幸運な前半、反比例の後半。2023.04.01 湘南ベルマーレvsガンバ大阪 マッチレビュー
開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。
■幸運な前半
よく晴れた平塚でキックオフ。序盤は互いにリスク回避から細かいパスではなく、簡単に長いボールを蹴り合う形で始まる。15分ごろからガンバは自分たちの形に戻し、アンカーのダワンがCB間に降りて両SBを押し上げたり、鈴木武蔵が一列降りて受けて捌きスペースを空けるなど、ポジションを動かしてボールを循環させていく。永木の横のスペース、アンカー脇の使い方が上手な印象で、迎撃役の左右CBが出られない状況やタイミングを作っていた。斜めと落としのパスを有効に使い、IHが前向きで受けてチャンスメイク。山本のポスト直撃ミドルや石毛の抜け出しなど、ゴールになってもおかしくないシーンを続けて作り出す。
序盤の流れとは裏腹に先制したのは湘南。ラッキーな形ではあったが得点後はDFラインを高い位置に保ち、攻め込む展開が増える。生まれたチャンスのほとんどを町野が決め、大量リードを奪って前半終了。
■点差と反比例した後半
ガンバは選手交代で3-5-2にシステム変更。中盤がガッチリ噛み合う形になり、湘南からボールを取り上げるのが狙い。ガンバの狙いは奏功し、湘南がDFラインから繋ごうとすれば守備強度を活かして中盤で刈り取り、FW目掛けたロングボールにはCBが跳ね返してボール奪取。50分あたりは一方的にガンバが攻め込む展開になった。
湘南はたまに町野が個人技で収めて捌くこともあったが、単発的で相手を押し込むまでには至らない。過去5節でもよく見られた、ボール奪取後に前線に送るがすぐに奪われて自陣に戻るパターンが多かった。奪って縦に早く攻めるコンセプトが裏目に出てしまい、いたずらにスタミナを消費して相手ボールホルダーに規制をかけられない悪循環に。プレスの1stラインを容易に突破されるため中盤～DFラインで奪いどころを設定できず、後手後手の守備になってしまった。63分にはスローインを奪われ、フリーのアラーノからジェバリにパス。マークした舘を物ともせずシュートを打たれ、1点を返される。
湘南は74分に中野に代わって山田を投入、システムを4-4-2気味に変更。中盤の底が2枚になって平岡・小野瀬が後ろを気にせずセカンドボールを追えるようになり、陣地回復に成功。また永木の周りにパスコースが増えたため、プレスを回避してボールを保持できる時間を得た。78分には富居の素早いスローから小野瀬、鈴木章斗とつないで阿部の決定機。GK谷に防がれたものの、それまでになかった盛り返しを見せた。ジェバリとアラーノにボールが入るとピンチになるのには変わりないが、ガンバにボールを渡さない時間を増やせた点で効果的だったと言える。
試合はそのまま4-1で終了。点差ほど内容は良くない、むしろガンバの方が良かったように思われるが、勝って反省出来るのは最高。監督・選手たちの試合後コメントを読むと課題は共有されているようなので、次節以降の修正に期待したい。
■町野交代～山田投入までの12分間の解釈
最後に町野が交代で下がった62分から、山田が投入される74分までの12分間について考えたい。ガンバに押し込まれ続けていた展開で、配置はそのままに選手の入れ替えのみ（町野⇔鈴木章斗、タリク⇔平岡）を実施。交代直後に失点を喫し、山田を投入してシステム変更をするまで厳しい時間が続いた。12分間は無為に過ごした時間だったのか、あるいは何らかのテストだったのか？
この時間にピッチに立っていたフィールドプレーヤーは鈴木を除き、比較的リーグ戦を中心に出場している選手が多く並んだ。これまではルヴァンカップを主戦場にしていた鈴木が、町野に代わってリーグ戦のメンバーに加わった形である。陣地回復に町野の個人技頼みだったところなので、前進する方法を失って押し込まれ続けてしまった。
この結果をどう捉えるか。事実だけを見れば何の収穫もなかったように思われるが、町野不在という補助線を引いてみると解釈が変わる。あまり考えたくはないが、町野は現在の湘南で最も移籍する可能性が高い選手である。そのポジションとシステムに鈴木をそのまま入れるとどうなるか、というテストが出来た（人だけ入れ替えてもうまくいかなかった、という収穫）と考えられる。鈴木個人に関して言えば、日本代表経験もあるCBを相手にどれだけ力を発揮できるかのチャレンジが出来た。3点ものリードがあるからこそ出来た余裕のあるテストでもあり、収穫を今後の試合につなげてもらいたい。
試合結果
J1リーグ第6節
湘南ベルマーレ 4-1 ガンバ大阪
得点者
湘南：町野(21',38',40',42')
G大阪：ジェバリ(63')
主審
山下 良美
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