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予測不可能性、いま触れてみる。 2024.06.26 川崎フロンターレvs湘南ベルマーレ マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ

■試合の振り返り

 6月最終週の水曜日、中3日で戦う連戦の2試合目は等々力でキックオフ。湘南はボールを握りながらも一発に泣いたFC東京戦をベースにしたメンバー。FWが福田から鈴木章斗への変更のみで、それ以外の10人は同じ顔ぶれ。対する川崎は前節新潟戦からガラッと7名変更。右SBは瀬川からファンウェルメスケルケン、CBジェジエウに代わって高井、2DHは山本と瀬古から橘田とゼヒカルド、右WGは家長から山内、トップ下は遠野に代わって脇坂、FWは小林に代わって山田新が入った。GKチョンソンリョン、左SB佐々木、CB大南、左WGマルシーニョは引き続きスターターとなった。


 試合序盤は川崎がゴールに迫る。山田がサイド深くに流れたり中盤に降りてボールを引き出し、チャンスを作った。

 湘南は川崎陣内に入れない時間が続くが、15分ごろにボムグンのキックを前線で収めて左サイドに展開し、クリアのこぼれ球を田中がシュート。ようやく相手ゴール前にまでたどり着く。その直後、続けて3本の決定機を川崎が迎えるが、ボムグンとゴールポストが危機を救う。
 20分はまたも川崎の決定機。ポケットに侵入されてフリーでクロス、山田と脇坂にそれぞれシュートを打たれるが何とかしのぎ切る。
 22分にはマルシーニョの裏抜けから独走、フリーで中に折り返すが、小野瀬が長い距離を走ってカバーした。このプレーが影響したのか、小野瀬は数分後に負傷交代。畑が左WBに入る。
 川崎の猛攻を耐え続ける湘南という構図が長く続くが、30分すぎからは湘南も多少ボールを持てるように。35分はボムグンのキックを章斗が競り合い、池田と雄斗のパス交換から開いたスペースに向かって雄斗がドリブルで侵入してシュートにまで持ち込んだ。疲労によって相手の圧力が弱まったのかもしれない。劣勢ながらも耐え切り、0-0で前半を折り返す。

 ハーフタイムに湘南は選手交代、山田に代えて福田。システムを4-4-2に変更し、福田は左SH、鈴木淳之介がDHへ移動する。
 53分、左サイド奥のスローインからDFラインの裏を取った畑がポケットに侵入、マイナスの折り返しに合わせたのは章斗。シュートはDFのブロックに遭ったが、ゴールを期待できるシーンだった。畑の位置はオフサイドだったかもしれないが。
 59分は川崎。スローインから山田のポストプレー、脇坂が右に流してファンウェルメスケルケンが放ったシュートはクロスバーを直撃。
 62分に川崎が先制。山田が舘を振り切り、中で待っていたマルシーニョへパス。余裕をもってゴールへ蹴り込んだ。タッチライン際で待っていたファンウェルメスケルケン、ライン間に入り込んだ山内がどちらもフリーで、最後の舘だけでなく福田・淳之介・畑・大野の位置関係が悪かった印象。

 78分に湘南は田中のスーパーゴールで同点に追いつく。右サイドの雄斗が大外でフリーになり、中央でパスを受けた田中がボックス外から左足を振り抜いた。相手SHの外側でSBがフリーで受けて中央に通すのは川崎のゴールシーンと共通していた。



