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託された情熱を、落とさずにつないでく。 2024.08.11 町田ゼルビアvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。


開始時の立ち位置
各ポジションの噛み合わせ



■試合の振り返り

 湘南としては2017年のJ2以来、約7年ぶりの試合となった野津田でキックオフ。3日前の福岡戦からメンバー変更は2か所のみで、左CBが大野から出場停止明けの鈴木淳之介。FWは福田に代わってルキアンが入る。その他9人は引き続きのスターティングメンバーとなった。
 対する町田は数名のターンオーバーを実施。右SBは望月に代わって鈴木準、左SBはレンタル移籍の契約上出場不可の杉岡に代わって林。中盤センターは仙頭に代わって白崎が入る。谷と下田(と相馬)が古巣対戦。


 試合序盤から町田は整理してきた湘南対策を見せる。4-2-4のプレスで湘南の3バック+アンカーに対して圧力高めに制限をかけ、髙橋と淳之介に自由を与えない。
 湘南は面食らって繋げなかったのか、シンプルに裏を狙うシーンが多め。相手のDFラインが下がって陣形が間延びすれば手前が空くので、悪い手というわけでもないけれども。

 10分の町田。裏に抜け出した相馬がボックス内に侵入、右足に切り返してファーサイドにシュートを打つがクロスバー。あわやというシーンを作る。
 18分の湘南。左サイドで吉田が受け、切り返して右足のクロスにルキアンがヘッドで合わせた。こちらは谷がセーブする。
 35分、町田の攻撃。下田が左サイドの裏に蹴って相馬が走り込む。ワンタッチでゴール前にクロスを送ると、ファーサイドで合わせたのはオセフン。しかしVARのサポートにより、相馬の飛び出しがオフサイドとして得点とはならず。
 スコアレスのまま前半終了。お互いシュートの少ない展開で試合を折り返す。


 ハーフタイムでギアを巻きなおした町田のプレスを越えるように、高い位置を取った池田へのフィードでゲームが動き始める。林との競り合いを制した池田が収め、雄斗が前向きにパスを受ける。ルキアンも右サイドに流れ、町田が攻撃の核としている方のサイドを押し込もうとする格好。

 47分、湘南の攻撃。町田のクリアを池田が拾って右の雄斗に展開。雄斗のクロスは町田に阻まれて田中に下げる。フリーの田中は狭いところを通してボックス内で待つ池田へ絶妙なパス。ドレシェヴィッチを制しながら一歩前に出た池田が谷の逆をついてゴールに流し込み、湘南が先制する。
 町田からすると味方がクリアしたボールに対して前4枚が寄りすぎ、ボムグンや田中のキックのセカンドボールに対応できなかったのが原因だろう。というか湘南がそれを狙って長いボールを蹴っており、陣形を間延びさせて中盤がガラ空きになるシチュエーションを望んでいた。ドレシェヴィッチのヘディングが繋がらなかったミスというよりも、両SHの戻りが遅いことの方が問題な気がする。そういうことを怠らないチームだと思っていたが。


 54分、章斗のパスカットからショートカウンター。茨田から右に流れたルキアンへパス、深い位置までドリブルで抉ってクロスを送ると、合わせたのは再び茨田。シュートはヒットしなかったが、CB昌子を外に釣りだせていたシーン。
 59分に町田が3枚の選手交代。相馬とナサンホの両SHとDH下田が下がる。荒木が右、藤本が左で仙頭がそのままDHへ入る。
 64分に湘南も選手交代。章斗に代えて福田、茨田に代えて小野瀬を投入。ポジションは変えず人だけの入れ替え。後ろに人員をかけているため前線は単騎で圧力をかける必要が生じ、福田でそれを補おうとする。また右サイドに流れる役割もルキアンから福田へ移行していた。
 74分、町田はオセフンに代えてデュークを投入。77分、湘南は池田に代えて奥野、吉田に代えて大野を投入。高さ対策とともに運動量を補充する。左WBに小野瀬が移動し、IHは淳之介が担当。大野はいつも通り左CBへ。


 80分、湘南の攻撃。右サイドを雄斗と奥野のパス交換で突破。グラウンダーのクロスに淳之介が合わせるがシュートは枠の上へ。81分に町田が最後の交代。白崎に代えてエリキ。仙頭と荒木が中盤の真ん中、藤尾が右サイドに移動し、エリキとデュークが2トップを組んだ。
 85分に湘南も最後の交代。ルキアンに代わって根本が入る。試合終盤にかけて放り込んでくる町田の攻撃を凌ぎ切り、1点のリードを守った湘南が0-1で勝利。首位を相手にアウェイで勝ち点3をもぎ取った。


