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昂る波に、一緒に飛び込もう。 2024.08.24 湘南ベルマーレvs名古屋グランパス マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ



■試合の振り返り

 夏休みも終わりに近づいたころ、試合前に数多くのイベントや暗転演出が開催された平塚でキックオフ。湘南は水曜日に天皇杯 vsガンバ大阪 を戦っての中二日。柏戦からはGKの変更のみで、上福元がボムグンに代わって移籍後初スタメン。髙橋、淳之介、田中、章斗は柏戦、天皇杯ガンバ戦、名古屋戦と3連続でスタメン出場。なお茨田、雄斗、ルキアンも30分以下ではあるが天皇杯に途中出場している。
 対する名古屋は水曜日にゲームはなく、通常通り1週間空いた状態。左WBは累積警告で出場停止の和泉に代わって山中、右CBに内田が入り右WBが野上。最前線にはパトリックに代わってユンカーが入った。


 キックオフ直後、雄斗のフィードから相手ゴール前に侵入。ルキアンの足元にボールが入るが強いシュートは打ち切れず、ブロックによって防がれる。
 名古屋は通常どおりフィード中心の攻撃、湘南も名古屋の陣形を引き伸ばす狙いでFWを裏に走らせる序盤。山岸の高さ、ユンカーの抜け出しを警戒させておいてDFラインを固定、森島がその手前で自由になっている。5分は山中のフィードをその森島が収めて逆サイドへ展開、コーナーキックを獲得。
 前半7分、名古屋はそのコーナーキックから三國が合わせて先制。


 繋ぎの場面でCBの横に並んだり、FWのプレスをドリブルでかわしたりと上福元起用の効果が出ている様子。9分は上福元から田中に通して相手のプレスを安全に突破した。その後の展開も悪くはなかったが、茨田が受けた際、章斗が空けたスペースをルキアンが使えなかったのが残念。上福元は30分のDFライン裏カバーなど、守備範囲の広さでもピンチの芽を摘んだ。


 ハーフタイムに両チームともに選手交代。湘南は吉田に代えて小野瀬。名古屋はユンカーに代えてパトリック、山岸に代えて菊地が入る。
 後半立ち上がり、左サイドから横断するように右サイドへ展開、最後はオーバーラップした雄斗が右足でシュートを狙うがランゲラックがセーブ。
 48分の名古屋、左サイドのスローインから森島がクロス。中で合わせたのはパトリック。だがミンテと淳之介が身体を寄せた分わずかにコースがずれて枠の外へ。

 55分の湘南。茨田の動きを囮として上手く使った淳之介の運びから、小野瀬の浮き球のパス。ルキアンが収めて走り込んだ章斗がシュート。しかし三國のブロックでコーナーキック。
 67分、名古屋の交代。山中に代えて徳元、野上に代えて中山。システムは変えず、両WBの人員を交代。


 後半の飲水タイムで章斗に代えて福田。81分には茨田に代えて根本。福田が左IHに移動し、根本がFWに入る。
 85分、淳之介に代えて阿部。4バックに変更して小野瀬が左SB、左SHに阿部、トップ下に福田が移動。
 後半アディショナルタイム、名古屋は森島に代えて永井。

 追いかける湘南は後半目立った形で名古屋ゴールに迫れないまま試合終了のホイッスルを迎え、0-1の敗戦。天皇杯も含めると公式戦3連敗となった。


■停滞感の(ひとつの)理由

 この試合の狙いとしては、名古屋のプレスを誘って相手DFラインと同数になるFWに届ける、という形だった印象。届けるまでは準備通りだったが、その後のサポートが遅い&少ないため攻撃を完結させるのに時間がかかっていた。
 名古屋は湘南の3バックに対して前線3枚+アンカーには稲垣をつけて同数のプレッシング。池田には椎橋、もう一枚のIH茨田にはDFラインの内田がスライドしてマンツーマンで対応していた。

名古屋のプレス。マンツーマンで守る。
稲垣が田中を監視し、IHに内田がスライドしていた。

 その形をあらかじめ予想していた湘南は、引き付けた奥を利用。同数になっているFWとCBにボールを送り、あわよくば決定機、難しくても味方の上がりを待って相手を押し込めればOKといった様子だった。

湘南が見せたこの試合における主な狙い。
名古屋が前がかりになって同数になる背後を使う。

 ここまでは準備してきた形を出せていたように思うが、問題はその後。ひとつはFWがボールを受けた後名古屋のCBに圧倒されて前を向けなかったり、2人の距離が遠く孤立した状態であったこと。もうひとつはFWよりも後ろの選手、とくに中盤のサポートが遅く名古屋の戻りを許してしまったことだ。
 前者はある程度仕方ない面もあり、J1レベルのDF陣をぶっちぎれるようなFWはそうそういない。一旦収めてくれれば十分だが、その部分も五分の印象だったのも否めないところ。FWの能力不足とかの話ではなくて、FWに出すタイミングやシチュエーション、出し手の判断を含めた、いわゆる奥の使い方は修正が必要かもしれない。
 その点では55分の形は理想的で、名古屋を手前に寄せてDFラインとFWの2vs2の場面を作り出した。淳之介と茨田の連携ももちろんだが、滞空時間のあるパスで章斗がルキアンに近寄れる時間を作った小野瀬のパスもよかったと思う。

