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地力の高さと経験値。 2023.03.04 川崎フロンターレvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ

■思いのほかハマったプレッシング

 晴天に恵まれた等々力でキックオフ。試合は互いのスタイルがよくわかる盤面からスタートする。GKから繋ぐ川崎と前から規制をかけようとする湘南の構図は昨シーズン同様。しかしながら、CBやSBのところで捕まってしまう川崎はらしくないなという印象だった。とくにソンリョンから大南のパスはその後の選択肢がまるでなく、一度は小野瀬がそのままカットして決定機。小野瀬の裏に大島が降りたり、空いた中盤に浮き球を落としてプレスを空転させたりといったような運び方は一切見られなかった。
 そのうちGKを含めたビルドアップから、DF3枚+一列上がった山根と中盤のビルドアップに変更。それでも大外に立って湘南のプレス要員に長い距離を走らせるパターンは少なかったため、前半半ばごろまで湘南のペースで試合が進む。

試合開始早々のプレッシング

■川崎の解決策

 川崎が解決策を見つけ始めたのは前半のうち。14分、ジェジエウから斜めのボールを入れて宮代を裏に走らせる。その直後には降りてきた家長がワンタッチで中央に浮き球を入れてセカンドボールを奪取。25分、佐々木が大外から一人で持ち運んで前進に成功。中央に集まって崩すより、SBが幅を取ってプレス隊を引き付けて全体を間延びさせる方が効果的とわかるシーンがいくつも出てくる。そして38分には開いた山根から大島に斜めのボールが入り、宮代とのコンビネーションから決定機。試合中に構造的な都合からプレスをかけられにくい立ち位置を見つけ、そこから的確に急所を突くボールを入れてくるあたり、やはり経験値と技術が高いチームと思い知らされた。

追い込まれる前に斜めのパスを通して
DFラインを押し下げる狙い。

 湘南は前半終了間際に大橋が負傷して平岡に交代。川崎は後半頭から4-2-3-1にポジションを変更、大島と橘田の2ボランチ・家長のトップ下、瀬川が右WGに入った。SBは幅を取り、宮代が受けてセカンドボールを家長・橘田が刈り取り、空いたスペースで大島が展開して湘南を押し込んでいく。外と中央のどちらにも収めどころを作る狙いと思われる。
 一方の湘南は押し込まれても足下の繋ぎで陣地回復に成功し、前節の課題を克服するポジティブな面が見られた。とくに永木はパス回し以外だけでなく得点に繋がるボール奪取など、昨シーズンの茨田とは異なる自身のよさを発揮していた。

■些細な、しかし痛恨のミス

 湘南が先制した後、同点を目指す川崎は3-4-2-1に変更。後ろの枚数を削って前線を増やす形とした。湘南は古巣対決となる阿部・中野を投入。度々川崎DFの裏を取れるシーンもあったため、守り切るよりも2点差を目指す判断だろう。
 81分に川崎が同点ゴール。結果的には杉岡のディフレクションが瀬川の下にこぼれてしまったことによるが、佐々木から大島にクリーンな形でパスを許してしまったことに原因があるとみている。本来であれば2トップ+1IHが消しておくべきパスコースで、仮に大島が受けてもフリーで前を向かせてはいけないはず。このシーンでは町野・平岡・阿部の3人ともボールウォッチャーになっており、ほんの数mの寄せを怠った結果代償として勝ち点2を落とすことになった。アウェイ・川崎戦であれば勝ち点1でも十分かもしれないが、十分防げたはずの失点であることは胸に留めておく必要がある。

フリーで前を向いた大島には複数の選択肢があり、
中盤を突破するのは造作もなかった。

 大島から瀬川に入った瞬間、舘がより厳しくチャージできていれば失点はしなかった可能性もあるが、この時彼はすでにイエロー1枚もらっていたのが痛かった。試合を通じてマルシーニョと競り合いを演じていた舘がカードをもらうのは致し方なく、また試合時間が10分以上ある場面でCBを交代するのも監督からしたら難しい。いずれにしても川崎がじわじわと巻き返して作り出した状況から得点が生まれており、地力の高さでしてやられたと言わざるを得ない。

試合結果
J1リーグ第3節
川崎フロンターレ 1-1 湘南ベルマーレ

得点者
川崎:瀬川(81')
湘南:平岡(64')


主審
荒木 友輔


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