第34話:キャンプ

長く続く

波のような

ゆれだった

ゆれがおさまってから

アーケードの警備員が

すべてのひとを

アーケードの入り口に

誘導した

テナントのスタッフの

安全確認をしてから

各店長は

店の前に立って

アーケード側の

指示を待った

安全確認を終えた

スタッフらが

店を後にして

アーケードの

入り口の方へと

歩きだしている

店舗待機の店長らは

書きかけの日誌

準備中の棚

清掃中の床

にとりかかる

花屋は

桶の水を

取り替えながら

花の頭を

いつもより

ゆっくりと

揃えた

お手頃価格

と書かれたバッジを

胸元につけた

電気屋の販売員が

花屋の前で

止まったとき

わたしは迷わず

レジの中に入って

レジに鍵をかけた

電気屋は

おもむろに

ポケットを

まさぐっている

電気屋の後ろを

送り出された

テナントのスタッフが

気怠そうに

入口へと向かっている

時間がないんです

という幾人かの客が

アーケードの入り口で

いら立っている

アーケードの支配人が

到着するまで

解放できないんです

警備員は汗をぬぐった

電気屋がポケットから

細長い封筒を

取り出した

切り花をみている

入り口には

あっという間に

人だかりができて

たった二人の警備員は

もう少々

お待ちくださいと

頭をさげている

次の快速に乗りたい

家に帰りたい

子供を迎えにいかなくてはいけない

警備員が見ていないうちに

抜け出していく人が

改札口の方や

ロータリーの方に向かって

散っていく

電気屋が

花屋のレジの前で

配達のことについて

尋ねた

送り先は

県内だった

今日の配達は

ちょっと…

あまねく不安を

よそに

電気屋は

封筒を差し出した

これと一緒に

ここに

送って

欲しいんです

アーケードの入り口で

支配人が警備員に

指示を出した

アーケード内で

困っている方がいないか

トイレの個室から

非常階段まで

早急に

隅々まで

確認すること

配達はできます

でも

日時は

指定できません

はっきりと言うと

いつでもいいんです

電気屋は財布を出して

一万円札を置いた

レジを解錠して

売り上げた

落ち着いてから

送り先の

キャンプ場に

電話をかけた

花は送ってもいいが

届人の名前がわかっても

こちらでは

それが誰なのか

わからない

当たり前だった

どうしても

送りたいのなら

事前に

届人に通知しておくこと

届人電話番号に

電話をかけた

送り主

だった

キャンプ場に着く

日時をきいて

配達日時の

伝票に

大きく

書いた

後日

キャンプ場から

ハガキが届いた

花がきれいだったこと

封筒もちゃんと

入っていたこと

無理をいって

すみませんでした

キャンプをするひとは

花をどこに

飾るの

だろう

それから

時々

電気屋を覗く

送り主は

まだ

帰ってきていない

















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