■対策を越えていけ

 キックオフ直後から打ち出された町田の湘南対策に苦しめられていたが、力負けせずにそれらを少しずつ乗り越えて自分達の時間と得意な展開を引き寄せた試合だった。

 初めは町田のプレッシング。4枚で3CBとアンカーを強めに抑えてくる町田に対して戸惑いがあったようで、目指す保持の形が出せない時間が続く。
 飲水タイムで状況の整理と意思疎通を行った湘南は、徐々にボールを持てる時間が増える。町田SHが前に出るため、その背後でフリーになっているWBを使って起点としていた。町田SHがそれを嫌がってポジションを下げればDFラインに余裕が生まれ、髙橋と淳之介が徐々に配球できる形に。WBの立ち位置とそれを使う意識の共有からCBの解放に成功。町田の前プレスを空転させ、自分たちが臨む展開が実現できる盤面に持ち込んでいく。

町田4枚のプレスに押し負けていた試合序盤。
WBがSHの背後で受けて起点を作り町田の狙いを外していく。
IHがSBに近寄ってWBをフリーにした。
湘南CB/WBと町田SHで2vs1を作り、ボールを前に進める。
起点になるWBの位置までSHが下がるため、DFラインへの圧力が低下。
CBからゲームを作るための望んだ盤面を作った。

 無為にボールを失ってしまう序盤の時間帯もあったものの、意思疎通を図って立ち位置で相手の位置を動かすことに成功。前半のうちにボール保持の時間を持てるようになったため、町田の攻撃時間と回数を削っていた。保持からそのままゴールに迫るシーンは少なかったが、湘南自身の体力温存と町田からボールを取り上げることに繋がった。


■対策を越えていけ その2

 町田が用意してきた攻撃の形は左サイドへの執拗なアタック。相馬の抜け出しやドリブルを活かすだけでなくナサンホが右サイドから出張してきたりと、純粋なCBでない髙橋の背後を狙っていた。FWの高さを使ったシーンは少なく、ポストプレーで落として前向きの選手を作ってタイミングを合わせ裏抜けを使う形が多かった。
 前半のうちに失点してしまったら危ういところではあったが、前述のボール保持時間の確保と個々の頑張りによって無失点でロッカールームに戻れたのが大きかったはず。

町田の湘南攻略ルート。
左サイドの低い位置からシンプルに人とボールを送ってきていた。


 町田の左サイドアタックに対する修正として、後半から池田と雄斗の位置を下げて髙橋が内側に絞る。スペースを消しながら髙橋が1vs1を戦うシチュエーション自体を避け、複数人で対応できるように変更した。その代わりとして、町田のバックラインがボールを持つことは許容。両IHはアンカーと横並びになって5-3-2の形。後半の早い時間にリードを奪えたのもあり、横スライドを集中して行ってパスが出た先でふたをすれば良いという考えが表れていた。
 また町田はボールを握ると左SB林がWG化し、3-2-5的な立ち位置に。ルキアンの右サイド流れは町田の変化によって空くスペースの利用と、雄斗の位置を下げたことによる補完の両方を可能にしていた。
 町田がバックラインから繋いで湘南の守備陣を引き釣り出すような試みがあればわからなかっただろうが、一貫してフィードとドリブル中心のアタックだったため人海戦術で対応できていた。

ハーフタイムでの修正。
前から抑えにいくのではなく、スペースを消して対応した。

 カウンターでの一刺しを見せながら時間を使い、最後は根性で守ってクリーンシート達成。前節追いつかれた悔しさをすぐさまピッチで表現し、最後まで集中した戦いを見せてくれた。


 色んな意味で話題になりがちな町田を相手に1勝1分。言われているほどの荒さは感じなかったが、他チームとの対戦時は違うのだろうか。前節やられたホールディングからの引き倒しの方がダーティだった気がする。

 6戦負けなしで好調をキープ。残留圏内を越えて中位、さらにその上の一桁順位に向け、湘南の侵略開始だ。


試合結果
J1リーグ第26節
町田ゼルビア 0-1 湘南ベルマーレ

町田:なし
湘南:池田(48')

主審 上田 益也



タイトル引用
『パワフルプロ野球2024-2025』オープニングムービー/RELAY

にじさんじ甲子園2024出場校、銀河立 (ギャラクシりつ) 超(ちょう) チャイカ高校野球部の面々が歌った楽曲より引用。リーグ全敗が予想された中、見事アップセットを起こした姿がこの試合の湘南と重なったため。これまでの積み重ねと、味方へのパスと、応援する人たちの声がつながる。

ギャラクシーッ!!




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