【実話】ホテルをシングルで予約したら、知らない人と寝させられた話。
僕がカナダ留学の締めに2泊3日のトロント一人旅をしていた時の話である。
当時は学生だったので金銭的な制限が大きく、高価なホテルや良質なホテルに泊まることは難しかったので、booking.comで一番安いホテルを見つけて宿泊していた。
僕が予約したトロントのホテルはおっちゃんが管理しているらしく、ホテルの近くに来たら電話するように言われ、あらかじめ番号を教えてもらっていた。
近くに来たので早速電話してみるが、2、3回かけても返事なし。30分くらいたった時にようやくつながった。
「△☆〇※」
何やら声が聞こえてくるが、何を言っているのか全然聞こえない。
どうやら騒がしいところにいるようだ。
もう一度耳をそばだててみた。
「你會說中文嗎?」
中国語だった。
僕は中国語はさっぱりわからないのでおっちゃんに英語で話してくれるよう聞いてみた。
おじさんは言った。
"Meet me at the park entrance(公園の入り口に来い)!"
なんで中国語で話した!
というか最初からそこで会う予定でよかったじゃん!
こんな気持ちをぐっと胸の内に秘めて、公園に向かった。
公園に向かうと、ほどなくしておっちゃんが現れ、我々は一緒にホテルに向かった。
ホテルに着いたところでおっちゃんは言った。
「予約してたシングルルームなんだけど、なかった。ごめんな。」
はい??
「申し訳ないけど、今晩はみんなで一緒に寝てもらうから。」
ちょっと待って、何それ。
どういうこと??
みんなとは??
案内された部屋は4人部屋だった。まだ状況が全くの見込めない僕はおっちゃんに聞いてみた。
「すみません。どういうことですか。」
おっちゃんの答えはこうだった。
「ほかのお客さんもこうだから我慢して。今日はここで寝てね。」
よくよく聞いてみたら、どうやら部屋割りを間違えて、シングルの部屋を全部埋めてしまったらしい。その代わり大部屋が空いていたので他のお客さんと今晩だけ寝てほしいそうだ。
ちょっと待て。許される話ではない。
完全に契約違反である。
しかし、貧乏だった僕は今更ほかのホテルを探すこともできず、せっかくの貴重な旅行日を宿探しにあてたくはなかったので、しぶしぶ飲み込んだ。
幸い、まだその時点では誰もいなかったので、このまま誰も来ないといいなと思い、スーツケースを置き、トロントの街へと繰り出した。
夜10時ごろ、観光を満足に楽しんだ僕は、すっかり部屋のことなんか忘れ、くたくたの状態で部屋に帰ってきた。
部屋の扉を開けた瞬間、絶望の感情が僕の身を襲った。
いる。
いっぱいいる。
しかも電気消えてるし。
というかもう寝てるし!
そう。僕の部屋にはすでに先客(?)が3人いて、電気を消した状態で全員大いびきで寝てた。
いや早すぎる。まだ10時だぞ?
真っ暗な中、抜き足差し足で彼らの間を通り抜け、僕は何とか空いているベッドにこぎつけた。
ベッドがあるだけましだと感謝した僕はすでに現実世界の常識を失っていた。
早いけど寝るしかないと思った僕は携帯を充電しようと、充電器を取り出して、コンセントを探した。
ない。
いや、ある。
あるけど、隣のベッドの横だ。
状況が想定を超えてきたので、もはやここまで来たら帰って飲み会のネタにしてやると思い、あきらめて寝る準備をしていたら、隣の人が目を覚ましたみたいで、話しかけてきた。
「大丈夫ですか。ごめんなさい、先に寝てしまって。」
優しい中年くらいの男性だった。なんと、話を聞いてみると、同じ日本人だった。
二人で主のおっちゃんの文句をさんざん言った後、その日は床に就いた。
翌朝のことである。
おっちゃんに文句を言おうと廊下で構えていたら、おっちゃんが廊下の反対側から猛スピードで走りこんできた。
「よかった!探していたんだよ!さあ、やっとシングル空いたから来て!」
おっちゃんの気迫に圧倒され、もはや文句を言うことも忘れ、用意されたシングルルームに入った。
部屋を見た瞬間「またか」の3文字が鮮明に頭の中に映し出された。
今度の部屋は水浸しだった。
「ちょっと...」
と言おうと振り返ったら、おっちゃんはもうその場にはいなかった。
仕方がなく部屋にあったタオルで水を全部吸い上げて、風呂場に置いておいて、逃げるように部屋を出た。
そして晩になった。
前日のように疲れた状態で帰ってきた僕は、今度こそ一人で寝られると思い、ベッドに飛び込んだ。
5分くらいたった時、浸水の原因がはっきり分かった。
明らかに壊れた天井から水が垂れている。
配管が壊れているのかと思い、上の部屋は大丈夫かと首をかしげた瞬間、僕はこの惑星で一番聞きたくない音を聞いた。
「じょろろろろろろ」
ネズミに食われ、むき出しになった天井の配管からは明らかに上の階に住む何者かが用を足した後の音が生々しく響き渡ってきた。
水滴も納得だった。
僕は静かにほほ笑むと、ヘッドフォンを取り出して、これでもかというくらい頭に押さえつけて、睡眠を開始した。
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