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出来たところも見てあげて。 2023.8.25 湘南ベルマーレvs浦和レッズ マッチレビュー

開始時の立ち位置と噛み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの噛み合わせ

▫️右へ左へ

 海沿いでは花火大会が開催された平塚でキックオフ。湘南は出場停止の小野瀬に代わって池田が久しぶりの公式戦、ソンボムグン(試合翌日に負傷離脱と発表)に代わって富居が出場。2トップは大橋とタリクが組む形。対する浦和は週中にACLプレーオフを戦って中二日の試合。出場停止のホイブラーテンに代わって岩波がスターターに入る。西川・酒井・伊藤・大久保は前節名古屋戦、ACLプレーオフと合わせて3戦連続スタメンとなった。

 試合はボールを握る浦和とプレスをかける湘南という見慣れた構図。湘南の2トップはいつも通り相手のDHを消しながらボールホルダーのCBへプレス。誘導する方向が決まったら各ポジションが横スライドでパスコースを塞ぎ、ボール奪取を狙う。
 この時IHはSBへプレッシャーをかける役割になるが、猪突猛進で飛び込むと中央を使われる(前回対戦時に山田が酒井に飛び込み伊藤にパスを通されて失点の原因となってしまった)ため、WBと協力しながら距離を詰めていくバランス感覚と走力が必要になる。5ヶ月ぶりの公式戦出場となった池田だが、タリクに指示を出しながら自身の身体の向きとスピードで畑と岡本にプレー意思を伝えており、周囲とよく繋がって守備に参加出来ていた。ボール扱いは元々信頼に足る選手のため、守備にも不安がないのであればリーグ最終盤に向けて心強い選手が帰ってきたと言えるだろう。

各ポジションの役割
右サイドへスライド
左サイドへスライド

 ボールを握る浦和は試合序盤、右サイドに入る酒井のフィジカルと大久保のドリブルを起点にしようとする。対する湘南は杉岡・平岡・大野の左サイドユニットでマークを受け渡しながら対応。ここでボールを奪い取り、高い位置を取った酒井の裏に空いたスペースを狙おうとする魂胆が見える。

湘南が狙う攻撃の形

 前半5分、早速狙った攻撃が表現される。杉岡がボールを受けたところ、酒井がプレッシャー。平岡が斜めに走りショルツを引き連れながら狙ったスペースでボールを受けると、再び杉岡がボールを引き取ってクロス。ボールはタリクに渡る寸前で明本にクリアされてしまうが、チームの狙いが最も具現化されたシーンであり、ここで仕留められなかったのが後々尾を引くことになる。守備の要であるショルツをゴール前から引き剥がしたのはこの場面だけ(もっともこのプレーを受けて彼自身が個人で修正、あるいは監督からの指示があったのかもしれないが)で、以降はリーグ屈指のDFを乗り越えなければシュートもまともに打てなかった。


 前半20分ごろまでは浦和のビルドアップを左サイドで引っ掛けてショートカウンターに繰り返し繋げていた湘南。監督の試合後インタビューでも話している通り、狙いのスペース(ポケット)まで入り込んだらニアサイドで屈強なCBよりも先にボールを触ってゴールを陥れようという意識を共有していた。

相手陣でプレーする時間が長く、サイドのポケットを取れてもボールをはね返されるシーンが多かった。フィニッシュにつなげるまでに何が必要だったか?

理想としてはそこを取ることで、高い選手がいるので、クロスは低いボールを入れて、事故を含めて奪いにいくというプランはありました。そこから揺さぶりのところで、同サイドで崩してプラスα、逆サイドの選手を使えるようになりたいのですが。
今日強調したのはポケットを取りにいって、相手が堅いことは分かっている中で、低く速いボールを入れて、そこに飛び込んでいこうということを求めていました。その中でハーフタイムに揺さぶりのことを伝えて、そういうところができれば一番良いですけど、点を取るというのはそういうことだと思うので、それをもっともっと引き出してあげられるようなトレーニングをしないといけないなと思います。

2023明治安田生命J1リーグ第25節 vs 浦和レッズ
山口監督 質疑応答
https://www.bellmare.co.jp/2023_j1_25_urawa


