銀山温泉への行き方を商品化する思考法
こんにちは。DMC天童温泉の鈴木です。
山形県天童温泉で、山形ならではの体験やツアーを作って、売って、受け入れています。
2022年12月19日現在、天童温泉から銀山温泉への直行バスツアー「銀山温泉Twilight Trip」を実施しています。2月末までです。
2017年から毎年冬場に実施しているツアーですが、人数と売上で言えば最も売れています。
今日は、このツアー誕生の背景と合わせて、銀山温泉への行き方を商品化する思考法というテーマでお届けします。
以前、こちらで少しだけ触れたことがありますが、もう少し深堀してみます。
みなさん、そもそも銀山温泉ってご存知ですか?
山形県尾花沢市の山あいにある温泉街で、江戸時代初期には大銀山として栄えた場所でもあります。
明治時代、銀山温泉は奥州街道より約12km入った山間部にあり、当時は幅狭い悪路で、尾花沢の街中からは難路1日もかかっていたとのこと。
今は、中心地から銀山温泉まで車で20分程度だからよっぽど当時は、果てしない道のりだったと思います。
その後、銀山として衰退し人口は減りましたが、世間とは遮断された地で、湯治客相手に今で言う旅館のような商売をしていました。
大正時代に入ると、かやぶき屋根の木造平屋や、二階建ての旅館が並ぶ温泉街を形成。
銀山温泉の歴史を揺るがす事件が起きたのが、大正2年。
銀山川の大洪水でほとんどの温泉宿が流されてしまったんです。
なんやんかやしながらも、昭和元年に源泉のボーリングで高温多量の湯が湧出し、各旅館は一斉に洋風の3~4層木造構造に建て替えを行いました。
橋や沿道の整備も行い、戦後は温泉街の洋風化も落ち着き、外観は和風に近づき今のような銀山温泉街になっていきます。
昭和61年に「銀山温泉家並保存条例」を制定し、風情ある旅館を保存し観光復興に生かすことにしました。
平成以降、JRのキャンペーンで銀山温泉街の写真を使ったポスターが大バズりして、多くの方が来るようになったり、近年ではSNSが普及したおかげで世界中から旅行者が訪れる県内で最も人気のある温泉地(観光地)になっていきました。
僕自身も初めて銀山温泉に訪れたのが、2012年前後だったと思います。強い憧れと行ってみたいという気持ちに駆られていたのを覚えてます。
これから銀山温泉に行こうとしている人たちはあの時の僕と同じような気持ちなんじゃないかなと思います。たぶん。
当時もそれなりにお客さんいた記憶がありますが、僕が山形に移住した2016年以降、年を重ねる毎にお客さんの数が増えていってる感じがしました。
コロナ前の2019年の冬とかもたくさんの人が銀山温泉に押し寄せてて、写真もゆっくり撮れるような感じでもなかったです。
このような光景を目の当たりにしたうえに、銀山温泉の旅館の方と話してたらある課題が浮かび上がりました。
それは、銀山温泉の宿泊のキャパが需要にまったくおいついていないということ。
先ほどの写真に写ってる人たちもほとんどが日帰りで来ている旅行客で、あの後なにかしらの方法で銀山温泉を脱出したと思います。
先述した通り、尾花沢の街中まで出るにも車で20分程度の温泉街ですし、最寄りの駅である大石田駅(山形新幹線がとまる駅)までも車で40分ぐらいかかります。
路線バスもあまり走っていないので、公共交通期間を乗り継いでいくにも不便な場所です。
その不便さ、秘境な感じがまたいいんですけどね。
まーとにかく銀山温泉の人気に火がついてからは、なかなか冬場の宿泊予約がとれないという課題がうまれました。
WEBの世界も要注目です。
こちらをご覧ください。
ツアー考案当初も今も変わりませんが、銀山温泉、蔵王温泉、天童温泉の検索ボリュームの比較をしたものです。
銀山温泉というキーワードは圧倒的に調べられていて、現場とWEB上の動きが一緒だなと思いました。
特に冬場が多い。
そう言えば、旅館で働いていた時、冬が近づくとお客さんから「夕食後に、銀山温泉行こうと思ってるんですけどどうやっていくんですか?」「天童温泉から銀山温泉ってどうやって行くんですか?」って問い合わせがきてましたね。
天童温泉に泊まる方も銀山温泉にどうにかして行くのか〜っていう気づきがここでありました。
で、ようやくここからが本題です。
ここまでの話、全部通過したら結論はひとつしかないと思います。
「天童温泉から銀山温泉にバスをだそう!」
これです。
・(お客さんは)銀山温泉に泊まれなくても天童に泊まれば銀山温泉に楽に行ける
・(旅館スタッフは)銀山温泉の行き方をいちいち調べたり説明したりしなくてよくなる→これはお客さんも一緒で、乗り継ぎの検索等に時間を費やさなくてもよくなる
・(弊社側は)ツアーとして成立すれば、冬場の目玉企画になる。天童温泉の宿泊者が増えればなお最高!
