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煽れば尊し楽し、笑えば尚良し嬉し。 2024.03.02 京都サンガvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と噛み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ

■試合の振り返り

 粉雪が舞い散る京都でキックオフ。ともに開幕節で勝利を挙げられなかった両チーム、先週からスターティングメンバーの変更はなし。たくさんいた湘南OBも試合で見られるのはかなり少なくなり、この試合では金子とスイス帰りの冬一、ベンチの山﨑のみ。それでも3人いれば多い方か。前節の柏戦、アディショナルタイムに同点ゴールを挙げた高卒ルーキーの安齋もベンチに控えている。
 湘南で今シーズン初のベンチ入りを果たしたのは大野と福田。コンディション面だけでなく、試合終盤のデュエルと走り合いを想定した人選だろうか。


 試合序盤はボールが落ち着かない展開。高い位置からのプレスとそれを避けたロングフィード、中盤での激しい奪い合いからのカウンターが見られた。7分、ロングフィードを収めて押し込んだ湘南、杉岡が上げたファーへのクロスは距離が足りずに冬一がカット。そのまま湘南陣内までドリブルで50m近く運んでトゥーリオへ斜めのパス。一度は防ぐものの再び拾われ、上がっていた福田がフリーで右足を振り抜くがシュートは富居がセーブした。

 15分、杉岡のコーナーキックをクソンユンがパンチングで弾くと、こぼれ球の先には田中。開幕戦の池田と同じような形から左足でボールの落ち際をミートすると、バウンドしたボールはサイドネットに吸い込まれた。2試合連続で湘南が先制する。

 先行された京都は前への圧力を高め、3トップへのシンプルなフィード量が増加。原やトゥーリオがクリーンに収められていたわけではないのだが、大岩の中途半端なクリアと田中のクリアミスが続いたところから豊川の振り向きざまのシュート。タイミングをずらしたシュートは富居の手をかすめてポストの内側を叩きゴールイン。19分、すぐさま京都が同点に追いつく。
 その後は互いにダイレクトでゴールに向かう展開に。ルキアンと鈴木章斗がそれぞれ決定機を迎えるが、枠を逸れたり芯を捉えずクソンユンのセーブに遭う。チャンスを逃したことは褒められないが、2トップは精力的に動いてチャンスを創出。とくに章斗はゴール前の仕事だけでなく、CBとの駆け引きで先手を取ったポストプレーから池田のチャンスを演出するなど、万能型ストライカーの片鱗を見せてくれた。右サイドを中心に京都陣内に押し込む時間も作ったものの、1-1のまま前半終了。


 後半開始早々の48分、前半は高い位置を取れなかった杉岡がようやくアタッキングサードで前を向いてクロス。ルキアンには合わなかったが、存在感が薄かった左サイドからも攻撃を見せた。直後の50分にはルキアンと章斗の2トップで京都守備陣を攻略。再び迎えた決定機はまたもクソンユンに防がれる。
 京都は68分にコーナーキックからニアで原が合わせてゴールかと思われたが、川崎が富居の動きを阻害した判定で得点は認められず。仮に川崎がいなかったとしても決められていた可能性が高いシーンだったが、最後までプレーを行う姿を見せた富居の姿勢がレフェリーに好印象だったのだろうか。続く69分、原の突破からニアへの左足も富居がストップ。試合の均衡を両GKが保ち続けた。
 そして迎えた82分。杉岡のコーナーキックを大岩がアウトサイド~ヒール気味にニアサイドでフリック。そういうのは阿部や小野瀬がやるものかと思ってた。誰もが虚を突かれたボールはファーで待っていた章斗のもとへ。落ち着いて左足で蹴り込み、再び湘南がリードを奪った。

 1点を追う京都は、柏戦の再現を狙って安齋を投入、4-2-4気味にして攻撃にシフトチェンジ。湘南も大野を投入して5バックへ移行、福田を投入して運動量とギラギラ感を補充して逃げ切り体勢に入る。アディショナルタイムに川崎が放ったシュートは枠を捉えず、タイムアップの笛。湘南が2節にして今シーズン初勝利を掴んだ。


