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学生研究奨励賞③〜ただの多趣味人間が研究始めるまで


それは突然のことだった。

大学生活も軌道に乗り始めた5月初旬、祖父からの電話で長野に住む祖母に癌が見つかったという連絡が入った。祖母は半年くらい前から少し疲れやすいと言い、ベッドで横になる時間も増えていたという。その時はもう年齢も年齢だから、まさか病気とは考えていなかった。

祖母は10年くらい前にも癌になったが、その時は幸いにも見つかったのが初期だったため手術と抗がん剤治療で完治した。私たちは、今回の癌もその時と同じように完治するものだ、と考えていた。

しかし、話を聞いているとどうやら違うらしいということがわかってきた。ここで初めて私の頭の中で

「死」

という文字が浮かんだのだった。流石に祖父も、そういうストレートな言い方はしないが、もう治せる状況にないから覚悟しておくよう言われた。


突然のお別れなんて考えてみたことがあっただろうか。我が家は両家の祖父母共に元気で、私は物心ついた時から人の死というものに直面したことがなかった。

こういう時になっても、楽観主義な私は祖母の病気は何かの間違いだろう、きっと良くなるはずとずっと考えていた。もう20も近いのに、現実を見ることができないなんて恥ずかしい話だ。

でも4月の誕生日の時にはすごく元気だったし、今の電話越しの声も元気だ。それなのにもう私の誕生日までもたないなんてそんなの嘘だ。今考えれば87まで元気でいてくれたことが奇跡的であったのだが、大好きな祖母とのお別れがこんなにすぐに来るなんて、信じられなかった。


これは長野の空。


とはいえ、大学の授業もフルにあったし、コロナというご時世もあるため、病院に行ったところで面会することもできない。私は長野に帰らず、祖父と毎日家族でテレビ電話することを決め、普通の生活を送っていくことになる。


研究の方はというと、ちょうどこの頃学生研究奨励費に採択されたんだっけ。
大学生活を快適に過ごすためのアプリ開発がはじまった。

まずは週一回3人で集まる機会を作り、定期的なミーティングをした。初めは奨励費にまつわる書類作成が主で、この頃は本格的なアプリ開発には着手していない。大まかなスケジュールも決めた。

【スケジュール🗓】

6月:奨励費にまつわる書類作成、今後の研究についてのスケジュール立て

7月:アプリ開発について各自学ぶ。参考になりそうな本を探し、購入。

夏休み:本に沿って、アプリ開発に向けた勉強。それと並行して、Google Formを用いて大学生に向けてマーケティング調査を行う。

9月:アプリ開発に慣れるため、簡単なアプリ制作。

10月:調査結果の集計、最終的な方向性を決める。本研究用のアプリ制作着手。

11月:本研究用のアプリ制作。

12月:本研究用のアプリ制作。

1月:最終確認。発表資料作り。研究発表。

最終的にスケジュール通り進められたのは、2人の協力があってこそのことだ。

本研究の指導教授についても、弊専攻の専攻主任の先生が快く引き受けてくださった。

祖母の体調が気掛かりであったが、研究に着手でき、緊急事態宣言も終わり、授業の方も週2回になり五月病になることもなく5月を終え、気がついたら6月に入っていた。

【つづく】

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