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晴れ空を目指す道を一歩ずつ踏みしめて。 2024.06.16 名古屋グランパスvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。




■試合の振り返り

 名古屋を通過した雷を伴う豪雨の影響で、約45分遅れてのキックオフ。ホームの名古屋は怪我人が相次いでいるようで、CFはユンカーやパトリックではなく山岸が務め、DHの椎橋はルヴァンカッププレーオフ~天皇杯も含めてフル稼働中。一方の湘南は天皇杯2回戦:甲南大戦の流れを汲んだメンバーとなっており、小野瀬が負傷から復帰して4月の横浜FM戦以来となる2か月ぶりリーグ出場。3バックの中央は舘が入り、今期初出場を果たした。平岡はコンディション不良か負傷なのかベンチからも外れ、阿部が左IHに入る。



 15分までは互いに大きなチャンスなし。ボールを持つ湘南と構える名古屋という構図。だが下からの繋ぎにこだわらず、プレスの頭を越すようなボールを選択するシーンが目立つ。
 16分、ハチャンレの運びをルキアンが止め、稲垣のクリアを拾った小野瀬が強烈なミドルシュート。ボールはクロスバーに弾かれる。

 裏抜けでDFラインを押し下げられる平岡が不在のため、いつもよりハーフスペースに向かって池田がランニングしている印象。雄斗も高さを取って対面する山中を押し下げて手前を空けるポジショニング。池田と雄斗が連動してスペースを作り、お互いで共有したり、髙橋に自由にしていた。

 21分、名古屋の両サイドにピン留めされて動けなくなったDFラインを尻目に、山岸が中盤のスペースに降りてフリーで起点に。右サイドの中山の裏抜けでチャンスになりかけるが大野が落ち着いて対応した。
 25分、吉田の運びを抑えきれずに永井へ斜めのパスを通され、ワンタッチで裏抜けした中山がボムグンと1vs1。かわして放ったシュートはギリギリで枠を逸れた。加えてオフサイドの判定。
 28分、セットプレーのセカンドボール争いを制した名古屋が山岸の抜け出しからネットを揺らしたがオフサイドの判定。
 33分、森島の抜け出しでDFラインが押し下げられ、ボックス角付近から吉田がフリーでクロス。難しいボールに合わせたのは永井。名古屋が先制する。

 湘南は舘から大野、そして小野瀬と阿部に渡して攻撃を始めようとしているが、時間もスペースも作れていない状況なので無理やり突っ込んで失っている状態。
 41分、左右にボールを動かしてから髙橋が持ち運び。フリーの田中の挙げたクロスに雄斗が頭で合わせてシュート。ボールはランゲラックの正面だが、相手を揺さぶってゴールに迫れたシーン。
 43分も同様の形。今度はスペースがある状態で小野瀬にボールを渡せていたので、彼のドリブルを発揮できた。


 両チームともにハーフタイムで交代なし。後半開始早々、森島に左サイド奥を取られて最後はボックス内で中山のシュート。決定機だが何とかコーナーに逃れる。
 54分、右サイドの繋ぎから福田への楔、ルキアンを経由して最後は阿部のシュート。DFに阻まれてランゲラックが余裕でキャッチ。
 58分、組み立てのロストからカウンター。最後は山岸のシュートをボムグンが防いでコーナーキック。



 59分、ボムグンのキックからカウンター。こぼれ球を拾った池田から右サイドへ展開。雄斗から順に中央を経由して小野瀬へパス。内側に切れ込んで逆のサイドネットに巻くような見事なシュートを決めた。湘南が同点に追いつく。

 67分に選手交代、永井に代わって倍井。湘南も続くように池田に代わって奥野が投入。
 69分、奥野のパスが名古屋の選手に当たってDFラインの裏へこぼれる。ちょうどルキアンへのスルーパスとなった形で、ランゲラックとの1vs1を落ち着いて制した。がギリギリオフサイドの判定。
 椎橋のバックパスがミスになったところを拾ったルキアンが再びランゲラックとの1vs1を迎えるが、今度はGKの勝利。

 82分、両チーム選手交代。名古屋はパトリック、榊原、久保がイン。湘南は章斗と山田がイン。3-4-2-1、あるいは5-4-1にシステムを変更。
選手交代後から名古屋がペースが握る。パトリックが起点になった攻撃が続いている。湘南は押し込まれていたDFラインをメンバー変更。大岩と杉岡がイン。大野が中央の3バック。
 終盤はお互いゴール前に迫るが疲労からか雑なプレーに終始。1-1で勝ち点1を分け合った。


■うまくいかなかった前半


 名古屋はこれまでの試合と同じような振る舞いで、3バックの右がサイドバックのような位置取りでボール保持を開始。シャドーの森島が降りて組み立てに加わり、WBの中山が前線に加わって大野を牽制していた。

