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無限大の可能性信じて。 2024.07.14 湘南ベルマーレvsジュビロ磐田 マッチレビュー

開始時の立ち位置と嚙み合わせはこちら。

開始時の立ち位置
各ポジションの嚙み合わせ(グラッサ退場前)


各ポジションの嚙み合わせ(グラッサ退場、PK後)




■試合の振り返り

 気温26.8℃ながら湿度87%という非常に過ごしにくい気候となった平塚でキックオフ。両チームともに前節から1名ずつスターティングメンバーに変更あり、湘南は左IHが山田から茨田へ変更。水曜日に天皇杯第3回戦:東京ヴェルディに先発出場した池田、茨田、鈴木章は中3日での連戦となった。その天皇杯で先発した吉田は今季リーグ戦で初のベンチ入りを果たす。
 磐田はGK川島が負傷により離脱、代役は前節途中出場でゴールを守った杉本が務める。天皇杯は2回戦で敗退しているため水曜日のゲームはなく、日程的には1週間空いている状態。


 立ち上がりの湘南、用意してきた形を見せてペースを握る。やっていることは前回対戦時と同じで、磐田CBに対して二択を突き付けたり、外から内に入る斜めのランニングでDFラインの背後を突いたりして磐田守備陣を揺さぶっていた。
 プレッシングもよく整理されていた印象。相手CBに規制をかければ近くのSBに渡すので、そこにも別の選手がアタックすれば同サイドへのロングボールを蹴らせることができていた。ターゲットのジャーメインやペイショットも収める意識はあったがパス精度が伴わないため苦労しており、湘南が回収に成功するシーンが多く見られた。


 15分、ボムグンのキックを章斗が収めたところから相手陣内に押し込んだ場面から。淳之介から人の間に入り込んだ茨田を経由してライン際を駆け上がった畑へ。畑からの折り返しを受けた章斗は、ボックス内でCBグラッサを背負ったルキアンへパス。反転してゴールへ向かうルキアンはグラッサに後ろから掴まれて引き倒されるが、主審はノーファールの判定。その後もプレーは続くがGKボムグンがボールをキャッチしたところでVARが介入。オンフィールドレビューを経てグラッサのファールがPKの判定に変更となり、ボールへのチャレンジがない決定的機会阻止のため一発退場。磐田はわずか15分でCBの一角を失うことに。
 ルキアンが自身で獲得したPKを落ち着いて決め、湘南が先制。これから10人で戦う相手に対して大きなリードを奪う。このタイミングで磐田はCBを埋めるためにSH金子がアウト、CB伊藤がイン。


 一方的に攻めていた湘南が追加点を奪ったのは38分。右サイド深くから雄斗のクロスが跳ね返され、ペイショットを経由してジャーメインがスピードに乗りかかったところに田中が制止をかける。続いて髙橋がアタックしてボールを奪い、そのまま運んで相手を引き付ける。ボックス内でフリーになった池田へパスを通し、池田はしっかりとゴールへ蹴り込んだ。

 試合を決定づける3点目も前半のうちにゲット。44分、ボックス手前でボールを持った淳之介から、タッチライン際で待つ畑へパス。そのままポケットに入り込み、カットインしてきた畑とワンツー。フリーになった畑がグラウンダーのクロスを上げると、ニアサイドでルキアンが合わせた。前半を3-0で折り返す。



 3点を追いかける磐田はハーフタイムで2枚の交代を実施。松本に代えて平川、ペイショットに代えて西久保が投入。ジャーメインが1トップ、右SHに植村がスライドして右SBに西久保。左SHはそのまま平川が入り、中央は上原が前に出てレオゴメスが後ろの縦関係を取った。
 中盤で畑のカットインからチャンスが生まれていたところをケアしたかったのか、後半開始早々のプレーでは二人がかりで畑にプレス。しかしそれをものともせず突き進んでいく畑は、負傷前のフォームを取り戻しつつあると言えるかもしれない。



 52分、セットプレーの流れから茨田のクロスがカットされたもののミンテが頭で合わせるが力なく上へ。GK杉本がそのハイボールの処理を誤ったところ、見逃さずに詰めたのがルキアン。古巣相手に来日初のハットトリックとなる3点目を決めて4-0とする。
 69分に畑に代わって吉田、章斗に代わって根本が投入。吉田はリーグ戦初出場。

 最後は75分。髙橋からタッチライン際で待つ雄斗へパス。そのままシンプルにクロスを上げると、CBのマークを振り切った根本がニアサイドに走り込み、ゴール右上隅に叩き込んだ。根本は嬉しいJ1初ゴール。
 そのままさらなる追加点を狙い続けて時計の針を進めて試合終了。5-0、アウェイで味わった悔しさをぶつけるような点差で試合を締めくくった。


