見出し画像

クライミングで『持てる』とは

今回は『持てる』とは何かについて考えていきましょう。
クライミングにおいて『持てる』と言うことは非常に重要です。
では、具体的にどのような状態を指すのか、と言う事になってきます。
主に、『持つ』と言う言葉は荷物や、何かを運ぶ時に使用する単語です。
つまりは、『そのままの状態で安定して動かせる』状態を指す事になります。

『ん?だから何が言いたいの?』

そう思われるのは当然です。
言葉の意味を問う事が重要ではありません。
しかし、きちんと理解しない事には間違った解釈になるので、慎重に進めていきましょう。

『そのままの状態で安定して動かせる』状態が『持つ』と言う言葉なのであれば、力一杯握りつつけて居るのは、『安定』して居るとは言えません。
それは、『安定させている』だけです。
言い換えれば『不安定』なわけです。
言い方は非常に悪いですが、無駄な力を入れてしがみついて居るだけです。
では、そのような人はどこで『持てる』と感じてしまって居るのか。
多くの方は手のひらや、指の第二第三関節の間つまりは指の付け根辺りで握る方が非常に多いです。
正直、全く使わない訳では無いです。ただ、ずっとそこでは握りません。
もっと言うのであれば、手のひらで持てるのはかなり限られたホールドでしか持てないのが事実です。

では、基本的にどこでホールドを押さえる、握ると言う事をするのでしょうか。
答えは、指先から第二関節までを使って、基本的には押さえる、握ると言う事になります。

『え、そんなとこで持ったらしんどい。。。』

こう感じる方も多いと思います。
では、簡単なチェックをしてみましょう。
どちらの手でも構いません。中指の腹に、反対の親指の腹を当てて、両方ともゆっくり力を入れてみてください。
同様に、中指の付け根あたり(第二第三関節の間)に親指の腹を当てて、力の入り具合を比べてみてください。
指先にしか力が入っていないのが、すぐに理解できるかと思います。
もっと言うなら、荷物を持つときに指の付け根で荷物を持つことはほとんど無いのでは無いでしょうか。
相当重い物でない限り使うことがないと思います。
つまり『そもそも手の使い方を間違えて居る』可能性が圧倒的に高いんです。

『いや、そんなこと言われても強い人は、筋力があるから持てる』

そう思われる方も多いでしょう。
しかし、それは違います。
最初から、高グレード、高強度の動きができる人はほとんどいません。
指先の使い慣れと、感覚が重要になってきます。

そこで一つ、イメージして頂きたい事があります。
S字フックは皆さんご存知ですね。そう、あの荷物をひっかける道具です。
あれはちょっとした隙間でも、先端を引っ掛けて真下に重さを加えればその場に止まります。
S字フックは1点に荷重が掛かる事により、一定の重さに耐えれると、言う物です。
『1点で抑えている』と言うのがポイントです。
では、ちょっとした溝には引っ掛ければもっと安定して荷物はぶら下がっているはずです。
そう『安定している』から、そこに止まって居る訳です。
フックで考えても同じです。
荷物を引っ掛けて、クレーンやトレーラーで引っ張り上げますよね。
1つでは重くても、2つに増やせばもっと安定感が増すので、多少ブラブラしても、そう簡単には落ちません。

ここで、『ホールドが持てると言う事はどう言うことか』と、言う話に戻ってきます。
つまり安定して押さえる、握ぎるためには、前提で『引っ掛けられる』事が前提となります。

では、前回お話した『3Dで考える』と言う事を思い出してください。
ホールドが壁についている以上は、凹凸があり引っかかる場所があります。
そこにどのようにアプローチをかけるかと言う事になります。
まず、前提として指先から第二関節を引っ掛けるようしてホールドを持つ必要があるので、握りつぶすイメージは一旦捨ててしまいましょう。
その代わりに、S字フックや、荷物掛けのフックの先のようにして持つイメージにチェンジしていきましょう。
重要なのは、『最初からできる必要はない』と、言う事はしっかりと覚えておいてください。
慣れていないと、このイメージで登ることは相当にしんどい事です。
(これは、クライミング用語で言う『オープンハンド』『アーケ』『タンデュ』と言う持ち方になります。)
なぜかと言うと、『安定する方向に力が加えれらないと、掛からない』からです。
図をご覧ください。



垂壁でなおかつ、ホールドが素直に上を向いている場合は、引っ掛けて真下に荷重を掛ければ安定するので持てるのは当然、皆さん理解頂けると思います。
では、単純にこれが真逆の下向きになって居る場合は、どうやって安定させましょう。
右に傾いて居る場合は、左に向いている場合、様々な向きで持たさせられる事にあなります。
ここで重要なのは、『持てる角度はある程度決まっている』と、言う事を頭と体で理解する事が重要になってきます。

フックの類は、基本的に引っかかる場所が地面に対して水平になっている状態が、一番安定するのは、想像しやすいと思います。
では、フックの接地角を2Dで検討してみましょう。
真っ直ぐの棒に対して、そのまま下にぶらがって居る事を考えると垂直になるのは必然です。
つまりは、ホールドにアプローチをかける際に、一番安定する力の掛け方は『ホールドに対して垂直に力が加わる』と言うことが一番良い条件になります。
つまりは、斜めについているホールドであっても、『引っ掛ける面』に対して垂直に力が加われば必然的に『安定している』状態にはできると、言う事になります。
これはあくまでも、理想的な力の掛かり方になるので、許容範囲が存在します。
それは、ホールドの形状、壁の傾斜の角度にも大きく左右される事になるので、自身で体感して頂くのが一番かと思います。

では、ここで一つ疑問が生まれると思います。
『片手だけできても、もう片方はどうすれば良いのか』

簡潔にお答えします。
『何故両手を安定させる必要があるんでしょうか。』
おそらく理解に苦しむ方が多いと思います。
体を支えるのに、手がなかったら体を支えて居られない。と、思われる方が大半だからです。
では、ここで一つ考えて下さい。
雲梯(ウンテイ)は、どうやって進んでいますか。
体の足で勢いをつけて、タイミングをみてどちらかの手を前に進行させます。
つまり『片手で1回耐えてます』よね。

『いや、雲梯は足が使えないから仕方ない』

では、足がついて居る壁で片手で耐えれないのは何故でしょうか。
そうです。自分のホールドへのアプローチ方向が間違った方向のままだから安定するイメージができないんです。
ここまでは『持てる』についてフォーカスしました。
持つより重要なのは、脚で体の位置を調節できるように、『乗れる』ことの方がよほど重要になってきます。
次は、『乗る』と言うことについて考えていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?