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父は筋骨隆々だったのが骨川筋右衛門に、昨日今日の事じゃない、母が亡くなる5年前から、老後に備えて体重を調整すると言い、脂質を全く摂らない無茶なダイエットをした。80kgが65kgに、そして糖尿病を発症、栄養素のどれかを全くカットすると、補うために、脾臓、膵臓、肝臓に著しい負担が掛かり、インシュリンが滞ってと言う流れらしい。

四大を出て管理栄養士を持っていた母が止めたのだが、俺の言うことは間違いないが口癖の父は聞かず、母の言うことを馬鹿にして、体重だけ減らし、血糖値は上げて、めでたく発病(笑)

惨子とノン子が遣り合うのをBGMに僕は和室で眠る父を看ていた、トン子が来て、父の細くなった手をマッサージしている。ボロボロだなと思って見ている、兄弟の中でトン子は割合、父を嫌っていない、優しげで、父も安心している。

パジャマは清潔で洗剤の匂いがかすかにするけれど、開いた胸元から、やや、垢の臭いがする。

「認知症らしいよ」
「あら、そうなの?」
糖尿病をトリガーに認知症が発症したらしい、二人の会話を聞きつけた惨子が、こちらへやってきた、彼女の仕事は介護士だ。 何故か鼻の穴が広がるだけ、広がっている、ブタガッパ面目躍如。

「だから、あたしが大阪から通って、お父さんを看ていたの」
「ふうん」

一時、ノン子が男子二人を連れて、面倒を看ると称して出入りしていた事が有ったらしい、もっとも、父は自分が一番可愛い人なので、孫の可愛さ等解らず、階段を登り降りしたり、落ち着きのない男子に嫌気がさし、連れてくるなと言ったそうな。

ノン子は惨子に名誉毀損で脅されて、キッチンで大人しくなっている、名誉毀損なんて、そこら中で言いふらさなければ構成要件を満たさないから、刑法で訴訟は無理、もっともノン子は刑法も民法も区別が出来なかろう。

別に、誰に肩入れするつもりもないし、正直、父にも興味は無いから、家に残してきたジョナサンの散歩の時間が気になっていた。

「お兄ちゃん、時間有る?」
「無い」
惨子は鼻白んだ。

「お父さんの事で相談が有るんだけど」
「それなら、全員揃ったほうが良いんじゃない、ヤン子にも声をかけておいてよ」
「私、大阪から来なきゃならないから」
「じゃあ、知らない」
母の末期の事などがあり、僕は実家の家族に興味が無い。 更に言えば、SNS上で、惨子はさすらいの建築士(2級ということは伏せ)というタイトルで、けっこう実家の家族のことも言いたい放題、さらに、何を血迷ったか、ええしのお嬢を気取っている嘘八百、気持ち悪くて仕方がない。

台所で凹んでいるノン子も、きしょい(笑) もうね、50代なのに、中身はおこちゃまなんだからぁ(笑) 見た目と中身は揃えてくれないと調子が狂う。

ジョナサンは散歩に連れ出すまで、トイレを我慢しているし、僕が帰るまで独りだ、兄弟と後日を約して、上野経由で茨城へ帰ることにした。

「待ってる仔が居るから帰る」

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