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掴めるかは僕ら次第。 2024.08.17 湘南ベルマーレvs柏レイソル マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ



■試合の振り返り

 台風一過の暑さの中で迎えた第27節、平塚でキックオフ。湘南は前節町田戦からメンバー変更なし。柏は3枚の変更あり。前節負傷交代となった関根に代わって片山が右SB、2CHは戸嶋に代わって鳥栖から加入の手塚が白井とコンビを組む。2トップは垣田に代わって小屋松が細谷と並ぶ。
 本筋とは関係ないが、この試合はDAZN中継の画角がほかのホームゲームよりも低かった。台風の影響でメインスタンド上部にカメラを設置できなかったのだろうか。

 前半は湘南のキックオフ。だがいきなり柏に奪われてDFラインの裏へスルーパスを通される。そのままグラウンダーのクロスを許し、あわや失点というシーンから試合が始まった。
 3分、茨田が左のポケットを受けて反転、DFをかわしてクロス。池田と雄斗のパス交換からファーストシュートにまでつなげた。湘南の3バックに対して柏は2トップとボールサイドのSHを押し出して同数を作り出す。圧力は淳之介よりも髙橋の方がキツそうで、細谷・小屋松・サヴィオが警戒している様子が見て取れた。淳之介に対しては右SHの山田が外=吉田へのパスコースを切って中央に誘導するような外切りプレスを見せていた。

 11分の柏、ショートコーナーからサヴィオのクロスにニアで合わせたのは犬飼。ゴール前で決定機を迎えているのは柏の方だ。
 13分、湘南の攻撃。淳之介が外を切ってアプローチに来た山田をかわして中央でスピードアップ。ボックス近くまで運んで吉田に渡し、ワンタッチでクロス。章斗が上手く走り込んで合わせるが、シュートはゴールポストの右。湘南も決定機を迎える。
 18分も左サイドから。茨田と吉田のワンツー、抜け出した吉田のクロスにルキアンのヘッド。シュートは枠の上。


 柏は飲水タイム明けくらいから山田の外切りプレスを中止。外に追い出してサイドで蓋をする形に。13分に見せた淳之介の剥がしが効いたのかもしれない。またCHの白井がアンカーをケアしてボールを高い位置で奪おうとする構えを見せる。それに対して湘南は、IHがSHの背後に立って牽制したり、IHを気にする柏SBの背後にフィードを送って状況を変えようと試みる。

 32分、何度も何度もじれずにやり直しながら柏の綻びを探し、淳之介から茨田は浮き球のパス。胸でルキアンへ渡して再び受けようとするがパスがズレたところを池田がカバー。右に展開して雄斗のクロスにルキアンがファーで合わせようと飛び込むが、片山によって阻まれた。
 35分、田中が柏陣内で白井からボールを奪ってショートカウンター。茨田がフリーで右足を振り抜くが、シュートは枠の外。
 41分の柏、右サイドのスローインからサイドの深い位置まで小屋松が抜け出してクロス、片山が走り込んでいたところを髙橋がスライディングでクリア。柏は久しぶりのチャンス。

 前半のアディショナルタイム、ルキアンが倒された得たゴール前やや右寄りのフリーキック。S級ライセンス取得のための研修で湘南に帯同している中村俊輔氏から直々にアドバイスを受けた吉田が直接ゴールを狙うが、コースは正面寄りでGKに防がれる。

 前半はスコアレスで終了。両チームともにハーフタイムでの交代はなし。


 53分、柏が先制する。降りてきた小屋松がフリーでDFラインからボールを引き出すと、田中の背後を取ったサヴィオへパス。サヴィオから自身のために出された絶妙なスルーパスを受けた細谷は、豪快にゴールへ蹴り込んだ。
 58分に追いかける湘南が選手交代。吉田に代えて小野瀬、茨田に代えて阿部が投入。負傷離脱していた阿部は復帰戦となる。人の移動はなく、交代選手はそのままのポジションに入った。

 64分、柏も選手交代。細谷に代えて木下、山田に代えて戸嶋が入る。こちらも人の入れ替えのみ。
 66分、続いて湘南も交代。章斗に代えて福田、池田に代えて奥野が投入される。小野瀬の交代から左サイドアタックの増加が顕著。ドリブル突破からクロス、マイナスのパスと吉田との違いを見せる。

 70分過ぎから柏が明確にリトリートの構え。中央を閉めて湘南にスペースを与えない。74分、柏の交代。手塚に代えて熊澤、小屋松に代えて垣田。


 76分、セットプレーの流れから柏が追加点。自陣深い位置に蹴られたフィードの処理が短くなったところを戸嶋に拾われ、マイナス気味のクロスに木下が合わせた。
 82分、湘南は最後の交代。高橋に代えて根本が投入。奥野が右CB、福田が右IHにズレて根本はFWに入った。


