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#17 一番かなしいのは、何も感じないこと

こんにちわ。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の17話目です。
時系列としては、 #12 この日の続きです。

「俺、もうつらすぎて、早く家を出て行きたい。子ども達といるのもつらくなってきた。」

突然、手を握られる。
「ごめんね、ごめん、本当にごめん。」
ごつくてかさかさの手、すきだったなとふと思った。
今はもう、何も感じない。

体が背中が冷たくて、頭だけめちゃくちゃ熱い。
ごうごういっている。
…なんでこの人わたしの手にぎってるんだろ。
この前まであった内側の怒りも、もうどこにもない。
夫は目の前で泣いているのに、なんの感情もない。
それくらい、わたしと夫はもう遠い。
同じ場所に同じ時間にいるはずなのに、パラレルワールドかってくらい、現実感がない。

「いや、もういいんだよ。もう、終わったんだよ。」
それしか言葉にならなかった。
茶番を終わらせたいなとだけ思う。

目の前でうなだれて謝り続けるその人は、大好きだった彼に戻っている気がした。
だとしたらあの日背中からわたしに爆弾を投げつけたモンスターはどこにいったんだろう、不思議だな、とか考えていた。
そういえば、この人優しい人だったんだよなと思ったりもした。
いろいろ思うのに、心はさっぱり動かなかった。
もう灰色になった過去が脳裏に残像として見えるけど、それだけだった。

「ごめんね」
何度くり返されても下手な芝居を見ているみたい。

水道工事の人の名刺、ここにあるから。
習いごとの送迎は俺が今まで通りやるから。ダメな時もあるかもしれないけど、カレンダーに書いておくね。
家の書類はここにまとめてあるからね。
……言葉が続いていくけど、映画を見ているみたいに、遠い。

夫:「たまには、また一緒に食事とかしてくれる?」
わたし:「…?…ああ、別にいいんじゃない、子どもの誕生日とか?」
よく、わからない。
この人3か月前にわたしのこと死ぬほど追い込んだ上、全く気づかなかった人だけど、もしかしてわたしのこと好きなのかな。
でも、本当に申し訳ないけど、どうでもいい。
話が耳に入ってこないのだった。
音が消えていく。

ふと変な考えが湧いた。
もしかして、神様にこの人は操られていたのでは?
最近スピ動画とかリーディング動画でよく出てくる台詞があった。

「あなたは次のステージに行く時が来ました。」
「手放すと、入ってくるのです。勇気を持って手放しましょう。」
「違和感のある人、その人はあなたと波動があわなくなってきている。なぜならあなたの波動が上がってきているから。」
「あなたという存在は地球で学びを得るために、あえて困難な道を選んで生きてきたのです。」

わたしは、学びを得るためにあえて困難な道 ≒ 夫との結婚生活を選び、結果波動が上がり、波動の合わなくなった夫と波動が合わなくなり、夫を手放そうとしているのだろうか。

そうでなくても、自分の急な変わりように寒気がした。
スピリチュアルの考え方ってものすごく自分勝手じゃない?
夫ってわたしにとって何?わたしの学びに振り回された人なのか。
だとしたら学びって他の人から見たらただの暴力では。
頭が混乱している。
自分自身に勝手に傷ついていた。

人を変えることはできないというけれど、本当か?
じゃあ何がこの人をモンスターに変えてしまったのか、それはわたしではないんだろうか。
永遠に答えが出ない問いがぐるぐる回る。

ただ、それでも目の前の夫のことは本当にどうでもいいのだった。

あぁ、本当に終わったんだな。 
正直、負けた気しかしない。何にかわからないけど。
だけど、離婚っていうイベントが、モンスターから人間に戻す効果を発揮したのなら、まぁ、よかったのかもしれない。

彼はまだ謝り続けている。

今更だよ。
もう一分一秒だって、あなたに時間使いたくないってずっと思ってる。
わたしの中には、もう好きな人のことしか頭にないんだよ。
わたしの100%は好きな人のものでしかない、たとえ受け取ってもらえなくても。
今は、わたしの方がモンスターになってしまったのかも。


わたしは、今日世界一大好きだった人と別れた。
誰よりも大好きだった人と別れた。
その人はわたしにとって、もう何も関係ない人になった。

だけど、全然かなしくない。
そのことが、かなしくてかなしくてどうしようもない。

わたしのこと、どう思ってた?

最後に聞こうと思ってたけど、聞きそびれた
けどまぁそれもどうでもいい、ほんとに。
わたしはこんなに冷たかったのか、はじめて知った。

そう思ったら、笑えてきてしまって困った。

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