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やだな、やめたいな、死にたいなの親父が、とうとう?
母に脂質を徹底的にカットしてくれと言ったらしい。
学校が家政科で管理栄養士を持っている母は、身体を壊すから止めろと忠告したのだが、自分でやるから良いもんに成ったらしい。

ネットが使えるわけでも無く、どこぞで買ってきた新書の怪しい本に従い、自分でメニューを作り出したらしい。

「何を喰ってるのさ?」
「豆腐、おから、胸肉」
「ほお」
「でも、お腹が空くとナッツを食べているよ」
「脂質カットに成ってないじゃん」
「バカだねぇ」
宮田さんも交え3人で笑っていた、今、喰っているものなら健康を害す事も無いだろう。

でも、そこは我が親父殿、期待に違わず、遣りだした。
なんちゃらと言う知人の勧める、かんたらという水を飲み、後は豆腐だけ、豆乳も脂質が有るからだめ これもだめ。
「豆腐ばっかだと お腹壊すんじゃ?」
「トイレの掃除、自分でしているよ」
なんで、母が知っているかと言うと、承認欲求が服を着ているような親父殿、いちいちアピールがウザい。
僕にも、豆腐となんちゃら水だと身体に良くて身体が軽いとノタもう(笑)

親父殿が満足で体が軽くて健康なら愚息は申し上げる事はございません。

こんなに頑張って居る自分、凄いだろうに酔うと、とことんバカをやる。

親父は肝臓と膵臓に負担をかけ、インシュリンのバランスを崩し、糖尿病と診断された。

体重は60kg台まで落ちたけどね、筋肉も落ちて、階段で蹴躓くの止めてもらっていいですか? 体重計の数字が減るのが生きがいで嬉しかったんですね?

これが60代半ばの事で、なまじベースが頑健だから、糖尿病から1回目の心筋梗塞、テーノー未熟病院に入院、バルーンで復活、脳梗塞、降圧剤で復活、体力低下で誤嚥性肺炎。 
筋の悪いレストア・パソコンみたいに治しちゃ壊れを繰り返していた。


そして、千尋はWindows教室なるものに通うようになった。
舞子がPCを使えるのが悔しいのと、職場でも使う必要が出来たらしい。 何度かエクセルの表を舞子に頼み、断られ事務所に入り浸って、舞子のPCの前でウンウン言っている、深夜に覗きに行ったら、まだディスプレイとニラメッコしているから、聞き取りをして、こさえた、 30分で済んだ。

学会だか勉強会だかで発表する論文? だそうでデータのベース数が30人ちょいのものだった。

「このくらいなら、キャノンのワープロでも出来るよ」
僕が以前使っていた、マウスを使うキャノンのワープロが僕の趣味部屋に有り、それならエクセルを使うより簡単に表の作成が出来る。

舞子がPCを千尋に触られるのを嫌がる。

翌々日だったか、ワープロとマニュアルを渡し、使用許可を出した。
暫く、リビングでワープロを弄るように成った。

キャノンのワープロはお気に入りだった、ある日消えた。広斗が卒論を書くのに持ち去り、帰ってこない、返還請求しろと言ったら、四の五の言い訳をする、岳父から電話が有り、やってくださいとか言われた。
「なんで、勝手にワープロ処分しちゃうの?」
「ヒロさん使っていないから」
「使っていたでしょ? 貴女が使っていない時、文章を書いているの見ていたと想うけど」
だんまり
「どうして、報連相しないで勝手な事ばっかすんのさ」
当時の一太郎もWordもワープロの変換精度には敵わず、文章を考える時、使っていたのを千尋も見ている。

何なの?家の中に泥棒がいるみたい(笑)

看護師としては優秀らしいけど、他は駄目みたい、教室に通ったのにWindowsが使えず、後日VistaのPCを買って、遅いのを舞子のせいにして大喧嘩をしていた。

Vista、Pentium、メモリ1GBじゃ高いPCでも動かないよねw


1週間、欧州に出張に行って戻ったら趣味部屋の物がほぼ無くなっていた。

舞子が出来てから、アカチャンホンポの割引で買ったゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダー。 天賞堂で買ったミニカー、一見玩具な8㍉のミニ一眼レフカメラ。

「どうしたか知っている?」
「恵利おばちゃんのところの兄弟と従姉妹が泊まりに来るって片付けていたよ」
舞子も嫌な思いをしたらしい。

おもちゃはディスプレイケースに入っていたのだけど、ケースは事務所の倉庫に置かれていた。
「あれが無いな」
ドームになる前の後楽園で約束の3番がサインをくれないで、代わりにBIG1が僕の名前を書いてくれたサイン。 クラブハウスまでの通路に光るような3番と 貰えなくて泣いた小学生の僕に、とても暖かった1番のサイン。