名古屋の右サイドの様子

 名古屋の得点はこの形の応用で、森島の裏抜けでDFラインを押し下げられたことがきっかけ。小野瀬と大野が引っ張られて、上がってきた吉田にフリーでクロスを許した。
 得点を奪われたのは右サイドだったが、多くの場面で起点になっていたのは左サイドだった印象。スピードのある永井の対応に気を取られて雄斗が前に出づらい様子で、山中は縦にも斜めにもパスを出せていた。

名古屋の左サイドの様子

 後半に入ると雄斗から山中への圧力が強まり、自由にボールを出させるシーンは減少。時間の経過とともに重なった永井の疲労も主導権を握ったひとつのポイントかもしれない。


 湘南は平岡の欠場が影響した点として、IHの役割変更があげられる。この試合では池田が繰り返しDFラインを押し下げるためのランニングを行っており、平岡が普段担う役割を池田が担当していた。ただIHのハーフスペースアタックは名古屋も対策済で、左CB野上が早い段階で池田をマーク。右サイドが詰まってしまう原因となっていた。とはいえ、池田が野上の位置で捕まっているならその手前にいる椎橋周辺を使えそうな場面もあったので、田中のポジショニング次第では状況を変えられたような気もする。

繰り返しランニングを行う池田とケアする野上


 詰まっている右サイドを回避するためか、左サイドでボールを持つ場面が多かった前半の湘南。しかし舘と大野が相手を引き出す前に阿部・小野瀬に渡してしまうので、その後のプレーは難化。相手が構えているところに自分たちからボールを近づけていくような攻撃になってしまっていた。
 名古屋からすれば開けた口にエサが入ってくるようなもので、鋭いカウンターを繰り返し見せる。1点に抑えられたのは幸運でもあるし、自分たちが引き起こした事象の責任を取った結果ともいえる。名古屋の守備が堅かったというよりは、この時間における湘南の攻撃が拙かったのだろう。

手詰まり感のあった前半の攻撃


■打開策は相手の中に

 前半の中でよかったのは終盤のいくつかの展開。41:28~の髙橋の持ち運びによって名古屋の4人がボールサイドに集結。しかし髙橋がどこにでもパスを出せる状態でボールを持ったため強いアプローチができず、フェイクを入れてフリーになった田中へパス。アーリークロスで雄斗のヘディングシュートまで繋がった。

髙橋が引き付けてフリーをつくったシーン。

 続く42分は勢い良くアプローチしてきた永井をかわした田中から阿部を経由して小野瀬のドリブル突破。高橋のシーンにも共通していることだが、構えている相手に無理矢理突っ込んでいくのではなく、相手を引き付けて逆を取り、固められた陣形をほぐしていくような攻撃がチャンスに繋がっているように思う。


 後半に入ると湘南は名古屋の守備対応を逆手に取る攻め手を見せる。池田が早い段階で捕まえるのであれば、DFラインとFWは3vs3の同数に。名古屋の前線はさほどプレスが早くも強くもなかったので、タイミングを合わせてDFラインの裏に落とすフィードによってペースを握っていく。加えて池田が野上の判断を迷わせる(しっかりついていくと背後にスペースが空く、ついていかなければ中盤で前を向かせてしまう)ポジションを取って揺さぶりをかける。名古屋のDFラインはマンマークが基本的な約束であったため、前目のポジションを取った野上の背後を福田やルキアンが走り込むシーンが増え始める。
 ルキアンと福田の足を活かした効率的な戦い方ではあるが、これほどシンプルなやり方であればピッチ上の判断で前半からチャレンジしてほしい気もする。相手がフィードを嫌がってプレス隊が飛び込んできてくれれば、かわして空いたスペースを使える時間を持てたかもしれないからだ(先ほど取り上げた、突っ込んできた永井をかわした田中のようなシーン)。

 右サイドで作って左サイドで仕留めるのは今シーズンよく見られる形であるが、畑の離脱以降はむしろ左サイドが蓋になってしまっていた。だがこの試合で仕掛けを担当したのは復帰した小野瀬。天皇杯で見せたクオリティそのままに躍動し、足りなかった最後の質を見せてくれた。

後半の打開策


 相手がこう来たから自分たちはこう、といった試合が徐々に見られるようになってきた印象を持っている。かつては前からのプレッシング一択だったころを思うと、ボールを持ってどう進めるか?という話ができるようになってきたのは、サッカーという競技性を踏まえると成長として捉えられるのではないか。今後は思考と試行の速度と回数、そして精度を高められるかを見てみたい。
 ただ試合の結果として物足らないのは間違いない。やってることが正しかろうが勝てなきゃしょうがないのである。苦しくても勝率を高める道を選んできた、後は勝利を掴みたい。



試合結果
J1リーグ第18節
名古屋グランパス 1-1 湘南ベルマーレ

名古屋:永井(33')
湘南 :小野瀬(60')

主審 山下 良美

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