 最終盤は互いにゴールに迫りつつ、やや川崎が優勢のまま試合終了。湘南は圧倒的に攻め込まれながらも何とか勝ち点1を手にした。


■苦しかった前半の原因

 この試合の前半は川崎にやりたい放題やられており、ボールを前に進めることすら困難だった。それは相手のプレッシャーが早かっただとかDFラインのプレス耐性が低いだとかいろいろな点が原因に挙げられるだろうが、筆者としてはボールの奪いどころが決められなかったところにあると考える。プレスの始点となるボールの方向付け=どちらのサイドに追い込むか、が川崎の2DHによって妨害され、後ろの選手が予測を立てられなかったのがその理由だろう。
 ゼ・ヒカルドと橘田が縦関係に位置取り、プレス隊が形成する五角形の内側に出たり入ったりを繰り返す。IHの背後や手前に顔を出して簡単に叩き、中央経由で逆サイドに展開して湘南に横スライドを強要。それはプレスのやり直しを意味しており、川崎は苦もなくボールを湘南陣内に運び込んでいた。

プレスがハマらなかった前半の図

 ボールが進む方向が自在に変えられてしまうために湘南のWBは立ち位置を決められず。プレスがハマってボール周辺の雲行きが読めれば前に飛び出して相手SBを奪いどころとしてアプローチを仕掛けるところ、この試合では逆に飛び出した背後を使われる形に。前に出るのはある種の博打、後ろに留まれば前進を許す、前半はWBにとって受難の時間だったはずだ。


WBが前に出ると背後を狙われていた

 どうにかこうにかボールを奪ったとしても自分たちが狙った形ではないため味方の配置がバラバラな状態で、2トップに蹴って何とかしてくれ!というパターンに終始。それに加えて川崎のプレスが早かったため、FC東京戦に比べて時間をもらえなかったDFラインは、空いているが技術的に難しい逆サイドに向かって蹴り飛ばすか、捕まっている味方に出して奪われてしまうシーンが目についた。本当によく耐えた前半だったと言えるだろう。


■4-4-2に変更した理由

 ハーフタイムに選手交代を行い、システムも4-4-2に変更。相手の前線3枚に対して余りが出ていた5バックをやめ、1枚を一列前に移動。淳之介が田中と中盤センターを組んだ。これによって対応に迷いが見られたWGへの担当がSBに決まり、DH2枚も管理しやすくそれぞれの背後もケアしやすくなっていた。

4-4-2変更のメリット

 その効果が表れていたのは52分のシーンで、ボールホルダーである右SBに福田が背後の橘田を消しながらアプローチ。中央で待っているゼ・ヒカルドと脇坂もケアして中央を封鎖、パスコースを塞いでボールを後ろに下げさせることに成功した。

52分のアプローチ

 前半よりもボールの進む方向を後ろに示せるようになったため、ボールを奪う位置が川崎陣寄りに上がる。ビルドアップで相手のプレスを剥がすような場面は少なかったが、押し込まれるよりも先にマイボールにできるため前半よりも相手ゴールに迫れていた。前節から復調を見せつつある川崎のビルドアップを阻害できたのはよい修正だったのではないか。


 それでも62分の失点シーンでは幅と高さを取った右SBがフリーになり、左のボールサイド周辺が中途半端な立ち位置になっていたところを突かれ、DFラインの背後に山田新が抜け出した。ここは淳之介が急いでスライドして山内へのパスコースを塞ぐか、畑がホルダーにアプローチして福田がカバーに戻るかなど、守備の連動が見たかった場面である。
 CBのクオリティどうこうを嘆いても仕方がなく、皆が一歩でも早くスライド、アプローチを行う方向に奮闘するのが湘南が目指す方向であろうし、その後押しをするのが我々の声なのではないかなと思う次第だ。


 引き分けに持ち込んだとはいえ、敗れた前節とのトータルで考えてもまだ収支マイナス寄り。ならば次の相手に勝つしかない。6ポイントマッチだ。


試合結果
J1リーグ第20節
川崎フロンターレ 1-1 湘南ベルマーレ

川崎:マルシーニョ(62')
湘南:田中(78')

主審 清水 勇人



タイトル引用/ナナヲアカリ チューリングラブ feat.Sou

にじGTA主催の二人が歌った楽曲より引用。
プレスがハマらず後ろがボールの進む方向を予測できなかったこと、田中聡の予想を超えるスーパーゴールが決まったことから。

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