■密集≠圧力

 試合を通じて両チームの拙さを感じるシーンが見られた。湘南でいえばボールを追い込む認識のズレやDFラインを越えようとするボールの処理。京都でいえばボールに対する中盤のポジショニングとその圧力。湘南のそれは豊川のゴールとして咎められ、京都のそれは章斗や池田の決定機に繋がった。早いタイミングでフィードを入れてくる京都の手法を前に、湘南は守備陣形の整備ができず手を焼いていたのかもしれない。
 この試合で湘南の攻撃がよく見えたのは京都の特徴的な3センターの立ち位置にも理由があると思われる。11分、左サイドからの湘南のスローイン。京都のほとんど選手がピッチの1/3に集結していた。おそらくチームの約束として密集してボールを刈り取り、近くの味方を経由して一気にカウンターを仕掛けるつもりだったのだろう。しかしながらこのシーンではスローインを受けた章斗を挟み込むわけでもなく、落としのパスを受けた田中もフリーで逆サイドへの展開に成功した。

京都の中盤、3枚が非常に近い距離で待ち構える
人はいるがボールへの圧力が弱いため
湘南は楽に逆サイドへ展開できた

 やりたい形の配置は見られたものの実行に移す方法の落とし込みがされていないのか、人が密集していても圧力はかかっていなかった。プレスをかわすというよりそもそもプレスをかけられていない場面が散見されたため、湘南のチャンスシーンを作れたのは相手の出来に起因するところが大きいのではないか。次の福岡戦でも同じように出来れば理想的かつ成長した、と言えるのだが。



■両サイド、差が生まれた理由は?

 この試合で活躍が見えたのは右サイド、とくに右SBの鈴木雄斗だ。23分にはタッチライン際から鈴木章斗の抜け出しに合わせて完璧なスルーパスをDFライン裏に通し、決まってもおかしくないシーンを演出。そのほかのシーンでも簡単に捌いて空いている味方を使ったり、逆サイドにまで顔を出してチャンスを作り出した。SHに入る池田との連携もよくなっているようで、内側・大外のポジションを上手く交換しながらサイドを攻略していた。
 彼らがいい動きをしていたのはその通りなのだが、京都の左サイドに問題があった点も踏まえておく必要がある。WGの原は緩慢なプレッシャーと気まぐれなプレスバック、反対にIHの武田はボールによく食い付いてスペースを生み出す。左SBの冬一も対面する池田への意識が強く、自身の背後を空けがちだった。それを一人でカバーしていたのがCBの麻田で、広大な裏のスペースケアとFWのマークの両方こなさなければならない損な役回りをしていた。

京都の左サイド守備


 一方であまりチャンスが作れなかった湘南の左サイド。とくに杉岡はゴールを呼んだコーナーキック以外は精彩を欠いていた印象で、開始早々の不用意なロストが後を引いたのだろうか。だが京都の右サイドが(左サイドに比べて)堅牢だった点もあり、WGの豊川は勤勉なプレスを見せ、IHの川崎は初期ポジションが低めでスペースを空けない。SBの福田の戻りも早いためCBアピアタウィアもカバーリングが容易だったはずだ。
 京都の脆い左サイドに対して湘南の右サイドが優位に立つのは昨シーズン10月の対戦時と同じ構図であり、シーズンを越しても問題が手付かずなのはよいのだろうかと思う次第である。(あの時一人ツケを払わされていた三竿がメンバーから外されていて気の毒な感じもする)

 杉岡に関してだが、ハーフタイムに調整があったのか後半から大外=杉岡、内側=平岡に分業した様子で、後半立ち上がりには大外に開いてから鋭いクロスを見せていた。4バックのSBだと輝きが減るのは鹿島時代からも見られていたので、自分より外側に味方がいるとプレー判断が鈍ってしまうのかもしれない。この試合の2ゴールとも彼のプレースキックをきっかけに生まれているわけで、オンプレー時の整理をつけて昨シーズンの輝きを取り戻してほしい。
 左サイドの二人で気になるのは守備時の切る方向。平岡は昨シーズンと同じく常に内側を切りながらボールホルダーへアプローチするが、ボールと味方の位置によっては縦を切って中へ通した方がボールを奪えたように思えるシーンが目についた。杉岡も同じく縦に行かせてしまっているシーンがあり、約束事の見直しを行ってほしいと思う。


 内容はまずまずでも勝ち点3を取り切れなかったのが昨年のチーム。今年のチームは、修正しながら勝ち点を積み上げる理想的なサイクルに乗れるだろうか。


 

試合結果
J1リーグ第2節
京都サンガ 1-2 湘南ベルマーレ

京都:豊川(19')
湘南:田中(15')、鈴木章(82')

主審 中村 太


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