 後半アディショナルタイム、根本のキックがボックス内の犬飼の右手に当たったとしてVARのレコメンドが入る。清水主審のオンフィールドレビューを経てPKの判定に変更となった。キッカーの阿部は左下に蹴り込んで1点差とする。
 追い上げムードで最終盤を戦うが精度が伴わず相手ゴールへ迫れない湘南。1-2で終了笛を迎え、第21節京都戦以来の敗戦を喫した。次戦は水曜日に天皇杯4回戦(ベスト16)ガンバ戦を大阪で戦い、土曜日に第28節ホーム名古屋戦へと向かう。


■理にかなっていた柏のプレス設計

 この試合での柏はプレスをよく整理してきた印象で、とりわけ湘南3バックのどこを最もケアすれば自分たちに利があるか?から逆算して設計していたように感じた。当然ながら柏のキープレイヤーはサヴィオであり、同サイドの髙橋を封じるところに力を入れていた。サヴィオがいるサイドの高い位置でボールを奪えればすぐさま決定機を生み出せる力があるので、理にかなった策である。

 湘南としてもおそらく同サイド、サヴィオとジエゴの間が間延びする傾向にあることを利用する考えがあったはず。雄斗はジエゴのそばで高い位置を取り、池田がその開いたスペースをプレーエリアとして使おうとしていた。しかし髙橋が柏のプレスに圧倒されてボールを前に送れず、結果的に孤立して下げるか横に展開する選択が多かった。

柏のプレス設計(左)。
髙橋を狙いとして自由を与えず、効率よくゴールを奪うことから逆算されていた。
柏のプレス設計(右)
奪いたいサイドに誘導、あるいは網を張った中央に向かって
湘南のボールを誘導していた。

 序盤におけるプレスのかけ方からも柏の狙いが伺える。髙橋と淳之介では髙橋にかける圧力の方が強かったうえ、淳之介に対しては外を切って中央、または逆サイドへ誘導するようなプレスをかけていた。中央は2CHである白井と手塚、とくに右寄りの白井が途切れなく集中してスライドしており中央は通さないぞという構えもあった。
 開始当初はその狙いだったはずだが、淳之介が4分に見せたルキアンへのパス、13分に見せた運びだしが効いたのか柏はプラン変更。とりわけ13分のシーンは2CHの横スライドが間に合わないスピードでボールを回し、プレスの逆を取るドリブルで相手守備陣を慌てさせた良いプレーだった。
 飲水タイム明けにプラン変更した柏は、外切りを控えてWBへの展開は許容。中央に侵攻されるよりはサイドで持たれた方がマシという判断だろう。柏の中盤、とくに2CHは横スライドの回数と距離が増えて負担が大きかっただろうがよく走り切ったなという印象。とはいえ完璧に守り切れていたかというとそうでもなく、湘南が右で詰まってから左に展開した際は淳之介と茨田が自由を得る場面もいくつか。32分の淳之介から茨田にパスが通ったシーンはその顕著なシーンで、焦れずに穴を探し続けられたチームの成長かもしれない。


■物足りなかったポイント

・CBを基準としたときのサポートの位置。前半は準備してきたプランなのか雄斗の位置が高めだったが、髙橋が苦しんでいたので早めに位置を下げて欲しかったとも思う。淳之介と髙橋が先月チームを大きく飛躍させたが対策されるフェーズに入った今、今度は中盤から前の選手が彼らを助けるところを見たい。もちろんビルドアップが得意なGKの助けがあってもいい。

CBが捕まっているときのサポート、これまでは自然にできていたもの。
髙橋の力量だけでなく、周りの力でもスタイルを貫いてほしい。

・FWの顔出し。ボールホルダーであるCBやWBが中央を向いた際に降りてくるタイミングが少し遅く、選択肢になり切れていなかった。4分から5分にかけての場面、淳之介が山田をかわして列を降りてCHの背後を取ったルキアンへパスを通したシーン。受ける場所とタイミングはよかったが、その後のコントロールに難があったのは残念。

FWの顔出し。
このあたりは福田がタイミングと反転が上手だなという印象。

・相手のボールが動いた際のスライド。メンバー固定による疲労かもしれないが、ボールが移動した時の横スライドが遅く緩慢だった。この試合の柏と大きな違いがあり、勝負を分けたのはそこかなと思う。先制ゴールは20分のシーンの再現で、横パスにタイミングを合わせて降りる小屋松を捕まえきれなかった。もちろんポジションを動かしながら狭いスペースで正確なプレーを見せた小屋松とサヴィオ、ニア上を打ち抜いた細谷のクオリティもすごかった。


 久しぶりの敗戦となったが、何もできなかった試合ではない。ここからもう一段階強くなるための試練と捉えよう。


試合結果
J1リーグ第27節
湘南ベルマーレ 1 - 2 柏レイソル

湘南:阿部(90+9')
柏 :細谷(53')、木下(76')

主審 清水 勇人



タイトル引用:Mrs. GREEN APPLE feat. asmi/ブルーアンビエンス

初代柏レイソル担当ライバーの星川サラと、ベガルタ仙台の公式応援ソングを歌う緑仙がカバーした楽曲から引用。この一敗で何かが否定されたわけではないし、落ち込む必要もない。チームと選手たちはできたこと、できなかったことを整理するはずだから、サポーターもその目線に合わせた方が建設的かなと思う。

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