銀山温泉側のメリットもしっかり作っていかないといけないなとは思ってますが、まずは温泉街での消費(お土産購入やカフェ利用など)に繋げていっているようなイメージです。
このツアー考えて出した当初は、温泉が他の温泉に人を送り込むってどういうこと?とか、往復でこんなにお金取るの?(最初は4,000円だったかな)いろんな声があがったのを覚えています。
別に銀山温泉のお客さんを奪い取るわけではなく、銀山温泉に泊まりたくても泊まれない方を救うのがこのツアーですし、代金についてもお客さんが認めてくれれば売れるだろうし、認めてくれなければ売れないだけだから、そこは様子をみようということにしました。
逆に言えば、銀山温泉の予約が落ち着く時期についてはツアーの設定をしていません。
冬場のピーク時だけの設定で銀山温泉の生業を邪魔するようなことはしないように意識しています。
山形に、天童温泉周辺にあるものを活かすといった考え方を念頭におき、天童市だけではなく周辺市町村まで含めた形で、旅行者の旅をデザインするようにコンテンツを用意することで人流がうまれたり、消費拡大に繋がったりします。
それが、顕著に現れたツアーになったと思います。
話は少し変わりますが、銀山温泉Twilight Tripというツアータイトルにもちゃんと意味があります。
Twilightは、夕暮れとか黄昏っていう意味があります。
黄昏時の色が移りゆく時間に銀山温泉を旅するということで、Twilight Tripというタイトルにしました。
時間によって、本当に色合いが変わっていくんです。
このツアーの銀山温泉到着時刻は、だいたい16:30頃。まだ少しだけ明るくて、日が落ちる前です。
この時間帯の銀山温泉は冬特有のグレーがかった色です。
少し時間が進むと日がおちて、だんだん暗くなっていきネイビーの銀山温泉へと変貌していきます。
このような感じで、色の移り変わりが楽しめるのもこのツアーの醍醐味なんです。そもそも、日帰りでこの時間帯の銀山温泉を楽しもうと思っても、大石田駅に戻る公共交通機関がなくなってしまうので、脱出できなくなってしまいます。
だからこそ、このツアーに参加して、天童温泉から直行で行くことで銀山温泉に宿泊するまたはマイカーで行く人しか楽しめない時間帯の銀山温泉を満喫することができるのです。
まとめに入ります。
結論として、天童温泉街や天童市内だけに留まらず周辺市町村や周辺観光地と連携して観光地域づくりをしていく必要が大いにあると思います。
特に地方は。
地方は、魅力あるスポットが点在しているからこそ、点と点を結んであげることで、旅行者の利便性や周遊を促すことができます。
縄張り争いをしてる暇はないんです。
あとは、いつまでも行政区域を意識してたら本当にお客さん来なくなってしまうと思ってます。
多くの旅行者は、天童市(だけ)に旅行に来るわけではなく周辺市町村も含めて、「山形」に旅行にきているし、もっと言えば山形を含む東北に旅行に来てる場合もある。
もっと俯瞰して、旅行者の導線を意識しないといけないなと改めてこのツアーを通じて感じているところです。
他にも山形ならではの体験やツアーをご用意しています!季節性の強いものが多いですが、旬のものを1番いい状態で体験してほしいからです。
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