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小さな一歩。 2023.04.23 名古屋グランパスvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ

■突き付けられた課題

 晴天の豊田スタジアムでキックオフ。湘南はウォーミングアップ中のアクシデントで小野瀬が急遽メンバー外に。当初はFWに入る予定だったタリクがIH、小野瀬に代わって阿部がFWに入った。一方の名古屋は前節川崎戦からメンバー変更なしで臨む。
 カウンターアタックに鋭さを持つ名古屋は、湘南にボールを持たせて自陣に引き込もうとする。中盤で引っ掛けてボールを奪い、少ない手数で強力な前線3枚に渡して湘南ゴールに迫るのが狙い。名古屋の前線がボールを奪いに来ない分、湘南のDFラインはフリーな形でボールを保持するが、パスの出しどころがない状態になってしまう。寄せてくる相手をかわして前進する場面は今シーズン何度か見られたが、構えて待つ相手を崩すにはまだまだ至らない点が多かった。
 構えて動かないのであればドリブルで正対して相手を引き付けるなど、ボールを持っているDFラインの選手がアクションをかけて守備陣形を揺さぶっていく作業を繰り返すのが理想的だが、杉岡・大岩・舘は安全圏から後ろ向きの味方選手に預けることに終始した。この点に関しては山口監督も試合後に語っている通り、明確な課題として彼らに突き付けられたものである。今後の成長に期待したい。

前半は少しビビっているようにも感じましたし、攻撃のところでも相手が取りに来てくれない分、何をしていいのか分からないというのが明確ではなかったと思います。
それは僕の問題として次にやっていかないといけないことかなと思います。

監督コメント 山口監督総括より引用 サイト:https://www.bellmare.co.jp/2023_j1_9_nagoya

 ボールホルダーが相手守備陣を引き付けられない分、周囲がパスコースを作ろうとランニングをかける。その結果チームのバランスが崩れてしまい、名古屋がカウンターで使うためのスペースを提供する形になってしまった。幾度とない決定機をボムグンが阻むものの、41分には決壊。ユンカーのシュートのこぼれ球を森下に決められてしまった。
 失点の数分前にはタリクがハムストリングの負傷で山田に交代。主力2名の途中離脱、上位相手のアウェイゲーム、その上リードを奪われるなど極めて苦しい状況で前半を折り返す。

前半の悪循環の図
名古屋に思い通りのサッカーをさせてしまった

■かつての仲間を引き付けて

 後半も開始早々のコーナーキックから失点。デザインされたセットプレーに対応できず、2点差とされる。巻き返しを図ろうしたところ出鼻をくじかれる形になったが、後半に入るとDFラインのボールの持ち方と中盤~前線の動きは修正が見られた。2点リードで余裕が出来た名古屋の前線3枚が湘南のボールホルダーをさらに放置するようになった面もあり、ドリブルで持ち上がるシーンが増える。また中盤~前線が必要以上に動きすぎず2ボランチの間、とくに米本の横で受けて引き付け、中央にスペースを作ることに成功。56分のゴールシーンは、スローインを受けた町野と奥野のパス交換で名古屋守備陣5人を引き付け、空いた中央のスペースから舘が左サイドに展開。クロスのこぼれ球を再度拾って山田の巧みなフェイントから得点を奪った。
 1点を返してからは湘南がペースを握り始める。時間経過による運動量低下もあり名古屋の第一プレッシングラインを容易に越えられるようになったため、相手を自陣に押し込めるシーンが増える。ボールを奪われた際にも起点になろうとするユンカーを複数人で潰し、カウンターの芽を摘んだ。
 73~80分の間には主審・VARの珍しい判定があり、最終的に湘南がPKを獲得。町野のゴールで同点に追いつく。ここでは判定の是非については触れないが、あの状況下でしっかりと決めきった町野の胆力には感服した。
 その後試合はオープンになって互いにゴール前まで攻め込みつつも、得点には至らず試合終了。勝ち点1を分け合う形になった。

■勝ち点1を3にする方法

 主力2名の途中離脱、上位相手のアウェイゲーム、2点のリードを奪われた状況からの勝ち点1は十分評価に値する。ここからさらに上を目指すには、名古屋の術中にはまった前半のような展開を引き起こさないことだろう。それに必要なのは監督も話している通り、DFラインの保持スキル向上だ。後半には若干の改善が見られていたことから、今後もチャレンジしていくはずである。
 現代サッカーの階段を一つずつ上ろうとしている様子が見て取れ、このチームの成長を見るのが楽しくてたまらない。


試合結果
J1リーグ第9節
名古屋グランパス 2-2 湘南ベルマーレ

名古屋:森下(41')、中谷(50')
湘南:山田(56')、町野(80')


主審
岡部 拓人

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