CBがワンツーで空いたスペースを使うよく見る形から、
2FW vs 2DFの状況を作り出した。


 そして後者だが、試合に停滞感があった大きな理由はこちらにあったように思う。FWにパスが入り、相手がボールに意識を持っていかれたタイミングで前向きの選手を作るのが次のステップであるが、中盤の3選手+サイドの2選手たちは最適な場所にいることができなかった。ボールと同じだけの距離とスピードで走らなければならないので当然キツい。
 また仮にいたとしてもそこに到達するまでにエネルギーを使い切ってしまっていて、相手の守備を上回るプレーを見せるだけの余力が残っていなかった。試合中継で解説の水沼氏が「池田のランニングに連動する選手がいない」というのも、同じ原因と思われる。
 その結果として名古屋DFラインはボールを正面に見ながら守ることができたため、湘南は攻撃に苦労することとなった。「ボールを下げてばかりで面白くない」と感じた理由はこういったところにある気がする。



 さてそんな中、中盤の代役を務めようとした選手もいる。70分は上福元の繋ぎからチャンスになりかけたシーン。高橋が田中と同じ列まで上がって上福元がボールを持ち、田中経由で淳之介へ通してプレスラインを押し下げる。小野瀬と茨田が細かいパス交換をして味方が位置を取る時間を作り、降りてきた章斗へ縦パスを通す。この時章斗の次、茨田・小野瀬から数えて4人目として顔を出したのがまたも淳之介。FWに入った後のサポートが足りず苦しんでいたこれまでの時間だったが、もう一人が足りたことで潰されず次の展開へつなげられた。ルキアンが河面に負けたのでボールを奪われてしまったが、ここが通っていれば大外の雄斗はフリー。うまくいけば先日のJ1リーグ第24節:ガンバ戦で畑が決めたゴールのような形が作れていたかもしれない。

FWの列降りから淳之介のサポートで状況を変えた場面。
前向きの選手を作ることができた。

 試合を通じてこの点において物足りなかったのは田中。連戦の疲れによるものなのか、以前の出し手と自分だけの二人称関係になってしまっており、自分よりも前にいる選手に連動してボールを引き出す動きが乏しかった。以前の試合であればFWやIHにボールが入る前には落としのパスを受けられる位置にいたので、感覚を取り戻してほしいと思う。


■GK上福元の活用法

 FWのサポートは本来一番近くにいるIHの二人が行えれば理想的だが、湘南において最もハードなポジションである彼らにそれを求めるのは酷である。もっと頑張れ!というのは簡単ではあるが、それ以外に方法がないか考えてみよう。

 筆者としては新加入のGK上福元を活用すればより期待できるのではと考える。現状では彼の力をフルに引き出せているとは言い難いので、DFラインの位置関係を見直してIHをよりFWの近くでプレーさせたい。

前半に何度か見られた場面。
3バックが後ろで揃っているなら上福元はビルドアップに参加する必要はないが、
それであれば彼を起用する理由が薄まる。

 加えて中距離のパス精度も期待できるので、浮いた選手に通して局面を変えられれば理想である。それを嫌がって相手が引けば、いつも通り左右CBからゲームを作り始められる。

ミンテが開いて左右CBの一枚を押し出せば、
IHもより高い位置を取れる。

 湘南のCBを抑えるべく強めのプレスをかけてくる相手には、同数になる相手DFラインにボールとFWを送り込む思想は変わらないように思う(山口監督がお手本にしている、と筆者が勝手に思っているインテルがそのような様子だから)。下からの繋ぎでプレスを乗り越えるのではなく、文字通り物理的に越える方を優先しそうだ。
 ただそれだと中盤とサイドの運動量がえげつないので、例に挙げた通りGKの位置取りなどを利用し、どこかを調整してバランスを取る必要がありそうだな、と感じた試合だった。どうやって崩すか?も重要な課題ではあるが、崩しの局面を容易にする工夫と努力もまたサッカーにおいて必要不可欠なんだろう。




試合結果
J1リーグ第28節
湘南ベルマーレ 0 - 1 名古屋グランパス


湘南    :なし
名古屋:三國(7')

主審 岡部 拓人


タイトル引用:DiVE !N/ROF-MAO

ROF-MAOの楽曲より引用。夏イベントが開かれた試合とMVの雰囲気を重ねて。リーグも残り10試合、どんな困難が待ち構えていようとも、チームと一緒に戦っていきましょう。

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