千尋が日勤から戻ってきた。

「倉庫にも無かったんだけど」
「月曜に出しちゃった、怪獣なんて要らないでしょ?」
「要るよ、楽しいんだもん」
「子供じゃあるまいし」
「子供っぽかったら、勝手に捨てるの?」
右頬をひくひくさせながら言ったら、怯えた。
「新しいのを買ってきたら、お金払うから、馬喰町は行くでしょ」
「サインは?」
「え?」
「巨人軍って書いてあったサイン色紙」
「一緒に捨てた」
「そうなんだ」
「怪獣と車は買っていいから」
「車もさブラーゴの限定が4台あったのさ、もう買えないのよ、カメラもフィルム詰めたら写真が撮れるのよ、僕が初めて使ったカメラで、爺ちゃんから貰ったんだ、フィルムをカットするカッターも有ったでしょ?」
「それは恵利のところの」
「兄弟にやったのか?」
「おもちゃだと」
「僕のだよ」
「おもちゃじゃない、怪獣だの仮面ライダーは子供の教育に悪いって恵利が」
「へえ国大出の教師さまが言ったのかい? 人の物勝手に捨てろって?」

追求は止めた、無駄だ。
千尋の親戚とは絶縁した、岳父が東京へ来ても泊めない、他の親戚もお断り、祭りだのも一切行かない、舞子が望まないのに無理に連れて行かせない。
「PC弄っている方が楽しい、自慢話がリピートするだけなんだもん」
舞子は絶縁を喜んでいた。
広斗が卒業して嫁を貰うのだが、先方へ名代で挨拶に行けという、断ったのだが、千尋に頼み込まれ甲府まで出かけた。 仲人をした叔父も同道する。

日帰りのつもりが、一献になって、泊まりになった、帰り道、叔父に、お叱りを受けた。 僕の態度が岳父の顔を潰したそうだ。
「わかりました、じゃあ結婚式も辞退します」
「そういう事を言ってるんじゃないだろう」
「だって面汚しなのでしょ?」
「おまえが態度をだな」
「お前?(笑) もう お構いなく そちらには金輪際関わりません」
「そういう訳に行かないだろう」
「行きますよ(笑) 叔母さんは僕が心臓病を隠して結婚した、騙したってわざわざ電話してきたし、こうして、無給で山まで出張ってるのに、あれが気に入らねえ これが気に入らねえ。 へえ できの悪いやつでござんすんで、もう ほっといつくんない」
「なんだ、その態度は」
「こんな態度なんですよ あれこれござんしてね」
面倒なので、叔父をJRの駅で降ろした、千尋も叔父と一緒に帰るという。 僕は中央高速を走り60分で戻り、舞子と遊んだ。

新宿へ夕飯を食いに行って帰っても、千尋は戻ってこなかった。

広斗の結婚式は、仕方がないので付き合った。甲府で行われたので、行きは僕の車で出かけ、千尋は親戚と一緒に電車で帰ると言う。

結婚式場の床でひっくりかえって やだやだをするガキ2匹見てたら踏みつけたくなるので早々に辞することにしたのだが、千尋は譲らない。 恵利のガキと舞子を交流させたいと言う。

ガキどもも成長してからは、医師とパイロットに成れるくらい優秀だったが、床にひっくりかえってやだやだは踏みつけるのに遠慮はいらないと想う。

親戚と言う味方が居ると、随分と強気だ。 どうしても僕と帰りたいという舞子を無理やり電車に乗せようとするので、にやけながら笑いかけたら、引いてくれた。

後で岳父と義母から電話が入り、仔細を聞いてきたが、答える必要もないのでほっといた、彼らは甲府泊だったらしい。

感情を消していた、舞子の成長を見ながら、指折り数えていた、接点を断ち切る、マザーボードのチップを外すみたいに、SSDをフォーマットするみたいに別人に為る。


それから毎日楽しく仕事をしていた、GW明け、千尋から会社に電話が有った、出たのは僕だった。
「子供、出来たんだけど どうしますか?」
「産んで、僕が育てるから」
電話を切って あーあと想っていた。

「どうしたの?」 母
「出来たって」
「産んで貰いなさいよ、舞ちゃんが一人っ子じゃ可愛そうだ、
育てるのは手伝うから」

縁が有る命は無碍に出来ない(笑)

あれあれ?

「あんた、それ口に出しちゃだめだよ」
母は めっちゃんこ察しが良い

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