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【020】裁判の尋問は準備が9割

訴訟で最も「華」があるパート,尋問。
「裁判」ときくとイメージされるあの場面です。
今日は日曜日でコッテリじっくり時間をかけて,週明けにある大きな尋問の打合せをしてきました。

尋問って?

尋問とは,裁判官の前の証言台に座って質問に答える証拠調べ手続です。
変な言い方かもしれませんが,最も裁判っぽいアレのです。

裁判では,客観的証拠(文書等)を先に提出して進められます。
契約書や紙の記録があるのならそれが先に提出され,
そうした記録がないもの,たとえば口頭でのやり取りなどを尋問で供述するのです。

裁判のルールの1つで「事実は当事者が提出した証拠に基づく認定しなければならない」というものがあります。
真実はどうあれ,証拠がなければ「○○という話をした」という事実を前提にした判断をしてはならないのです。
(相手方に自白がある場合など例外はあります)

その証拠として使うのが尋問。
客観的記録がなければ尋問で供述しない限り,証拠がなくて当該事実を使うことができません。

尋問は準備が9割

僕は弁護士になる前,逆転裁判が好きでよくやってました。
あれは刑事裁判ですが,基本的な流れは民事訴訟でも同様です。

ゲーム中では,証人や当事者の供述を聞いて,
「待った!」を繰り返して,矛盾ある部分に対し「異議あり!」と証拠を突きつける。
謎解きゲームとして今やってもとても面白いです。

が,進め方から「異議あり」の意味まで,全く日本の訴訟法には沿っていない笑
わかりやすくてアレはアレで好きです。

実際の裁判では,ナルホドくんみたいに,アゴに手を当ててゆっくり考えることはできず,
事前に入念な準備を重ねて臨みます。
これまでの双方の主張,時系列の整理,提出された書証(客観的証拠)の確認・・・
とても骨の折れる作業です。
しかし,ここを手を抜くと弁護士として失格。
(当然)クライアント以上にその事件に関する事実関係に詳しくなり,
ある事実を支える証拠,または弾劾する証拠として何があるかを全て体系的に頭に入れます。

それを経て,クライアントなど当方側の当事者や証人と打ち合わせをします。

私はこれまで修習時代の学びや身近な弁護士の方法論を見よう見まねでやっていましたが,
昨年この本を買ってから,マコツ先生流に準備を進めています。

マコツ先生って,本当に嫉妬します。本当に面白く,1コマ漫画の天才ですよね。
僕は兵庫県弁護士会に過去所属していたので,お会いしたこともあります。

この中でも出てくるのですが,本当に尋問は準備が9割。
最近流行りの「9割」といいながら1割の要素デカすぎる問題ではなく,
1割は当日の立ち振る舞いやメモなどで,
本当に9割は準備で決まると思っています。

当方側の当事者や証人は,操作はしないようにしつつも
もちろん質問内容はあらかじめお伝えしますし,
それに対する回答内容も確認します。

今日は陳述書,時系列の確認から,
僕が作った質問リストの確認で3時間みっちり打合せしました。

話はズレますが,
この打合せって,普段は期日報告ぐらいしかしないこともある訴訟事件において,
「あ,この弁護士は自分のために色々してくれてる」
と思ってくれる瞬間でもあり,感謝をいただきやすいタイミングでもあります。
どんな仕事でもある「信頼ポイントを得やすいタイミング」です。

今日も,本人すら詳細は記憶が薄れている事実関係を証拠から全て洗って,Excelでまとめる。
争点から考えて,濃淡をつけて重要な事実をマーキングしてご説明する。

「こんな準備してくれてるんですね」「また判決出たら寿司でも行きましょう」ってたまたま同い年のクライアントさんからありがたい言葉を頂きました。
(僕はクライアントさんとは事件終了後であればご飯いったりします)

単なるセレモニーではない

最後に,「尋問なんてセレモニーだから,事件の大勢は客観的証拠で決まる」といって尋問を軽んじる弁護士がたまにいます。

たしかにそういう事件が多いのは確かですが,
感覚的には大半がそう,というわけではありません。
紛争の類型にもよりますが,個人間紛争の場合は半分も無い感覚です。

今日打ち合わせていたのも,個人間の紛争です。
詳しくは書けませんが,請負関係の訴訟で,
「払う」と言って色々外注したり経費を先にかけたにもかかわらず,
あとからハシゴを外されたとして,かなりの金額請求されています。
(僕は被告側)

クライアントから聞く限り,先方が見切り発車で進めたといわざるを得ず,
契約交渉中とさえいえない案件です。

しかしほとんどのやり取りが電話で,記録がほとんどない。
当方と相手方とで主張する事実関係が全く違う。
これは尋問で趨勢が決まります。裁判官もそう思っているはず。

こんな事件で「セレモニーだから」なんて言っている弁護士は単なる手抜きです。
といった気持ちを持ちながら,昨日1日かけて必死に記録ひっくりかえしてました。

20日目ステータス

尋問の準備スキルが少しだけあがりました。

今週尋問です。きちっと棄却をとって美味い寿司食いにいきます👍

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