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さらなる積み上げを。 2022.09.17 湘南ベルマーレvs浦和レッズ マッチレビュー

スタメンと嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
嚙み合わせ

■主導権を握り、チャンスを掴めなかった前半

 試合開始から、浦和はこれまでやってきたボール保持の形をそのまま繰り出す。湘南はそれに対してアンカーを消すいつものプレッシングで対抗。詳しい点はプレビューを見てもらえればと思うが、前半の浦和は湘南のプレッシングを上回る対応策を見つけることはできなかった。

湘南のプレス①
湘南のプレス②
裏を狙う浦和

 思った通りに繋げないので一気に裏へロングボールを蹴る場面が多い浦和。苦し紛れのボールであれば湘南が落ち着いて処理できるものの、プレッシングのサボりによって生じた隙をつかれると一転して大ピンチに。ウェリントンの出足が遅れ、タリクも間に合わない状況で酒井や岩波がフリーになるとDFラインの裏に高精度のボールが送り込まれる。失点しなかったのは谷の好プレーのおかげによるもの。
  攻撃においては両サイドの突破でチャンスを作る。石原は対面の馬渡にほぼ完勝し、右サイドから再三再四クロスを上げた。左サイドも中野のドリブルが光り、日本代表の酒井を相手に何度も突破を見せる。しかしゴール前の精度・質が相変わらず低く、得点を奪うまでには至らなかった。

■物足らない後半

 後半から浦和は馬渡に代えて大畑、伊藤に代えて岩尾を投入。岩尾は立ち位置を巧みに変えながらボール保持の打開策を提示。一列降りたり留まったり、2トップを困らせる立ち位置で2CBに時間と選択肢を与えた。後半にショルツが持ち運ぶシーンが増えたのは岩尾投入の効果によるものだろう。他にも酒井がインサイド、モーベルグがライン際に立ったり、ユンカーがボールを受けに一列降り、柴戸がそのボールを受けやすい近めのポジションを取ったりと、チームの基本形はそのままに若干の修正を加えた浦和がペースを握り始める。しかしながら人数とリスクをかけてこないため単発的な攻めに終始し、相手を押し込み続けるほどには至らない。プレッシングも全体が連動しているとは言い難く、湘南はボール保持で陣地を回復できていた。
 一方の湘南は前節清水戦と同じような選手交代を行う。選手を入れ替えて運動量と強度を維持。唯一、茨田と米本の交代によってボール循環のルートが変わって中央を経由しづらくなった点は残念だった。そして引き続き両サイド、後半は左サイドメインで崩しにかかる。阿部は相手のCB・SB(岩波・酒井)間のスペースでボールを受けるシーンが多く、そこからシュートやチャンスを作り出していた。繰り返し同じスペース狙っていたがチームメイトとの連携が取れていないところも散見されたので、中断期間での習熟に期待したい。(この点については後の項でも触れる)
 試合は最終盤にいろいろとあったものの、0-0で終了。xG(ゴール期待値)はどちらも1前後で、数字上では引き分けは妥当か。とはいえ湘南はシュート17本で無得点は寂しい。浦和も残留争いのチーム相手にこの試合内容では到底満足できるはずもなく、お互いに消化不良の試合だった。

■ゴール前の一工夫

 振り返ってみれば前半のうちに得点できていれば勝てていたのだろう、という試合。気になったのはクロスが上がる際のゴール前の入り方だ。右・左サイドにかかわらず、サイドを突破する前後でゴール前の選手は直線的に走り、各選手が個々で得点を奪おうとしているように見えた。J1でCBを担当するような選手は強さ高さ速さで一定以上のレベルを備えており、正対した状態で競り勝つのは難しい。その後ろにはGKも控えているわけで、FWが良い状態でシュートを打てなければゴールを奪える可能性は極めて低いと言わざるを得ない。瀬川はゴール前で繰り返し動きなおしてボールを受けていたが、角度が厳しい位置でしか受けられないためシュートコースがふさがれてしまっていた。シーズンを通して彼がゴール前斜め45度よりも外側で受け、シュートがニア枠外かGKのセーブ、CBのカバーに合うのを何度見たことか。

前半で見られたゴール前のシーン

 得点を奪うには、FWにいい態勢かつゴールに対して角度がない位置でシュートを打たせたい。そのために相手CBを混乱させてゴール前にスペースを空けることをチームとして狙っていく必要がある。以下の図は2トップがニアとファーにCBを引っ張り、空いたスペースにIHが飛び込んで合わせる形だ。J1のDF相手にこんなにシンプルな動きが通用するとは思えないが、直線的で単発的な入り込み方ではない例として受け取ってもらえるとありがたい。

ゴール前の例

2019年の横浜F・マリノスのように、サイド奥深くまでえぐってからマイナスのクロスといった得点パターンを構築できれば、選手が入れ替わってもチームの約束事として機能させられる。石原・中野といった両ウイングバックの活躍により、ある程度サイド攻撃が計算できるようになったので、次はゴール前の質が向上したところを見たいところである。
 もう一つ、今度はユニットの話になるが、阿部が浦和戦で繰り返し狙っていたが山田との連携が合わなかったシーンについて触れたい。CB・SB間でボールを受けた阿部はワンタッチで酒井の裏に展開するが、山田がそこに走っておらずつながらない。狙いとしては先に触れたクロスと同様、相手のCBを動かすところにある。SBのカバーに出てきたCBをかわせば、ゴール前には残り1枚のみ。シュート、FWへのクロス、マイナスのクロスなど選択肢を多く持った状態の決定機を作り出すことができる。少しばかり形は違うが、先日の川崎戦で阿部が奪ったゴールも同じ仕組みで谷口と車屋を動かしており、セレッソ大阪戦までの中断期間で彼の賢さをチームの連携に取り込んでほしい。

阿部が狙っている形

試合結果
J1リーグ第30節
湘南ベルマーレ 0-0 浦和レッズ

得点者
なし

主審
岡部 拓人

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