■いつもどおりが功を奏す

 立ち上がりからボール保持で主導権を握れていたのは、いつも通りの仕組みが相手に刺さったからだろう。WB(鈴木雄斗、畑)に磐田のSBが出てきたらIH(茨田、池田)が背後を狙う、SHがWBを見るのであればCB(髙橋、淳之介)をフリーにして相手陣内に押し込むといったように、相手の出方を見ながら空いているところを使っていく判断ができていた。またIHのランニングは磐田DHがケアするため中央が空き、そのスペースにFWが降りるという次の選択肢も整っていた。
 磐田から見て右(湘南の左サイド)が高めで左(湘南の右サイド)は低めに位置しており、湘南の右サイドにボールを誘導したい意図があったのかもしれないが、FWとSHの関係が弱く淳之介から畑へのパスコースが消されていないのでその策はあまり機能していなかった。

磐田SHがWBをケアした場合。
湘南のCBに余裕が生まれるので前向きにプレーが可能。
4-4ブロックの隙間から磐田CBの背後を狙っていく。
磐田SBがWBをケアした場合。
SBの背後に向かって湘南IHが走ると磐田守備陣にズレが生じていく。
前回対戦で福田がPKを獲得したシーンと同じような形である。

 磐田が武器とするカウンターを止めるため、ネガティブトランジションの意識も高かった。相手陣内に押し込む時間が長くなるのは想定されていたと思われ、失った瞬間にボールサイドに蓋をして磐田の前進を阻んでいた。8分のドリブルを試みる金子に対する田中のカバーリングや、2点目のきっかけとなった田中と髙橋のカバーなどに代表される形。
 しかしその代償として蓋を仕切れないシーンではガラ空きになった背後のスペースを使われており、リスク管理という面では課題も見られた。ルキアンのPKとなったものの、流された後のペイショットが抜け出してゴールへ独走したシーンなどがそれにあたる。


■磐田が見せた修正とその対応

 ハーフタイムで選手交代とともにプレッシングの整理を行っていた磐田。上原がアンカー番を担当し、CBにはSHがプレッシャー。浮きがちなWBにはSBがスライドし、ボールサイドのIHにはCBまでがスライドしていた。47分のプレッシャーは迷いなく行われていて、髙橋は長いボールを蹴るしかなかった。右SHの植村はやや上がり気味でジャーメインと同じ高さ、反対に左SHの平川はSBとDHと近い距離を保っており、湘南の右サイドへ誘導したいという狙い=ボールの奪いどころを決めつつ、カウンターの人員確保の両取りを図った策と思われる。

後半開始早々に見せた磐田のプレス。
もともとのプランを10人で実行するためのアレンジを加えつつ、
カウンターで得点を狙う姿勢が見られた。


 磐田が見せた新たなプレッシングに対する回答を見つけたのは約10分後。54分、畑がボールを受けたところに寄せる西久保。だが茨田がこれまではあまり見られなかった、列を降りる動きでボールを引き出してプレッシャーを回避。さらに西久保の背後にルキアンが顔を出し、出口となってプレスの回避に成功。田中に通して逆サイドへ展開した。
 逆サイドのIH池田の位置もポイントで、最終ライン近くに取るためにDFは池田が気になってボールサイドのヘルプに行けない状況を作り出していた。短時間で相手の出方を見て回避方法を見つけたのは良かった点だろう。磐田の縦にスライドしてボールサイドを狭めていく形は湘南のプレスと似た点があるので、ある意味日頃のトレーニングで慣れていた形だったのかもしれない。

磐田のプレスを上手に回避した図。
1人少ない相手を食いつかせて背後を取れていた。
畑と茨田のパス交換をきっかけにして、出口を作るルキアンと
それらを無駄にさせない池田の位置が効いていた。


 サッカー的な見どころは前後半ともにはじめの15分で終わってしまったが、これまでの取り組みがすべて良い方向に表れたのは自信に繋がる試合と言えそう。久しぶりのフル出場となった茨田も天皇杯後中3日の試合ながら良いプレーを随所に見せており、平岡離脱後の左IHとして期待できるコンディションに仕上がってきている印象だ。

 次のガンバ大阪も前回対戦で悔しい負け方をした相手。より難しい相手ではあるが、良い流れのまま中断期間に入りたい。



試合結果
J1リーグ第23節
湘南ベルマーレ 5-0 ジュビロ磐田

湘南:ルキアン(22',44',52')、池田(38')、根本(75')
磐田:なし

主審 小屋 幸栄




タイトル引用:パワプロチャンピオンシップス 2017 公式テーマソング/Flying High (加賀美ハヤト歌唱ver.)

ジュビロ磐田の初代コラボライバーで古くからの磐田サポーター、舞元啓介が天開司とともに主催する「にじさんじ甲子園」、2021年大会の優勝賞品としてゲーム内に収録された加賀美ハヤトのカバー楽曲より引用。この曲をBGMとしてゲームをプレイしたライバーは大事な試合で爆上振れが起きており、筆者もそれにあやかって試合前日に聞いていたらこの結果。効果覿面である。


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