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弱点と向き合う。2022.10.01 セレッソ大阪vs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
セレッソはSB、湘南はアンカーが空く

■試合展開

 試合開始直後はお互いにボールを握って穴を探る静かな展開。セレッソは両SB、湘南はアンカーの茨田がプレッシングを受けづらく時間的余裕を持ってボールを持てたため、そこから組み立てがスタート。互いにシュートまではいけないものの、ペナルティエリア近辺までは運べていた。
 前半途中からセレッソは立ち位置を調整。保持では鈴木がアンカーの位置に降り、上門と奥埜がIHを担当して4-3-3に。狙いは茨田の両脇スペースと非保持時のマーク。保持の狙いはそこまで大きくハマったようには感じられなかったが、茨田を監視された湘南は外回りでのビルドアップかDFラインから直接IHに付ける形に切り替えることになる。得意の左サイドで前進を狙いたかったところ、この試合の中野は不調。対面の松田にほぼ完璧に抑えられてしまった。反対の右サイドからは斜めに入れるボールでアタッキングサードに侵入出来るものの、フィジカルに劣る2トップでは簡単に潰されてしまい決定機には至らない。一方セレッソは早いタイミングで入れる裏へのボールに勝機を見出す。松田から裏に走る上門へのシンプルなボールで前半のうちに数回好機を作り出していた。

セレッソの立ち位置変更

 前半で掴んだ攻撃の糸口を得点に繋げるべく、セレッソは選手を2枚変え。裏抜けをタガートが担当し、上門に代わって入った北野はアンカー脇の狭いスペースとタガートがDFラインを引っ張って空いたバイタルエリアに入り込む役割。為田に代わったパトリッキは推進力をいかしてサイド奥深くへの侵入と右サイドからのクロスに対するターゲットを担っていた。丁寧に繋ぐよりも裏に早いタイミングでボールを入れるセレッソの試みに対し、湘南は跳ね返せればポジトラでカウンターにつなげられるが、うまくキープされると決定機、もしくは押し込まれる展開に。それでも各局面のデュエルで勝利して凌ぎ切り、0-0の状態で町野を投入出来た点はおそらくゲームプラン通りで上出来。町野は日本代表で刺激を得たのか、ボールを受けてからゴールに向かうプレーが明らかに増えていた印象。中断前であればパスしていたシーンでも自らターンしてシュート、ゴール前にクロスなど積極的なプレーを見せていた。阿部がやるような相手CB-SB間で受ける意識が高く、チームのやり方を個人の力でブラッシュアップさせる意識があったのだろう。
 シュートには至らなかったがトレーニングの成果が見えてよかったシーンをひとつ。57分、湘南の攻撃。中野・杉岡・平岡の3人で左サイドを前進。松田の裏をヨニッチがケアしに出てきたため鳥海との両CB間が広がったところ、阿部がスペースに走り込んでチャンスメイク。ペナ角を取った平岡のパスが通れば決定機だった。湘南の得点機会はほとんどこのパターンなので通したかったところだが、阿部の動きに反応できる選手が多くなってきたのは残り試合に向けて好材料である。
 両チームとも決定機を迎えるも決めきれないまま最終盤を迎える。山本がPKを与えたシーンは軽率だったとも言えるが、カウンターを狙うために味方に繋ごうとした意図も汲める。結果的に勝ち点1を出来たのでよしとするが、残り試合で繰り返さないことを祈りたい。試合展開としては判定負けくらいの様相だったので、今年3戦全敗の相手にアウェイで勝ち点1はポジティブに捉えよう。

湘南が構造的に防ぎづらいシーン

■湘南の泣き所と残りの対戦相手

 この試合や過去の試合でも触れてきた通り、湘南の守備戦術=2トップ+IHのプレッシングと中央封鎖においては、サイド深い位置にいる相手選手が構造上どうしても空いてしまう。今節で言えば山中、松田の両SBがそれにあたる。ここに展開力やキック精度に長けた選手と裏抜けとキープが得意なFWがいると、浅いラインの裏を簡単に突かれて失点しまう。(Ex.ホーム札幌戦、福森と興梠)
この点に関しては5-3-2を採用して守る以上、残り4試合ですぐに改善出来るような性質ではないので、相手がどんな戦い方を選択するチームなのかを考慮して観戦するのが精神衛生上よいかと思われる。

■今後の対戦相手
第32節:FC東京 相性×
4バック。今年からスペイン式のパスを繋ぐサッカーにシフトしているが、上手くいかないときはアダイウトン・レアンドロ・オリベイラの3銃士を走らせる策も引き続きあり。ラフに裏へ何度も蹴られると非常につらい。

第27節:ヴィッセル神戸 相性△
4バック。明確なサッカーの形は不明。残留争い直接対決なので、割り切って放り込まれると非常に厄介。とくに酒井高徳が怖いがキックよりも推進力やフィジカルが長所のタイプなので幾分ましか。トップの大迫・武藤にはスピードとフィジカルがあるので恐怖。

第33節:サガン鳥栖 相性〇
可変式を採用した3バック。自分たちが保持する時間を長くしたい志向。保持時は中野伸也がサイドの高い位置を取るが、それならばアプローチ距離も短くなるのでケアしやすい。FWの垣田や宮代には手を焼くだろうが、一方的になぶられ続ける展開にはならないはず。

第34節:柏レイソル 相性〇
3バック。保持時のDFラインの立ち位置は湘南と似ており、通常の2トップ+IHのプレス形式で対応可能。

 残留ラインを勝ち点36に設定すると、6ポインターの神戸戦も含めて勝ち点4(1勝1分か4分)を最低取らなければならない。その大一番の神戸戦、相手との相性がイマイチなのが不安である。繋ぐサッカーを志向していたころであればやりやすかったものの、大迫・武藤の個人能力で何とかしようとするようなサッカーをされると些か厳しい。神戸に3ポイントを与えたくないので最悪ドローでもOK、鳥栖か柏のどちらかに勝つのを必須とした方が現実的かと思う(残り試合数を考えると肝が冷えるが)。FC東京が前線の強みをいかした現実的な戦略を取ってくると、残りの対戦相手の中では最も難しい試合になる可能性が高い。
 チームとしての下地は整ってきたものの、相性が悪い相手にはからっきしなのが現在の湘南。3試合続けて負けた相手に引き分けたことを前向きにとらえ、分が悪い勝負も負けない戦いを見せてほしい。

試合結果
J1リーグ第31節
セレッソ大阪 1-1 湘南ベルマーレ

得点者
'90+2 パトリッキ(PK)
'90+5 オウンゴール

主審
笠原 寛貴

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