心」が出た頃には、悪く言う人がいなくなっていった印象だ。
さらに、その頃になると文化人的なタレントが実は桑田さんの曲好きなんです、、と言い始める雰囲気を感じていた。

今聴いてもこの2曲の溢れ出るキャッチーなメロディパターン、言語センス、圧巻の構成力(あるいはアドリブ力)はすごいと思う。
明星など雑誌の特集でも”天才、桑田佳祐”的な言葉が添えられるようになった記憶がある。

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