 堅いDFを相手にニアサイドで先に触る狙い自体は的確だろう。しかしそれ一辺倒になってしまうと、相手からすると対応は難しくない。直線的な動きでゴール前に入る湘南FWに対し、浦和DF陣は先読みしたポジショニングでクロスを跳ね返し続けた。


 交代選手を入れた後半、湘南は左右の揺さぶりを実行に移す。最もわかりやすい形で表現されたのは奥野とレレが投入された後、65分のシーン。右からのサイドチェンジを受けた杉岡がペナルティエリア手前からファーサイドへクロス、明本の背後を取った奥野がヘディングで折り返す。これまでであればニアサイドにボールが入るところ、ファーへ飛んだボールに浦和DF陣は一瞬ボールウォッチャーになった。
 ショルツはマークであるレレから目を離し、岩波は戻りきれずにボールを目で追っている。ゴール前で素早く左右にボールを動かされれば、DFは正しいポジションを取るのは難しい。フリーになったレレはボールの落下点まで向かうが、惜しくも先に西川がキャッチ。奥野のヘディングがもう少し遠くまで飛べば得点になった可能性が高かったが、ベンチから指示された形をピッチ上で表現できた二人は、交代選手としての役割をある程度果たせたと言えるだろう。また杉岡の状況判断も的確だったことも付け加えておく。


 ゴールに迫る形は見せられた湘南。しかし最後のクオリティが足りずに得点を上げることは叶わなかった。後はとにかく試行回数を増やすか、高いクオリティを発揮できるシチュエーションをつくっていくしかない。

浦和DFの予想を裏切り、ファーサイドに飛んだクロス
奥野が折り返し、浦和DFを左右に揺さぶる


▫️反対の矢印で裏返す

 続いて浦和が取った湘南への対応について見てみよう。前半の飲水タイムごろまでは湘南のプレスに捕まっていたが、安易にボールを縦につけることをやめてからは流れを掴み始める。中二日で戦う選手の疲れも含め、湘南が望むトランジション多めな展開には持ち込ませないのが主な目的だろう。


 後ろからのビルドアップで湘南のプレスを剥がして前進するシーンは少なかったが、長いボールを使って決定機を創出。湘南が左サイドにスライドしていく場面、岩波が自身の高いフィード能力を使って対角へロングパス。湘南の陣形が動く方向と逆に向かってボールを動かし、湘南に短時間で複数回のスライドを強いる。
 37分、岩波からDFラインの裏をとった明本へ通してこの試合1番の得点機会を迎えるが、シュートは枠の外へ。このシーン以外にも湘南の横スライドを引っくり返すようにボールを動かし、スライドが間に合わない逆サイドで1vs2の状況を生み出すことで湘南のプレスを空転させ、攻撃機会を増やしていった。

湘南のプレスを空転させる対角のパス

 湘南が攻撃を仕掛ける回数を減らして主導権を奪い取った浦和は、62分にホセ カンテのスーパーゴールで先制に成功する。リードしてリスクを犯す必要がなくなり、安定した守備とボール回しで湘南の得意なシチュエーションを作らせない。試合はそのまま0−1で終了した。

▫️足りない初速

 湘南としてはこの試合、前半の開始直後はペースを握れていた。振り返ってみればG大阪戦や新潟戦でも同様で、新潟戦は2点リードを奪うことが出来た。おそらく試合の入りで見せられる強度が高いため、相手が面食らっているうちにチャンスを作ることが出来るのだろう。とはいえ20分も経てば慣れて対応されてしまうのだが。
 現状先行逃げ切り(1点で逃げ切れるのか…???)しか望めないチームであるため、前半の早いうちに試合の大勢を決めてしまうか、0−0で耐えてスーパーゴールが決まるのを祈る他ない。この試合でも前半5分の決定機を決めていれば違った展開も望めた可能性もあり、開始直後に120%のクオリティを見せて欲しい。

 もしかしたら我々サポーターの声援もチームに合わせて、現在の試合終盤に掛けて盛り上がっていくスタイルから、開始直後にフルスロットルで行くスタイルに切り替えていくべきかもしれない。
 というのは冗談として、間抜けだとしてもできることは全部やろう。斜に構えて見限ったフリをしても、後には何も残らない。


試合結果
J1リーグ第25節
湘南ベルマーレ 0-1 浦和レッズ


湘南:なし
浦和:ホセ カンテ(62’)

主審 飯田 淳平

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