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最後に自分を褒めてあげたのはいつ?

「会社との関係は恋愛と同じ。『あ〜、合わないな』と思ったら別れればいいの。相手に合わせるための努力なんかしなくていいんだよ。」

オフィスに向かおうと地下鉄に乗れば、最寄り駅に辿り着くまでに気を失って倒れ、休日でも同じ地下鉄に乗ると、奇しくもきちんと体は反応し、いつものように駅の養護室で目が覚める。時には救急車で運ばれ、誰か連絡する相手はいるかと聞かれても「1人で大丈夫です」とだけ伝え、すっかり陽も落ち真っ暗になった受付に光る精算機で支払いを済ませれば、何事もなかったかのように家に帰った。

誰が見ても異常事態だったこんな生活を、誰にも見られない様に6ヶ月ほど続けていたが、自分でも気付いていなかった本気のSOSに耳を傾ける機会が遂にやってきた。きっかけは、会社が定期的に"仕方無く"行ってるストレスチェックだ。

そもそも、会社の共有カレンダー上に「産業医面談」とスケジュールをいれる人事はどうかしている。まるで対象の社員(=私)を晒すかのようなこの行動を、今ならなんの疑いもなく「おかしい」と訴えられるが、当時の私はというと、自分のスケジュール上に現れたその五文字を見た瞬間、頭の中が真っ白になり、脳全体の血管から血液がスーッといなくなるような感覚を覚えた。「こんな気分になるのは自分の努力が足りないからだ」と羞恥心さえ生まれたことを覚えている。

そう考えると、お医者さんは本当にすごい。完全に洗脳された人間の、胸の奥底にかろうじて存在していた「自分の気持ち」を引っ張り出し、すべての感情に長い間ずっしりとのし掛かっていた錘を、軽々振り解いてくれたのだから。「誰もあなたの人生の責任なんか取ってくれないのよ、自分の人生なんだからもっと自分のために楽しみなさい。」そう慰められた時「あぁ、今まで努力だと思っていたことは、すべて我慢してただけだったんだ」とやっと気付いた。


「我慢がすべて悪いわけじゃない。時には必要な我慢もある。」
よくそんなことを耳にする。しかし我慢した結果、自分を見失ってしまえば元も子もない。その人は、自分を見失っても幸せなのだろうか。

相手、周りに合わせる努力をして、自分の考えや気持ちに蓋をして、その結果「個」が失われる。果たしてアイデンティを失っても、人は己の人生を楽しむ事ができるのか。


幼い頃からとても責任感の強い子供だった私。誰のせいでもないし、どうしてそうなったかもわからないけれど、いつもどこかで「ちゃんとしてなきゃ」と自分に言い聞かせて過ごしていた幼少期。子供らしい無邪気な子供になれず、その感覚は中学、高校と進学していくにつれどんどん増していった。

「こうあるべき」という考え方がネガティヴかどうかは置いておいて、私には合っていない考え方だと気付いたのは、この時の産業医面談後だった。

面談を終え、その場で2週間の休職を命じられた私は「今自分は何がしたいのか」だけを考えて休職期間を過ごしていた。そして1週間ほど経ち、少しずつ心も体も回復してきたある日、突然上司から連絡があったのだ。

「大丈夫だった?産業医ってたまに大袈裟になるんだよね。丸め込まれなかった?」

文字通り、固まった。表情も、身体も、呼吸も、脳内の血流も。

本気?それでも人の子?
どういう人生を歩んでいたら、そんな言葉を投げかけられるの?

もちろん言わなかったけれど。

ただ、おかげで完全に目が覚めたのだから、上司には感謝しなければならない。そして、これからは自分を大切にしてあげなきゃ、と本気で誓った。


それから直ぐに、ドイツ行きの往復航空券を購入し荷物をまとめていた。今考えると、自然と往復を予約している自分に笑っちゃうけれど、それでも確実に良い方向へと私は変わっていた。
でなければ、帰りの便を90日後に設定していないだろう。

その時点では、90日間の滞在で何をするかは一切考えていなかったけれど、久しぶりに清々しい気持ちをになれただけで、ただただ嬉しかった。


他人に合わせる必要のない場所 = 自分にとって居心地の良い場所、は必ず存在する。自分の気持ちに正直になった時、直感を大事にし、自らの考えを認めてあげて、そんな自分を褒めてあげられた時に、誰しもが必ずその場所にたどり着けると私は信じている。

そんな単純な話じゃない?
もしそう思うのなら、一度自分と向き合ってみて。今の自分は自分自身に優しい?今の自分のことを心から好きと言える?

正直になることも、直感を大事にすることも、考えを認めて、そんな自分を褒めてあげることも。自分を信じる「勇気」さえあれば、これらを実行することはそんなに難しくないことに気付くかも。

少なくともこうして私は、自分自身、自分の人生を心の底から愛せるようになった。

いま私は、
自分のために自分の人生を生きてる、と実感している。


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